第274話 「悪こそ純粋」
後書きの方にて「ツインスピカ・キャラクター人気投票結果発表」しております。どうぞご覧ください☆
オルフェの戦闘態勢をきっかけにアギト達もそれぞれ武器を構えてジークに狙いを定める、それを見たジークもまた不敵な笑みを浮かべながらローブの中に隠し持っていた脇差を両手に構え、真っ直ぐと向き合った。それからちらりと闇のオーラに冒され続けている4軍団を横目で確認する。
激しい苦痛を伴うのか、4軍団はぐったりと床にうずくまったまま息を荒らげていた。オルフェも同じように観察しつつ、彼等が闇の眷族に成り果てて敵が増えてしまう前にジークを倒してしまおうと早速ホーリーランスにマナを込め、先生攻撃を仕掛けた。
ディアヴォロの眷族に有効な攻撃は精霊の力、オルフェの魔術自体はただの属性魔法なので有効な手段ではないと思い精霊の加護を宿したホーリーランスで武器攻撃を中心としたのだ。
その間にも精霊を召喚させる為にアギト、そしてザナハを後退させてミラやドルチェがバックアップに回る。2丁の拳銃で連続射撃を行なうミラ、ドルチェは補助魔法専門であるねこのぬいぐるみ「ケット・シー」に持ち替えて援護と回復に専念した。
ザナハは水の精霊ウンディーネを召喚し、局地的な洪水を引き起こす「スプレッド」を発動させる。しかし発動してから直接対象に直撃するまでのわずかなインターバルを計算され、ジークはバックステップで「スプレッド」から逃れる。
だがその直後の連携も計算していたアギトは「スプレッド」で発生した大量の水が床全体に広がった瞬間、ザナハがウンディーネを召喚した時とほぼ同時にヴォルトを召喚しており、すかさず雷属性の魔法「ライトニング」を発動させた。
「ライトニング」が発動した場所は対象であるジークを逸れ、魔術が空振りしたことにジークは高笑いする。
「ははっ、このへたくそが! どこに向けて魔術放ってんだよ!」
「バカはテメーの方だ、自分の足元をよく見てみやがれ!」
「―――――――ハッ!?」
アギトの言葉に素早く自分の足元を見ると床一面が水浸しになっており、自分のローブの裾もずぶ濡れになっていたことに気付く。「しまった」と叫ぶ間もなくジークは床に広がった水を通じて全身に電撃を食らい、短い悲鳴を上げた。
動きを止めたジークに向かってオルフェは距離を詰めるとホーリーランスによる突き攻撃を連続で繰り出し、その間にドルチェは精霊魔法を素早く詠唱出来る為にアギトとザナハに向けて「スペルエンハンス」をかけた。
オルフェが接近戦に持ち込んでる間、ミラはオルフェに攻撃が当たらないようにする為一旦射撃を止める。それから素早く4軍団の様子を窺いながら、ジークの挙動にも細心の注意を払っていた。
(彼等の動きがだんだん小さくなっていってる、もはや肉体的苦痛から精神的苦痛へ変わってると言ってもいいわね。
負のオーラに冒されるということがどれ程の苦痛を強いられるのかわからないけれど、恐らく本人の精神力次第。
心が弱ければあっという間に負に冒されて闇の眷族と成り果ててしまう、彼等の体がまだ外にいた眷族のように
なっていない所を見る限り、―――――――そういった変化はまだ現れていない。
でもだからと言って油断も出来ないわね、一刻も早く決着をつけなければルイドの方も気になるし。)
「ウンディーネ! トリアイナによる攻撃を!」
ザナハの呼びかけにウンディーネは自身と同じ水で作り上げた2メートル程の三叉戟を手に、オルフェと近接戦闘を行なっているジークめがけて突進して行った。そしてその勢いに乗ったアギトも同じようにヴォルトへ向かって命令を下す。
「よしヴォルト! お前は―――――――、何が出来る?」
アギトは空中に浮かんでいる黒く丸い物体を見つめながら問うた、手足のないその姿を見ればウンディーネのように武器を持って戦うというイメージが全然出来ないのは当然のことながら、それと同時にヴォルトを召喚した戦いをあまり経験したことがないアギトは、脳内をいじくる以外にヴォルトに何が出来るのか全く知識がなかったのだ。
するとヴォルトは静かに浮かんだまま今もなお闇のオーラと戦っている4軍団の方を見つめ、気にかけている様子だった。アギトはヴォルトの視線に気付いて小さく声を漏らす。
「ヴォルト、お前もしかして―――――――負のオーラに冒されてる人間を何とかすることが出来るのか!?」
『ワカラナイ、光ノ精霊ルナナラバ浄化モ出来タデアロウガ―――――――私ノ力ガドコマデ通ジルノカ・・・』
「行って!」
「ザナハっ!?」
アギトとヴォルトの会話を横で聞いていたザナハが叫んだ、能力が未知数である闇の眷族と戦っている時に何を言い出すのかと思っていたアギトであったが、反論している場合でもなかった。もしあのまま4軍団の一人だけでも闇の眷族に成り果てて敵が増えてしまったら、今よりもっと不利な状態になるのは明白である。
それがわかっていたから他の誰もが制止しなかった、まるで「試して来い」と言われているようにアギトは口を閉ざしたまま首を縦に振ると、4軍団が這いつくばっている所へ駆けて行く。
それを見ていたジークは多少苦戦しながらも笑いながら叫んだ。
「ははっ、無駄ムダ! 心に闇を持っている人間を浄化してやることなんて出来やしないよ!
黒い感情を抱いた時点で人間は闇に堕ちた眷族候補なんだ、闇を抱えた時点ですでに終わってんだよ!」
「それでも人は闇を抱えながらも、心に折り合いをつけて生きていけます」
オルフェの顔に笑みはないが、その言葉はどこか自身に訴えかけているようにも取れた。
「折り合い? そんなの自分を誤魔化してるだけじゃないか、どうしてもっと素直にならない?
憎ければ憎めばいい、殺意を抱けば殺してしまえばいい、欲しい物があったら奪えばいい!
それが純粋ってものだろ、正義だ何だと口にしてそんな自分の心の醜さから目を逸らす愚か者よ。
それこそ傲慢だ! 自分は正しい、自分は潔白、自分は正当・・・、自分は自分は自分は自分は自分はっっ!
全く反吐が出るねっ! お前達人間がどれだけ崇高だってんだ、この世に何の害も与えず生きていられる人間が
いるはずないだろうがっ! 人はみんな何かを犠牲にして生きている、それを認めようとしない馬鹿の極みがっ!」
殆ど言葉を吐き捨てるように叫ぶと今までホーリーランスを脇差2本で凌いでいたジークは、オルフェとウンディーネの武器を力強く弾き――――――それから後方に向かって高くジャンプすると、一旦オルフェやウンディーネから距離を離した。
「その象徴となるのが―――――――この小娘だ。」
そう小さく口にするとうずくまっていたフィアナに狙いを絞ったジークは、一旦ブレア達を冒していた闇のオーラを解くと集中的にフィアナを冒し始めた。苦痛から絶叫を上げるフィアナ、ヴォルトを使って脳内を汚染しているであろう闇のオーラを何とかしようとしていたアギトは、その悲鳴を聞いて絶句している。
どす黒くうごめいているように見える闇がフィアナの全身を包み込んで宙に浮く、あまりの苦痛に意識を失ったのか―――――――フィアナは放心した状態で揺らめくように浮かんでいるとゆっくりと大きな瞳を開ける。しかしその瞳の奥は空虚そのもので、笑みも何もない。 今まで感情の起伏が激しく、常に不敵な笑みを浮かべていたフィアナからは想像出来ない―――――――まるで感情が希薄なドルチェを見ているようであった。
「自分の欲しい者を欲する余り、どこまでもその欲に忠実に生きて―――――――そして命を落とした悲劇のヒロイン。
欲望の為なら他者すら陥れ、利用し、自分の思うままに操ろうとした残酷なヒロイン・・・っ!
こいつの心の闇はまさにディアヴォロ様にとって好ましい、熟れた果実そのものだ。
そんな少女の切なる願いを叶える為に、闇の眷族がほんの少し力を貸してやろう。」
「うあああああああああああああああああああああああああっっっ!」
ジークは面白がるように片手をかざすとフィアナを取り巻いていたうごめく闇が、縛り付けるようにまとわりつくとフィアナは悲鳴を上げて苦しんだ。それを目にしていたドルチェが眉根を寄せ思わずフィアナの方へと駆け出したので、慌ててオルフェが制止する。
「フィアナに近付いてはいけません! フィアナの狙いはもはや私ではなく―――――――っ!」
そう言いかけると闇に取り囲まれたままのフィアナの指の先から魔力の糸が伸びていて、床に転がっていた不格好な人形に繋がり操った。その人形は真っ先にドルチェめがけて攻撃を仕掛けて来たので、近くにいたアギトが剣で人形を防ぐ。
宙に浮かんでいたフィアナの体はゆっくりと地面に降り、小さく指を動かしながらアギトによって防がれた人形を自分の側へ戻す。瞳の白目部分が黒く変色し、憎しみの込もった瞳は真っ直ぐと―――――ドルチェに注がれていた。
「あたしのコピー、・・・あたしの存在を奪う存在。
この世にフィアナは二人もいらない―――――――っ!」
わざわざご投票いただき、まことにありがとうございました☆
それでは早速順位を発表させていただきますです(^^)
*同点の場合、50音順です*
第1位 リュート(ダントツ)
第2位 オルフェ
第3位 アギト
アシュレイ(同点)
第4位 ジャック
ユリア
ルイド(同点)
第5位 伊綱
ザナハ(同点)
第6位 ジョゼ
ミア(同点)
以上の結果となりました☆
それではダントツ1位に輝きましたリュートからメッセージです。
「えっと、ありがとうございました! 今の僕はものすごい頭おかしくなっちゃってますが、それにも関わらず選んでくれてすごく嬉しいです! これからもツインスピカごとよろしくお願いします!」
え~、多分票入れてくれた人の中にはリュート君が頭おかしくなっちゃう前に入れてくれた人が殆どだと思いますが・・・、とにかく良かったです☆
若干納得いってないキャラもいるようですがそれはいずれ「ツインスピカ~追加レシピ集~」の方で散々愚痴ってもらうことにします。
なお、完結しましたらこのあとがきに乗せている結果発表は一旦削除させていただきまして、改めて最終話の後書きの方に移動させていただきます。
(真剣な話の最中にこれが目に入って萎える方もいらっしゃるかと思いますので)
それでは改めまして、本当に本当に心からありがとうございました!
今後ともこのツインスピカを最終話までよろしくお願いいたします。