第93話 「ディアヴォロの封印」
ベアトリーチェによって描かれた魔法陣の3方にそれぞれが配置し、サイロンは封印の儀式に問題がないかどうか陣の外から様子をうかがっていた。
とりあえずは何の問題もなくシルフを召喚できたリュートであったが、ここから先はルイドやベアトリーチェの指示通りに行動しなければいけない・・・というプレッシャーが残っている。
「俺達の役割は、二人で放出したマナをベアトリーチェに送ることだ。
難しい制御や詠唱などは全て通常通りベアトリーチェ一人で行なうから、精神集中だけは怠るなよ・・・いいな?」
ルイドの指示にリュートが返事をする。
恐らくこの中で最も経験とMP量が少ないのはリュート一人であろうことは十分わかっていた、それだけにシルフを召喚した時の
負荷や、ベアトリーチェに送るマナ・・・MP量は半端ない。
それでもやるしかない、とりあえず不足しているMPの分だけは何とかシルフが負担してくれているようだった。
ルイドとリュートの放出したマナが足元の魔法陣に流れ出し、その陣の紋様に沿ってベアトリーチェの方へと送られていく。
やがて相当量のマナが蓄積されていくと、魔法陣全体が眩しい光を放って辺り一面を照らし出す。
その勢いで風が巻き起こり、その場にいる者全員の髪や衣服が魔法陣から巻き起こった風でなびいていた。
十分なマナを蓄積したのを確認したのか、ベアトリーチェが聞いたことのない言葉で呪文の詠唱へと入った。
詠唱・・・、というよりむしろ民族音楽の『歌』に近かった。
「パシィミトゥヤー トゥルリマシカリヤ ウトゥトティタンパ アイマスィートゥーパタ
パタディトゥンヤ パシミクゥートゥーティア ラマルディカシトゥヤ ウディマティア」
詠唱が激しくなるにつれ、魔法陣に蓄積されてはベアトリーチェに流れていくマナも勢いを増していき、より一層風が激しくなる。
ベアトリーチェが両手を上空にかざし、闇、風、土属性が混じり合ったものが大きな円となって膨れ上がっていく。
(ここで妾の毒のマナを混合させれば、完璧じゃ・・・っ!!)
ベアトリーチェは器用にも増幅しながら大きくなったマナの球体を片手で支えて、もう片方の手から腰に備え付けていた短剣を取り出してそれを口にくわえる。
リュートは余裕がない状態だったが、一体何をするのかが気になって目を眇めながらベアトリーチェの行動に釘づけになっていた。
ベアトリーチェは口にくわえた短剣を鞘から抜くと、自由になっている方の腕を深く斬り付けた。
どくどくと真っ赤な血が流れ出して、それをマナの球体の方へと近づけると大量の血液がマナの球体に融合するかのように混じり合った。
それを確認したベアトリーチェがにやりと、苦痛に喘ぐような表情を浮かべながらも笑みを漏らした。
「血の盟約によりて、汝の意思、汝の肉体に活動制限を命じる。
我が血、闇より生まれし魔族の証・・・。
我が鉄壁、土より生まれし防護の証・・・。
我が結界、風より生まれし守衛の証・・・。
今ここに災厄の存在、ディアヴォロに未来永劫の休息と安息を与える!!」
ベアトリーチェの力強い言葉に、増幅の限界を迎えたマナの球体の中は激しくうごめいて・・・やがてゆっくりと安定し始める。
そして封印の最終段階を迎えた時、マナの球体をベアトリーチェの真正面にそびえ立つ隔壁に向かって勢いよく放った。
リュートは一瞬、凄まじいマナ質量を持った球体を扉めがけて投げつけたことによって、逆に扉が破壊されるんじゃないかと思った。
しかしマナの球体は扉を破壊することなく、まるで扉に栄養剤として吸収されるようにゆっくりとなじんでいってるのが目で確認できた。
マナの球体が扉になじんでいきながら、それが扉を活性化させていくようにさっきまで静かにたたずんでいた扉が、下の方から上の方にかけて機能が回復していくように刻まれた紋様に、だんだんと光が灯って行く。
ぜんまい仕掛けの機械が突然動き始めたように、がしゃんがちゃんっと扉に描かれた幾何学文様や象形文字のようなものが機械的に動いて、解けかけていた封印が改めて役割を果たそうとしているように見えた。
それがとてつもなく大きな扉の隅々にまで行き渡り、・・・やがてあれだけ大きかったマナの球体は全て扉に吸収された。
ゆっくりと・・・静かに隔壁の扉は稼働したままで、リュート達の足元で輝いていた魔法陣は光を失い、何事もなかったかのように辺り一面に再び沈黙が訪れた。
封印の儀式をする前、あれだけ動揺させたディアヴォロの鼓動の音も・・・胎動も・・・、何も感じなくなっていた。
その代わり扉から聞こえる機械音が、微かに聞こえてくるだけだ。
「封印は成功したんですか・・・!?」
リュートが最後まで言い終わる前に、ベアトリーチェが卒倒した。
すぐさまサイロンが駆け付けて抱き起こすと、ベアトリーチェは貧血状態のように顔面蒼白で呼吸が荒かった。
余程の体力と精神力を消耗したのだろう・・・、そのままぐったりとサイロンにもたれかかる。
ルイドが屈んで、ベアトリーチェに向かって手をかざす。
「優しき癒しの風よ・・・、ヒールウィンド。」
ルイドが風の回復魔法をベアトリーチェに施すと、だんだんと血色が良くなっていき腕の傷も癒された。
心配そうに見つめていたリュートだったが、なんとか大事には至らなかったのを確認してほっとする。
そのままルイドがベアトリーチェを抱き抱えると、二人に視線を移して話した。
「一時的な封印は成功だ、しばらくの間ディアヴォロは眠りについた状態になる。
これで一時ではあるがディアヴォロの脅威に怯えなくて済むことだろう、アビスでも・・・レムでも。」
「それじゃ・・・、レムグランドで起こった負の感情は・・・もう!?」
「ディアヴォロが眠った状態のままならな、しかしディアヴォロはいつ目覚めてもおかしくない状態といってもいい。
説明にもあったと思うが、ディアヴォロは過度なマナ濃度や人間の負の感情に反応して覚醒する。
ベアトリーチェの行なった簡易的な封印というのは、ディアヴォロを一時的に眠らせることしか出来ないんだ。
アビス・・・レムのどちらかに過度にマナ濃度が偏ってしまえば、そのマナに惹かれて封印は解かれる。
そして同じように、人間の負の感情が高まれば高まる程それをマナと同じく糧としているディアヴォロは目覚めてしまう。
・・・ディアヴォロの睡眠状態を長引かせる秘訣は、どれだけ人間が自重して生活していくかにかかっている。」
ルイドは意識を失ったベアトリーチェの顔にかかった髪の毛を、優しく払いのけながら・・・静かにそう言った。
リュートは戸惑いながらも、疑問に思う。
それだけわかっているのならば・・・、余計に3国間の協力が必要になるんじゃないかと・・・。
怪訝な表情でルイドを見つめるリュートに、サイロンが扉を気にしながら口を挟む。
「やはり時間の問題ということになるのう・・・。
レムはどうしてもマナを欲する為にマナ天秤への道を目指すであろうし、アビスとてマナの枯渇を恐れて動き出す。
マナ天秤がここにあるだけにアビス側が有利となるが、どちらにしろマナ天秤への道は上位精霊の契約が必須じゃ。
どちらが先に契約を交わしたとしても、レムとアビスの全面戦争は避けられん。
そうなれば負の感情がどうとか言ってる場合ではなくなってくるしのう・・・、頭の痛いことじゃ。」
サイロン達の考えにどうしても納得が出来ないリュートが、声を荒らげながら反論する。
「どうして・・・、どうしてですか!?
今はレム側にマナ濃度が偏っているというのなら、レムがマナ天秤を動かす必要がないと・・・わからせればいいだけのことじゃ
ないですかっ!!
龍神族の仲介があって休戦条約が成されているというのなら、お互い協力し合ってディアヴォロに対する解決策を模索した方が
よっぽど建設的なのに・・・っ。
サイロンさんの力でレムの国王に説明すれば、わかってくれるはずじゃないですか!?
国王が無理でも・・・、少なくとも大佐やザナハ姫に事の真相を話しさえすれば・・・っ!!」
サイロンにすがるように、リュートは必死になって懇願した。
ディアヴォロの恐怖を目の当たりにした今ならわかる・・・、あれは世に放ってはいけない危険な代物だ。
あんなものがあるというだけで、恐ろしさで気が休まらない・・・。
それなのに・・・こんなものを地下に隠して・・・ベアトリーチェは何年もの間、監視という名目でずっと守ってきたんだ・・・。
いつ目覚めるか知れない化け物がすぐ足元にある、もし一歩でも対処が遅れたら真っ先に襲われるのは自分達だというのは明白。
一体どれだけの年月を、神経をすり減らして・・・、このクジャナ宮に居続けたのだろう。
そう思うとベアトリーチェが不憫でならなかった、王族に生まれたというだけでディアヴォロがある限り、永遠に気が休まる日など
ないだろう。
リュートは必死にサイロンの色良い返事を待ったが、彼の視線が落ち込んだように俯いたのが見えて・・・胸の辺りがムカムカした。
「長い年月の間、レムとアビスの確執は相当根強いものになっておる。
そう簡単にはいかないものなんじゃよ、特に人間の心・・・というものはな。」
「それでもどこかでその確執を断ち切らなきゃ、永遠に平和なんて訪れないじゃないですか!!
憎しみは憎しみを呼ぶって、どこかで聞いたことがあります。
どんなに心が張り裂けそうな位に憎しみの炎で燃えたぎっていても、自分自身がそれを断ち切らないと・・・永遠に憎しみは消え
てくれないんです!!
なにより・・・、あんなものの存在を認識すれば誰だって力を合わせて何とかしようって思うようになりますよ!!」
リュートのその言葉を遮るように、意識を取り戻したベアトリーチェがルイドに抱き抱えられたまま反論した。
「お前はつくづく平和ボケした世界から来たようだな・・・、レムのやつらがディアヴォロの居場所を突き止めてみろ・・・っ!
その兵器を自分達のものにしようと・・・マナ天秤を無視して、ディアヴォロを手に入れようと攻め込んでくるに決まっている!
今まで何度も光の神子が現れる度に、このアビスに攻め込もうと画策してきたような愚か者共だぞ!?
誰が・・・あやつらのことなど!!・・・信用できるものかっ!!」
「ベアトリーチェは少し黙っているんだ、消耗が激しい上にこの場所では回復が遅くなる。
お前達も・・・会議をするなら、それ相応の場に戻ってからするんだ。
今は一刻も早く、ベアトリーチェを安静に出来る場所へと連れ戻るのが先決だろう!?」
ルイドの一喝に、二人は黙って従い・・・それからというもの上階へと上がる為に設置されている魔法陣エレベーターがある場所に
戻るまで・・・誰一人として口を開くことはなかった。
リュート達はようやく息苦しい地下世界から、クジャナ宮本体である階層まで戻って来た。
ベアトリーチェがルイドに抱き抱えられて戻ってきた姿を目にした配下の者が、慌ててルイドから主を受け取り丁重に・・・恐らく女王の寝室だと思われる・・・部屋へと連れて行ってしまった。
「今日のところはお前も休むといい、配下の者にお前の部屋を手配させる。
サイロン、お前もリュートがここにいる間はその護衛としてここに居座るつもりだろう!?
だったらお前の部屋も用意させよう、・・・念の為にリュートの部屋の近くにするよう言っておくが、それでいいな?」
「あぁ、かたじけないのう。
リュートよ、お主もそれで構わんな?」
「え・・・!?・・・あぁ、はい。」
リュートは曖昧に返事をした、・・・というのも。
(てゆうか、何日ここに滞在させるつもりなんだろう!?
ディアヴォロの封印っていう大仕事はもう終わったんだから、もう僕に用事はないはずじゃないのかな!?
それとも封印の他にもまだ何かさせられるとか・・・、さっきの話の続きでもするのかな。)
少しだけ不安になった。
恐らくあと3日〜4日もすれば、リュートは自分達の住む世界「リ=ヴァース」へと帰らなければいけない。
その為には一度レムグランドにある洋館まで戻らなければいけないのだ。
洋館の地下にある魔法陣から、アギトと共にレイラインでの異世界間移動をしないと元の世界へは帰れない。
勿論、それまでの間アギトだけでは帰ることは不可能だから・・・きっと待ちぼうけさせることになるだろう。
(まぁ・・・まだあと3日はあるんだ、レムからアビスへ来る時だってそんなに時間はかかってないし・・・。
きっと大丈夫だよね、大佐との約束にもリ=ヴァースに帰る日までに僕を返すように言ってたんだから・・・。)
そんなことを考えていると、奥の方から団体さんが姿を現した。
ディアヴォロのいる隔壁の間へ行くには、限定された者しか連れて行けなかった為、置いてけぼりを食らった他の仲間が合流しに来たようだった。
ハルヒ、イフォン、メイロンは勿論、サイロンの仲間だ。
サイロンを見つけるや否や、メイロンは猛ダッシュで兄であるサイロンに抱きついていた。
ハルヒとイフォンもにこやかに自分達の主が無事なのを確認すると、ほっと胸を撫で下ろしているように見えた。
相変わらずのメンバーが揃った中、リュートは他の連中のことが気になっていた。
・・・ルイドの仲間。
リュートはルイドの仲間を一度も見たことがなかった、というよりルイドにはどれだけの仲間が・・・配下がいるのか全く知らなかったのだ。
以前、レムグランドに襲撃に来た時は下級の魔物を召喚して現れたから・・・あれは仲間というより捨て駒に過ぎないだろう。
隔壁の間へ行く前に見かけた武人がルイドに歩み寄って、跪いていた。
余程の忠誠心があるのだろう、恭しく振舞っているのがよくわかる。
そしてもう一人・・・、武人の後ろから現われたもう一人のルイドの仲間・・・。
「・・・えっ!!?」
リュートは目を疑った・・・というよりも、どうしてこんな所にいるのかが理解出来なかった。
姿を見た途端、目の錯覚なのかと思うように両目をこすって・・・再度確認する。
・・・が、やはり見間違いではない。
間違いなく本人だった。
「ドルチェ!?一体どうしてこんな所にいるのっ!?」
むしろ「どうして」ではなく、「どうやって」と言った方が正しいかもしれない。
武人の後ろから現われた少女・・・、真っ白いミニのワンピースを身にまとい、腰よりずっと上の方で真っ赤な細いリボンが編み込まれていて背中で大きく結ばれている、薄いピンク色のガーターベルトを付けていて厚底の白いブーツで歩いて来た。
いつもは頭のてっぺんに大きなリボンのカチューシャを付けて、長いサラサラの金髪ストレートは真っ直ぐに伸ばしたままなのだが今日のドルチェは、ツインテールの根元に淡いオレンジ色のフリル付きのリボンを結んでいた。
リュートの言葉に反応したドルチェは、声のした方向に目をやると・・・にっこりと柔らかく微笑み返してきた。
「え・・・、何か今日ものすごく機嫌良かったりする!?」
リュートはこれまでたったの一度も、ドルチェが微笑んだ顔を見たことがなかった。
いつも感情のない人形のように無表情で、何に対しても感情を露わにすることがなく・・・心を失ったかのような雰囲気を持っていた。
ドルチェが笑みを浮かべたままリュートに近付こうとした時、ルイドが険しい表情で間に割って入った。
突然ルイドが視界に現れたので、リュートは飛び上がる程ビックリした。
「ヴァル・・・、なぜフィアナがここにいる!?
俺は連れて来るなと命じたはずだぞ!?」
押し殺したような声色で、ヴァル・・・と呼ばれた武人の男に射抜くような視線を向けた。
ルイドの怒りにヴァルは慌てて弁解をした、ルイドがそれ程恐ろしいのか・・・ヴァルの表情は一瞬で固まってしまっている。
しかしフィアナ・・・と呼ばれたドルチェそのものの姿形をした少女は、気にする様子もなく笑いながら答えた。
「ヴァルバロッサのことは叱る必要ないわよ、あたしが勝手について来たんだもの。
闇の戦士がどんな子か・・・、興味があったからね。」
「え・・・、ドルチェじゃ・・・ないの!?」
リュートはますます混乱してきた。
似ているだけで全くの別人というには、余りに似すぎているからだ。
身長、声、瞳、髪質、肌の色・・・まるで鏡に映したかのように、本人と全く大差なかったのだから無理もなかった。
「違うわよ。」
ドルチェ・・・、その言葉を聞く度にフィアナという少女の笑顔に闇が映る。
しかしそれもすぐに消え去り、また元の・・・異性の心をくすぐるような愛らしい笑みを浮かべて・・・話しかける。
「ねぇルイド、あたし闇の戦士と話がしたいんだけど・・・?」
「ダメだ、お前はもう前線基地に帰るんだ。」
にべもなくルイドは、冷たくそう言い放つ。
だがルイドの冷たい言葉に全く動揺することなく、フィアナは笑顔を浮かべたまま・・・またすぐリュートへと視線を戻す。
まるで彼の言葉が届いていないかのように・・・。
「闇の戦士・・・、オルフェに伝えてちょうだい!?
お前のフィアナはここにいる・・・って。」
「フィアナ!!」
今度こそ怒鳴ったのはルイドではなくヴァルで、素早くフィアナを後ろから拘束するように大きな両腕で抱き抱えた。
抵抗することもなくフィアナは目線でリュートに訴え続けている。
「申し訳ありませんでしたルイド様、これは私が連れ帰りますので・・・!」
「あぁ、頼んだぞ。
それからわかっているとは思うが、フィアナには必ず拘束具を付けさせるんだ。いいな!?」
「はっ!!」
ヴァルという武人は、礼儀を重んじる人物なのだろうか・・・ルイドだけではなくその場にいたサイロン、リュートにも一礼すると
その場から退散するように消えていった。
呆気に取られるリュートに、ルイドがマントをひるがえして向き直ると・・・気を取り直したかのように言葉を続けた。
「混乱させて悪かったな、今のは忘れてくれ。
あいつの戯言だ。」
リュートにはとてもそうは思えなかった、フィアナの表情には・・・笑みこそあったが真剣な願いそのもののように聞こえたからだ。
しかしリュートがそれ以上追及することはなかった、封印の儀式による疲労が一気に襲ってきたかのように突然立ちくらみがした。
「おっと!!」
後ろに倒れかかったリュートの背中を支えたのはサイロンであり、ここで一旦行動中止となった。
「ルイド、もう限界のようだから部屋に連れて行きたいんじゃがのう。」
「そうだな・・・、精霊との契約に召喚、封印・・・。
これだけのことを成したのだから無理もない、今すぐ配下の者を呼ぶからもう少し待っていてくれ。」
それだけ言ってルイドは、がらんとしたクジャナ宮の中を一人歩いて行ってしまった。
リュートは目まいの後に異常なまでの眠気が襲って来て、我慢していられなかった。
まぶたがものすごく重く、海の中をたゆたうみたいにゆらゆらと・・・深い眠りへと落ちて行ってしまった。