第293話 「扉の向こう側」
―――――何が起こったのか、その場に居た誰もが理解出来なかった。
自らを犠牲にしようとするリュートを取り戻す為、アギトは仲間達が命がけで作った道を突き進み巨大な扉の前へと辿り着く。
世界を破滅へと導く存在ディアヴォロが封印されている扉の前にいたリュートと言葉を交わし、そして・・・・・・。
突如として現れた時空の歪みに、吸い込まれるように跡形もなく姿を消してしまったアギト。
交わした言葉までは聞きとることが出来なかったが抵抗の意思を示すアギトが消えて行く瞬間だけはしっかりとその目で確認していたザナハは完全に言葉を失っている様子である。
ショックの余りザナハはしばらくの間絶句したままで、リュートが静かに黙って立ち尽くしている場所をじっと見つめ・・・それからやっと口を開く。
「どういう・・・こと? ―――――え?
アギトは!? 一体何が起こったっていうの!? アギトはどこに消えちゃったのっ!?
ねぇ誰か答えてよ、リュートが何かしたの!? リュートがアギトを・・・っ。
そんなはず・・・そんなはずないっ、だってアギトはリュートの・・・友達、なのに・・・っ!」
最後の希望だった。
大切な仲間を連れ戻す唯一の頼みの綱だった、そのアギトが今―――――ザナハ達の目の前で消えたのだ。
誰も答えぬままザナハは言いたくない言葉を言いかけて、否定するように口を閉ざす。それ以上口にすることが躊躇われた。
それ以上言ったらもう二度と戻れない気がしたからである。
仲睦まじかったあの頃に・・・。
取り乱すザナハを宥めるように、足が震えて自分の力で立つことすら出来ない状態のザナハを支えるようにサイロンがそっと手を貸す。優しく背中をさすりながら悲痛な面持ちで扉の前に立つリュートを見つめた。
(―――――リュートよ、親父殿が持っていたであろう『マリスミゼラ』を今このタイミングで使いおったか・・・。
それがお主の答えなのじゃな、そうまでしてお主はあやつのことを・・・っ!)
襲い来る死者の群れをハルヒが薙ぎ払っている間、ユリアによって負を植えつけられたミラを庇いながらオルフェはホーリーランスを手に戦う。せめて言葉を紡ぐことが出来れば広範囲呪文によって死者の群れを一掃させることも容易いと思っていたのだが、今のザナハの状態を見ていると沈黙魔法の解除呪文を使えるかどうか甚だ疑問であった。
そんなオルフェの視線に気付いたサイロンがザナハを元気付け、戦線復帰させようと言葉をかける。
「しっかりするのじゃ姫神子よ、お主がそんなことでどうするというのじゃ。
あやつのことなら心配いらん。
お主が思っておるようにあの二人は親友同士なんじゃろうが、ならばリュートが友を傷付けると思うか?
今は余計なことは考えずに、リュートを連れ戻すことだけを考えるんじゃ。
よいか? 光の戦士にばかり頼るのではなく、余達も頼ってくれのう?
リュートを連れ戻したいのはお主だけではないということを、忘れるでないぞ」
そう励ましながらも心の中では反対の思惑がサイロンを惑わせていた。
(じゃがしかしこれはルイドの遺志でもある・・・、ルイドの友として・・・本当にそれで良いのか?
余は双つ星の見届け人として闇の戦士が散っていく姿を最期まで見届けなければならんというのに、なぜじゃ。
光の戦士や姫神子を見ていると、それが誤った選択だと思えてならん。
ルイドの望みを叶える為にここまで来たというのに、余は何を迷っておるのじゃ・・・。
今このチャンスを逃してしまえば、もう二度と・・・ディアヴォロを完全廃棄することなど・・・)
サイロンが激励の言葉をザナハにかけるが、頼りにしていたアギトがいずこかへ消え去ったショックは殊の外大きかったようで、ザナハは力なく床に膝をついてしまう。
「違う・・・こんなの現実じゃない・・・、アギトが消えるわけない・・・。
リュートを連れ戻して、またみんなで帰るのよ。
楽しかったあの頃に返るんだから・・・、それをしないでアギトが消えるはずない・・・いなくなるなんて・・・!」
小さく呟きながら現実を認めようとしないザナハの姿にサイロンは哀れに思い、オルフェと同じように襲い来る死者の群れからザナハを守るような形で陣を取る。
アギトの存在が消失したことによって相当のダメージを受けたことをサイロンの態度から察したオルフェは、憐れむ表情すら見せず前だけを見据えて下級魔術を連発させた。
戦線復帰が望めないザナハにこれ以上期待しても無駄だと判断したのか、オルフェは死者達を退けながらも少しずつ後退して行く。
(アギトが消失してしまった以上、ここに長居するわけにはいかなくなりました。
闇の眷族と成り果てたユリアの目的はともかくとして、ここはリュートの行動に賭ける他ありませんね。
口では何と言おうがあのリュートが、ザナハ姫の生きるこの世界をあっさり見捨てるとは思えません。
何かしらの対策、保険をかけた上で取っている行動なのだと推測するしかない。
やれやれ・・・推測や憶測だけで行動するのはあまり好きではないんですが、唯一の救いだった光の戦士を失った現状そうも言ってられませんからね。
リュートの当初の目的でもこの隔壁の間に辿り着く予定だった者はアギトやザナハ姫だけだったはず。
つまりこの場に私達が居なくても、ユリアを出し抜いて自分達の計画を実行させることが出来たということ。
それならばこのまま後退し、せめてアンフィニであるザナハ姫だけでもここから無事脱出させなければ・・・)
戦いながらも少しずつ少しずつ離脱の態勢を取っていることに気付いたハルヒやサイロンは、今の状態から見てそれが最も妥当な作戦だと察したのか同じように戦いながらこの場を脱するタイミングを見計らうようにした。
当然扉からだんだん離れて行くオルフェ達の行動を即座に把握したユリアはにやりと笑みを作る。
「そう、今はそれが賢明な判断かもね。
ディアヴォロ様を打ち倒す力を持つ双つ星のオリジナルは消失、戦意を喪失したアンフィニは使い物にならない。
精霊を行使出来る者がいなければあたし達に対抗する力なんてないに等しいものね」
そう勝ち誇りながらユリアは扉の前に立つリュートを見て、口の端から笑みが消えた。
(それにしてもあの子・・・、まさか『マリスミゼラ』を持っていただなんて・・・迂闊だったわ。
あの子達に内緒で進めていた計画には光の戦士も必要だったけれど、居ないならそれに越したことはない・・・でも。
元々ディアヴォロ様の核を寄生させた状態で、光の戦士の存在をも完全に取り込んでもらおうと思ってたけど、ディアヴォロ様に唯一対抗する力を持っている存在が消失してしまったとして・・・、さほど大きな問題にはならないかしらね。
このままあの子が無事に扉を開け、核を受け入れる姿勢さえ取れば・・・後はこちらの思いのまま・・・ふふっ。
さぁリュート君、魔剣の力で扉の封印を解きその身に核を宿すのよ!)
この世界から永遠にアギトを追放した、自らの手で・・・。
もう二度とあの笑顔をこの目で見ることは出来ないのだと、そしてもう・・・その必要もないのだと。
リュートの脳裏にはアギトの最後、必死になって自分に手を伸ばそうとする姿だけが焼きついて離れなかった。
自分の名前を呼び、手を伸ばし、一緒に生きようと叫んだ友・・・。
他に残された方法がないとはいえ、最初からこうすると決めていたとはいえ、その選択がとても残酷で非情な行為なのだと何度も何度も罪悪感に苛まれた。
床に視線を落としたまま放心状態になっているリュートに対し、時間がないことを銀髪の精霊クロノスが告げる。
『闇の戦士リュートよ、急げ。
早くしなければあの眷族に私達の動きを悟られかねない・・・』
「・・・わかってる、この左手にある魔剣で・・・扉の封印を解くんだろ」
クロノスの言葉で背中を押されたリュートは意識をしっかり保つようにして、再び冷徹な自分を演じた。
雑念を振り払い非情に徹する態度を取らなければ自分を保つことが出来ないからである、そうしなければ今にも『本当は自分の行動が間違っているのではないだろうか』という迷いが生じてしまうから。
リュートは一瞬だけザナハ達の方へ視線をやった。
最初から彼等との距離を測っていたわけではないが、気のせいか先程より距離が離れているように見えた。
封印の扉を解放すれば凄まじい負が放たれる可能性がある、少しでも自分が立つ位置から離れている方が安全だと思ったリュートはオルフェ達が撤退しようとしていることに反対するつもりはない。
むしろ今はそうしてくれた方が有り難かった。
ディアヴォロの核を宿し、その後自分が消えてなくなる姿なんてザナハに見られたくなかったから。
その時、少しだけザナハへの想いがリュートの心をかすった。
しかしすぐさまそれを捨て去る、今の自分にはその資格すらない。
ルイドに『最も大切なものが何なのか、それを思い出せ』と、そう言われた時。
リュートは恋焦がれていたはずのザナハより、心からの友であったアギトを選んでいた。
もしザナハのことを選んでいたら、今とは違う結末が待っていたかもしれない。
でも今更それも遅い、―――――――時は戻らないのだから。
ザナハよりアギトを選んだ自分が、今になってザナハを想うなんて勝手なことは許されない。
だからこそ・・・、今すぐにでも実行するべきなのだ。
リュートは扉の正面に立つと左腕を高く掲げて叫んだ。
「我が左手に宿りし闇の神子の魂、その命を剣と変え力を示せ!
そして邪悪なる存在たるものを封印せし扉を開放する鍵と成せ!」
力強い言葉に反応するようにリュートの左腕には、皮膚の中に蛇が巻きついているようになっている物体がドクンドクンと脈打ち、やがて肌色をしていた皮膚が紫色に変色して行く。
血管が腫れ上がるように浮き上がると左腕の血肉がうごめき、次第に形を成していった。
手の甲から生え出した物体は、リュートの血肉を糧に形成されそれはまるで生きた剣のように見える。
――――――実際には『仮』であるがリュートは遂に魔剣をその手にしたのだ。
不気味な色合い、そして形。
見ているだけで吐き気をもよおしそうな自分の左腕を見つめ、表情を歪めるリュート。
しかしそんな風に扱ってはいけない、これは『闇の神子の魂』そのものなのだから。
(ごめん、使わせてもらうよ―――――――――エヴァン)
リュートは心の中でそう謝罪の言葉を述べると、ちらりとクロノスへ視線を送る。
クロノスは口を閉ざしたまま頷き、扉の方へ視線を走らせ合図を送った。
もう一度魔剣と化した左腕を高くかざすと、ちょうど手の甲部分が剣の柄部分になっておりそこから青白い光が放たれる。
肉の塊の奥から鈍い音を発しながら何かが這い出してくる、濃い紫色の石が姿を現しそれが光を発していた。
『魔剣の核、つまりは闇の神子の魂の塊といったところか。
リュートよ・・・その魔剣は一時的なもの、つまりその石がある限り魔剣を形成させてはいるがそう長くはもたない。
石が光を発している内に早く扉を・・・』
魂の宿った左腕に敬意を払いつつリュートは目の前にある扉へと、魔剣を近付ける。
特に変わった所作や仕草をすることなく魔剣そのものが鍵である証拠だと示すように、扉にかけられた封印はあっさりと解除されてしまった。長年アビスグランドの王族がその身を使って必死の思いで封印を施してきたにも関わらず、リュートは魔剣を掲げただけであっさりとその封印を解いてしまったのだ。
ごくんと生唾を飲み込み、あの日の悪夢が蘇る。
扉を前にしただけで襲ってくる負の感情、しかし今のリュートは心が弱かったあの頃とは違う。
今は強い意思を持ち、強い信念を持ってここに立っているのだ。
そっと、扉に軽く触れる。
すると指先がほんの少し当たっただけで大きく重々しく聳え立っている扉は、まるで鳥の羽根のような軽さで動いた。
ズズッ・・・という石と石がこすれ合う音を立ててゆっくり開き、ほんの少しだけ隙間が開く。
瞬間轟音と共に凄まじい風が吹き荒び、咄嗟にリュートは前屈みになって突風に飛ばされないように踏ん張った。
背筋が凍りそうな程に冷たい風はリュートをすり抜けて行くと、後方にいる死者達にも容赦なく吹きつけて行く。
リュートが後ろを振り向くと扉から吹きつけた風は『負』そのものであり、ユリアが作り出したネクロマンサーの術によって生み出された死者達に更なる『負』を与えていた。
苦しみ、憎しみ、それらが増大して行くことによって死者達は一旦戦いの手を止めている。
例え『負』の存在として生み出されたとはいえ、彼等に吹きつけられた『負』はその肉体に負担を与えているようだった。
抑えきれない激しい激情に死者達の中には頭を抱える者、両肩を抱く者、うずくまる者、それぞれが溢れんばかりの『負の感情』をその肉体に取り込もうともがいている。
それが出来ない者は先に肉体が限界に達し、自滅して行った。
しかしディアヴォロ自らが発した『負』を取り込むことに成功した見返りはかなり大きいらしく、それまでただ闇雲にがむしゃらに襲いかかっていたのが、足元に転がっている遺骸の骨を手に取り武器として戦おうと、知恵を付けた者が現れた。
(―――――――こうして眷族を増やすのか、もたもたしてられないな)
少し焦りの見えたリュートは、今度は両手で扉を大きく開け放った。
中は少しカビ臭く湿った空気が周囲を漂っている、真っ暗で陰気な所が余計に不気味さを増していた。
扉を開けた目の前にはディアヴォロ本体があると思っていたが最初に目の前に現れたのは、何もないフロアだった。
しかし目を凝らして奥の方をよく見てみると、わずかなランプの明かりがちかちかと光っているのがわかる。
これまでディアヴォロという存在が世界にとって災厄と成り得る危険なもの、と認識していたが元々は過去の人間達が造り出した『魔道兵器』であったことを思い出す。
よくある魔王や魔族といったそういう生物の類ではなく、相手は機械・・・物体なのだ。
扉とフロアの境に立ったままリュートは少し先に見えるディアヴォロを前に、それ以上歩を進めずにいた。
(こんな・・・、こんなものの為に今まで数多くの神子や戦士が命を奪われてきた・・・っ!
自分達で造り出しておいて、都合が悪いものだとわかった途端にその尻拭いを僕達に課して来た・・・っ!
人間なんて・・・本当に自分勝手で傲慢で、どうしようもない生き物だ)
リュートの中にわずかな憎しみの炎が揺らいだ。
今まで深く考えないようにしてきたドス黒い感情がじわじわとあぶり出されていく。
奥歯を噛み締め怒りを必死に堪える、ディアヴォロに対してではなく双つ星や神子を利用し続けて来たこの世界の人間達に対してわき上がった怒りを堪えた。
(でもこれでもう終わり、何もかも終わりにするんだ・・・っ!)
リュートは歩き出した。
フロアの先にあるわずかなランプを発するディアヴォロに向かってではなく、全く別の方向へ。
ディアヴォロの核を宿すにはディアヴォロ本体の元へ行かなくてはならない。
それが本体のある方向から逸れて歩いて行くリュートに、ユリアはここに来て初めて怒りの表情を見せた。
「やっぱりそういうことだったのねっ!?
お前・・・っ、初めからアウラを解放する為に今まであたし達に従ってたフリを・・・っ!」
ユリアの声が聞こえていたリュートは同じように声を張り上げ、答えた。
「そうだ、先の大戦の時にここでアウラと初めて対面したルイドは彼女と、ある約束を交わしたんだ!
初代神子にして初代アンフィニであるアウラの力を借りてディアヴォロを倒す為に!
そうすれば光の戦士であるアギトがわざわざその手を汚す必要なんてなくなるから!」
扉の向こう側―――――――暗いフロアの中リュートが辿り着いたのはディアヴォロ本体の前ではなく、歪んだように見える丸い球体の中に佇む一人の少女の前だった。
色素の薄い水色の長い髪、血の気が失せたような青白い肌、魂が抜けたような虚ろな眼差しが青い髪の少年の姿を捉えると、抜け殻のようだった表情からわずかに笑みがこぼれる。
リュートは慈しむように、気が遠くなる程の長い間ずっとたった一人きりでこの場所に存在した哀れな少女を見上げた。
「長い間待たせてごめん、でも・・・ようやくだから。
やっと君の願いを叶えることが出来るから。
君から受け取ったメモリーボックスは、ちゃんとパイロンさんに渡しておいたよ。
彼もすごく喜んでた、・・・先に逝って待ってるって。
だから・・・君の願いを叶える為に、僕に力を・・・君の力を貸してくれ。
君と僕とで、―――――――共にディアヴォロを道連れにしよう」
語りかけて来る青い髪の少年リュートに微笑み、アウラの頬を一筋の涙が伝う。
待ち焦がれて来た瞬間、ずっと願い続けた想いが今叶えられる、そう思うと涙を流さずにはいられなかった。
「・・・嬉しい、やっとあたしも・・・彼の元へ逝けるのね」
アウラの切なく語る言葉を聞き届け、リュートは背伸びするように自分の身長よりずっと上にある丸い球体へと手を伸ばす。
そしてアウラもまた球体の中から見下ろすように、リュートの方へと手の平をかざした。
―――――――――刹那。
突然リュートは脇腹に衝撃を受けた、炎に焼かれた様な熱を感じた直後にリュートは激しい痛みに襲われた。
何が起きたのか一瞬わからなかったリュートはゆっくりと、激痛の走る右側の脇腹の方へと視線をゆっくり落としていく。
見るとリュートの脇腹にはナイフが突き付けられていた。
そこからおびただしい量の血が溢れ、ぼたぼたと床に落ちて行く。
深く刺さったナイフを見た瞬間に今度は呼吸することも困難になって来て、リュートは痛みと出血で床に膝をついた。
(何・・・だ、一体何が・・・どうなって・・・!?)
今ナイフを抜くと更に出血すると察したリュートはそのままナイフを抜かず息を荒らげ、それからすぐ近くに誰かの存在を感じた。
ゆっくりと視線を動かしていくとそこには誰かが立っている、両足を確認して・・・それから上の方へと辿って行く。
「君・・・は・・・っ」
両手には血を、恐らく今リュートの脇腹に刺さっているナイフを握っていたであろう両手には、リュートの血がたっぷりと塗られているイフォンの姿を捉えた。
容赦なく深く突き刺した所から、相当の憎しみが込められていたんだろうと推察する。
イフォンはまるで何かに操られているかのように、その瞳は狂気に満ちていた。
「姉さんの仇・・・、姉さんを殺した奴は殺す・・・この僕が・・・殺してやるんだっ」
リュートは襲い来る激痛のせいで意識を失いそうになっていた、そんな中でも遠くに居るはずのユリアの声だけは不思議としっかり聞き取ることが出来た。
「君達があたしを出し抜こうとしていること位、とっくにわかっていたわ。
何の準備も策もなく、このあたしがただ黙って君達の手足になっていたと思う?
愛とは狂気を生み出す道具、この子にはそれに見合うだけの愛も憎しみも備わっていた・・・。
さぁ・・・、これで君は抗う術を失った。
精神的にも肉体的にも衰弱した今なら・・・!
ディアヴォロ様の核を受け入れた途端、君の肉体も精神も乗っ取ることは容易だわ!
このまま全てを受け入れなさい、そして闇に心を委ねなさい・・・双つ星の戦士よっ!」