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【長編・完結済】ツインスピカ  作者: 遠堂 沙弥
異世界レムグランドレムグランド編 6
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第255話 「トルディスからのプレゼント」

 会議室を出て行ったアギトはそのまま真っ直ぐに部屋へ向かった、ここで用意されているアギトの部屋はリュートと一緒の二人部屋であったがそれでもかなり広々とした部屋になっている。

アギトが住んでいたマンションもそれなりに広かったが、やはりリ=ヴァースとこことでは広さの度合いが違い過ぎた。建物の造りは基本的に洋風となっているので規模は日本の比ではない。

そんな広い部屋に、アギトはここしばらくずっと一人で過ごしていた。リュートのいない部屋、リュートが戻らない部屋で。


(――――――もうずっとリュートとマトモに会話してねぇ気がする、そりゃ今はゴタゴタしてるからお互い余裕がねぇのは仕方

 ないかもしんねぇけど、それでもやっぱり・・・随分と距離が離れてる気がする。――――――らしくねぇな。

 恋する乙女じゃあるまいし何をウジウジとヘコんでんだか・・・!)


 リュートと離れているという実感を感じつつ、アギトはそれ以上深く考えないようにしていた。このまま考えて行ってしまえばお互いの居場所が離れているという事実だけではなく心の距離までも遠く離れて行ってるかもしれないと、そんな余計なことまで考えてしまうからだ。アギトは首を左右に大きく振って、余計な考えを振り払った。するとどこかから耳障りな音が聞こえて来る。

まるでずっと遠くの方から自分に向かって何かを叫んでいるような声が・・・。


「アギオや・・・。」


「おわぁっ!! びびった!」


 微かに聞こえる耳障りな音から、いきなり普通の音量で名前を呼んで来たのでアギトは反射的に飛び上がった。

振り返るとそこにはヨボヨボのヨレヨレな老人が小刻みに震えながら立っている、かろうじて杖をついてはいるが杖を持つ手もふるふると震えておりいつバランスを崩して倒れてもおかしくない危うさであった。


「なんだじいさんか、おどかすなよ!」


 アギトが驚きの余りに高鳴った心臓を右手で押さえながら何とか落ち着かせようとしている、そんなアギトの様子を無視するかのように老人――――――トルディスが話しかけて来た。


「アギオや、ちょっとお前さんに話があるんじゃがいいかの?」


「あ? また? 一体何なんだよ。」


 アギトが面倒臭そうに返事をするとトルディスは素早く周囲を見渡してから、ちょいちょいと手招きをしてすぐ近くにあった部屋に入るよう指示した。わけがわからずアギトは言われるがまま空き室に入って行く。

ドアをしっかりと閉めて部屋の明かりをつける、そこは来客用の個室でザナハの部屋程のきらびやかさはないがそれでもそれなりに華やかな室内になっていた。

わざわざ個室に招くということは話が長くなるのだろうかと思ったアギトは、室内になった時計に目をやって今がまだ夜の10時であることを確認した。ミラから契約の旅出発が明朝だと聞かされていたので、睡眠だけは十分に取っておかないといけないと頭の中で考えていた時である。


「時にアギオよ、――――――お前さんの片割れとワシはまだ会ったことないんじゃが・・・お前にとって大切な者なのかの?」


 突然の質問内容にアギトは間抜けな声になりながら聞き返す、もう一度同じ質問を繰り返すとようやく『片割れ』というのがリュートのことであると把握した。


「あぁ、リュートならオレの大親友だけど? それが一体どうしたってんだよ。」


「そやつはお前さんにとって、どうしてもなくてはならない人物かえ?」


わけのわからない質問の連続にアギトは眉根を寄せながらも正直に答えた。


「当たり前だろ、オレはリュートがいたからここまでやって来れたようなもんだからな! これから先もリュートが

 オレにとって一番の親友であることに変わりはねぇよ。まぁ・・・なくてはならない人物ってやつかな。」


 トルディスの言葉に多少照れながらも肯定する、他人に面と向かって自分の本心を明かすことが気恥ずかしいアギトはトルディスから視線を大袈裟に逸らした。・・・勿論トルディスの目は腫れぼったいまぶたがのしかかっていて、目が開いてるのか閉まっているのか・・・それすらわからない状態であるが。

アギトの言葉に納得したのかトルディスは小さく「そうかそうか」と繰り返しながら、懐に手をやりごそごそと探る仕草をした。

トルディスが一体何をしたいのかわからないアギトは仕切りに時計ばかり気にしていた、明朝というのが一体何時のことなのかわからない――――――もし朝の5時とか言われたら今すぐにでもベッドに潜り込まないと絶対に起きれないと、アギトはそのことばかり心配していたのだ。

するとトルディスは震える手で何かを持っていて、それをアギトに手渡した。

そこには2本の短剣が――――――、刃渡りはおよそ30センチ程で柄やつばの辺りの装飾具合から見て、このナイフが実戦用ではなく儀礼用であることを察する。


「お前さんにワシからプレゼントじゃ!」


「――――――は?」


唐突な展開にアギトは呆けていたが、すぐさま言葉を返した。


「何なんだよ急に、キモイな。つーか何でじいさんがオレにプレゼントなんてくれんだよ?

 別にオレ、今日誕生日とかじゃないぜ?」


 トルディスとはオルフェの課題100人斬りの時からの付き合いであるが、だからといってこんな高価そうな物をプレゼントされる程仲が良いというわけでもない。何よりアギトは他人からプレゼントをもらった経験が全くないので、どうにも素直に受け取ることが出来ずにいたのだ。


「レムグランドではな、近しい者同士で兄弟石が施されたナイフを交換すると、兄弟の契りを交わすことが出来るんじゃよ。

 ナイフの十字つばの中央部分に・・・ほれ、赤い石がめこんであるじゃろう?

 これは兄弟石といっての、非常に珍しい鉱石の一種なのじゃ。この石は同じ鉱石同士で共鳴し合う特徴がある。

 片方にアギオのマナを、そしてもう片方にアギオの片割れのマナを注ぐと兄弟の契りが結ばれるのじゃ。

 互いの石は相手の石のマナを感知し、共鳴する。まるで片割れの兄弟石がすぐ側にいることを持ち主に知らせるようにな。

 アギオにとって片割れの戦士がかけがえのない存在ならば、どうじゃ? このナイフを兄弟の契りとして持ってみんか?

 これでも護身用のナイフとしても役に立つからかさばることもないし、何かあった時には互いの兄弟石で存在を確かめ合う

 ことも出来る・・・こんな便利な物はないじゃろう。」


 そう言ってトルディスは半ば強引にアギトへ短剣を手渡した。

短剣ということもあってそれ程重くなく、2本のナイフを手にアギトはトルディスの強引さに少し戸惑っている様子である。


「それから・・・、もう一つ良いことを教えてやろう。

 これもレムグランド特有の風習みたいなものなんじゃがのう・・・・・・。」


トルディスはにんまりと微笑みながら、アギトにもう一つ――――――互いに贈り合う短剣についての話を聞かせた。





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