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【長編・完結済】ツインスピカ  作者: 遠堂 沙弥
異世界レムグランド編 2
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第48話 「国王からの親書」

 何分位待っただろうか、この書物に囲まれた一室にオルフェと二人だけという空間が、ものすごく長く感じさせた。

やがてオルフェは、リュートの言葉に応えて・・・再び溜め息交じりに話しだした。

今度は・・・、しっかりとリュートの目を見据えて。


「君も随分と言うようになりましたね。

 初めてこの世界に来た時には、いつもアギトの後ろに隠れて消極的な態度を取っていたというのに・・・。

 ・・・そうですね、そういう心の変化も・・・成長と言っていいでしょう。」


 そう言ったオルフェの顔には、リュートの知ってる笑顔が現われていた。

不敵な笑みを浮かべて・・・まるでこちらの本心を見透かしたような瞳、イヤミっぽい口調。

リュートはほんの少しだけ、ほっとした。

もし自分の言葉で・・・少しでもオルフェの不安や悩みを払拭ふっしょくできたのならば、これ程嬉しいことはない。

リュートの顔に再び、安堵の表情が現われる。

オルフェもそれを確認して、詫びるようにリュートに話しかけた。

「情けない姿を見せてしまいましたね、申し訳ありませんでした。

 君達の先頭に立って導くのが我々、師としての役割だと言うのに・・・。なんと情けない師でしょうね、私は。」

そんなことないですよ、と言いたかったが・・・言うのを躊躇った。

「君の心意気は見せてもらいました、それにアギトの思いも一緒にね。

 どんなに悩んで、隠し通したとしても・・・隠しきれるものではありません。

 アギトが目を覚ました時、彼にも言うつもりですが・・・先に君に聞いてもらいます。

 私は事実を突きつけて出来る限りの方法を考えるしか能のない人間です、他人を励ます術はどうも苦手でしてね。

 情けないことですが、アギトの励まし役を・・・君にしていただきたい。」

真っ直ぐとリュートを見据えてそう言うオルフェに、少し照れながらリュートが頷いた。

「元々アギトの励まし役は僕だって決まってるようなものですから、気にしないでください。」

しかし、このオルフェの言い回しはどうにも気になって仕方がなかった。

歯に食べ物が挟まってなかなか取れない時のような、そんなむず痒い気持ちになってしょうがない。

リュートは黙って、早く続きの言葉が聞けるように返事は手短かに済ませるように心掛けた。

「実はアギトのレベルアップにこれだけ焦っていたのは、・・・これのせいなんです。」

そう言って渡された一通の封筒・・・、誰かからの手紙だろうか?

差出人が書いてあるだろう場所に目を落とすが・・・、当然リュートには何て書いてあるのかはわからなかった。

勿論オルフェもそんなことは百も承知だろう、ただ・・・この手紙の上質さ、そして封をしていた・・・ろうの刻印を、

リュートに見てほしかったのかもしれない。

リュートが口を挟む間も与えずオルフェは、この手紙が一体誰から来たものなのか、それを話した。

「これは我がレムグランド国の国王陛下から来た親書です。

 これにはこんな内容が書かれていました。」

そう言って、オルフェはすでに手紙の内容を暗記しているのか・・・封筒の中身をリュートの方に見せながら、まるで手紙を

そのまま書いてある通りに読みあげた。


「異界より光の戦士が現われ数週間が経つ、その後・・・戦士の強さはめまぐるしい成長を遂げていることと思う。

 そこで我がレムグランドの首都にて、戦士の器を図る余興を行なうこととなった。

 これより13日後に我が首都に来たりて、光の戦士とレッドドラゴンとの決闘を申し渡す。

 光の戦士がこれに勝利せぬ場合は、共に現れた闇の戦士に対し自由を与える処遇は一切許さず、これを厳罰に処す。

 これはレムグランド国王、レヴィガルシアヌス・ヴァルキリアスからの至上命令とする。」


 オルフェから読んでもらった手紙の一文は・・・、そうなっていた。

堅苦しい言葉使いで、文章の全てを理解するには・・・もっと何度も読んでもらわなければ理解出来なかったが・・・、

肝心なところは把握できたと思う・・・。

つまり・・・、アギトは首都に行って・・・そのレッドドラゴンという魔物と戦わなくてはならない。

手紙には「勝利せぬ場合」とあるが、これはつまり・・・勝てなかったら死ぬ、・・・そういうことなのだろうか?

それに・・・気のせいか、自分のことも何か書かれていたような気がしたが・・・?

リュートが困惑しているのを察して・・・、オルフェは再び手紙を自分の手元にしまうと、手紙の意味を詳しく説明した。


「ここに書かれているのは、・・・内容としては大体理解してもらえたと思いますが、一応説明しますね?

 光の戦士であるアギトはレムグランド国の首都に出向いて、そこで行なわれるドラゴンとの決闘に勝利しなければ

 いけません。

 もしアギトがドラゴンを倒せなかった場合、それはそのままアギトの死につながります。

 国王は完全なる勝利をお望みです、そこに相討ちや中断・・・ましてや降参なんて有り得ません。

 どちらかが死ぬまで、この決闘は続けられることでしょう。

 そして万が一アギトがドラゴンに敗北してしまった場合ですが・・・、君達二人がこの異世界に降り立った時に・・・

 国王陛下直属の部下が・・・すでに光と闇の戦士、両方の存在を陛下に報告済みなのです。

 例え私でも・・・君の存在を隠し通すことは出来ません。

 そこで私は国王陛下に書状を送り、陛下の恩情を仰ぎました。

 闇の戦士も我が国の勢力に導けば大きな戦力になると・・・、陛下も最初はそれで納得された。

 しかしこの親書の内容から見てもわかるように・・・、アギトがドラゴンに倒された場合は・・・・・・リュート。

 君もその時点で即刻死刑が宣告されてしまい、その余興の醍醐味として・・・・・・その場で処刑されてしまう。」


 リュートは愕然とした。

あまりの衝撃に・・・、リュートはオルフェから目が逸らせなかった、まばたきすら忘れる程だった。

ショックを受けるリュートに、オルフェは更なる追い打ちをかけた。

「・・・そしてこの親書にある『13日後』というのは、国王陛下がこの親書を綴った翌日から今日まで・・・

 すでに4日経過しています。

 この洋館から首都まで、どんなに馬車を早く走らせても4日はかかってしまう。

 先に断っておきますが、レイラインでの移動は不可能です・・・、首都がある周辺にはレイラインがなく、

 ここの地下にある魔法陣から首都へ移動する方法はありません。

 一番早い方法でも、馬を走らせるという手段しかないのです。

 つまり、現時点で訓練が許される日数は・・・翌日から移動中を入れたとしても、実質9日もありません。」


 めまいがする・・・、アギトが・・・9日後には巨大なドラゴンと決闘しなければいけない・・・!?

しかもそれにアギトが負けたら、自分も処刑されることに・・・。

一体・・・どうしてこんなことに・・・!?

「どうしてですか・・・!?

 アギトはこの世界を救う為に選ばれた、光の戦士じゃないんですかっ!?

 そのアギトがどうして力を示すのに、戦争と全く関係ない余興なんかでドラゴンと戦わなくちゃいけないんですか!?

 おかしい・・・、こんなのおかしすぎるっ!!」

苦悩するリュートに、ハッと・・・あることが浮かんだ。

「そうだ・・・、ザナハは!?

 ザナハなら姫だし・・・光の神子だし・・・、ザナハが反対すれば国王だって考え直すんじゃ・・・っ!」

その提案に、オルフェはにべもなく否定した。

「この親書には『至上命令』とありました、つまりどんなことがあろうと・・・決行されるという意味です。

 何に置いても・・・、何に変えても・・・、それが覆されることはない。

 例えザナハ姫が異論を唱えても・・・、何の効果も示さないでしょう。」

全ての可能性を否定されたような気がした。

成す術もない・・・、もはやどうすることも出来ないと・・・オルフェの言葉はそう断言していた。


 こういうことだったんだ・・・と、リュートは痛感していた。

オルフェがこんなにも深く悩んでいた理由・・・、この国王の命令に逆らうことが出来ず・・・一人焦っていた。

アギトがドラゴンに勝つ為に、何とかする為に、オルフェは焦って・・・危険な賭けに出たのだと・・・今、理解した。

オルフェは恐らく、この洋館にいる人間に誰一人として・・・相談しなかったのだろう。

そうでなければ・・・ジャックがあんな風に、いつも通りに明るく振舞ってくれるとは思えなかった。

でも、もしかしたらミラは知っていたのかもしれない・・・。

オルフェの訓練によって湖の方から爆発が起こった時・・・、ミラは一人冷静だった。

そしてオルフェの修行の影響だろうと察して、兵士が大騒ぎしないように指示していたこと・・・、これで納得がいく。


 多分オルフェは・・・、自分で打開策が見つからないのなら・・・他に方法はないと完結したのだろう。

他の者に相談したところで・・・混乱させるだけだし、短期間でドラゴンを倒せる位に強くなる方法なんてないと・・・。

それがよくわかっていたからこそ・・・、オルフェは一人・・・頭を悩ませていた・・・。

正直・・・、自分でもどうしたらいいのかわからない。

アギトの励まし役になってほしいと言われても・・・、こんな事実を聞かされて・・・どう励ましたらいいのだろう?

思い浮かぶ言葉は全て、うわべだけの・・・その場しのぎの言葉だけだった・・・。

リュートも混乱する・・・、そして一人でずっと悩んできたオルフェ相手に・・・こんな馬鹿な台詞を吐いていた。


「大佐・・・、僕・・・どうしたらいいんだろう。」


 自分の愚かさに腹が立った・・・、そんな馬鹿な台詞を目の前で告げられて、それでもリュートに申し訳ないという

ような困った顔で・・・、無理に笑顔を作るオルフェの気持ちが・・・、リュートには痛々しかった・・・。


  

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