第230話 「伝えられる死」
龍神族の里、首都ヒルゼン。
三国同盟が成立した今もなお、首都では三国のトップ達がディアヴォロ対策に向けて話し合いをしていた。
世界を新たな方向へ導く為にはリスクがあまりにも高過ぎる。
ラ=ヴァース復活と同時に、ディアヴォロの復活が早まること。
そしてディアヴォロ完全廃棄の為には、闇の戦士の犠牲が必要であること。
この2つが大きな課題として、なかなか話に折り合いがつかずにいた。
ディアヴォロの封印が弱まるだけで『負』が大量に発生、それによって魔物が凶暴化、異常発生することは目に見えている。
加えて『負』は人間にも大きな影響を与えるので、『負』に対抗する為の策を練らなければならなかった。
ディアヴォロの『負』に関しての対抗策は、オルフェが提案した『大規模シールド展開作戦』でほぼ解決しようとしている。
各主要都市を中心に大規模な結界を張って魔物の侵入や、『負』から国民を守る為のものである。
様々な不具合を生じることもあるがそれもあくまでディアヴォロ完全廃棄までの一時的な処置、国民の安全と生活を第一としなければならない為、現時点ではこの案が適用されることとなった。
ここまではほぼ順調に話し合いがなされていたが、もうひとつの問題点によって各国間に大きな亀裂が入ることとなる。
ディアヴォロに対抗出来るのは、双つ星の戦士と神子だけ・・・。
完全廃棄する為にはディアヴォロの心臓部としてに存在する、『ディアヴォロの核』を破壊しなければならなかった。
そして今・・・核を破壊する為に必要な人材が揃っている、しかしそれを快く思わない者がずっと異論を唱えているのだ。
どうしても自国の戦士であるルイドを死なせたくないベアトリーチェは、様々な意見が交わされる中・・・決して首を縦に振らない。
もはや犠牲無くして平和な世など有り得ないと、苦肉の策として誰もが口にしかけた時だった。
突如、作戦会議が中断されて一人の召使いが会議室に通された。
昆虫のような触角を頭から生やし、長い銀髪、褐色の肌、魔物の皮を衣服として身にまとった女性が息も絶え絶えにベアトリーチェの元へと訪れたのである。
傷を負っている自分の配下を見たベアトリーチェはすぐさま立ち上がり、癒しの魔法を施した。
「どうした、一体何があったと言うのじゃ!?」
傷が深いのか、召使いの女性が答えられない様子でいると彼女を会議室へ連れて来た宮使いの兵士が事情を説明した。
形式上の礼をしてから、事実をありのまま報告する。
「つい先程アビスグランドのクジャナ宮と、里のヒルゼンを結ぶ魔法陣からこの者が姿を現しました。
怪我を負い疲労困憊している様子だったので医務室へ通すよう進言したのですが、どうしてもベアトリーチェ様との面会を
希望しておりましたので・・・思わしくない状態だとわかっていましたが、こちらへ案内いたしました。」
アシュレイ、オルフェもまた召使いの様子を見る為に席を立ち様子を窺う。
報告した兵士の後ろから、両手で抱える程度の木箱をサイロンに向かって差し出した。
「・・・何じゃ、これは?」
サイロンがその木箱を受け取ると、訝しげな表情で軽く振ってみた。
木箱を手渡した兵士が敬礼しながら説明する。
「はっ、この木箱はそちらの方が大事そうに持っていた物であります。
苦しそうでしたのでよく聞き取れなかったのですが、三国の王達に渡してくれと・・・。」
この木箱が一体何なのか召使いに尋ねようとしたが、まだ苦しそうに呻いており傷が完全に癒されるまでは聞いても埒が明かないと察したオルフェは、サイロンの方へと歩み寄る。
「彼女の状態を見る限り、アビスで何かあったとみて間違いありません。
ひとまずこの木箱の中身を確認してみてはどうでしょう?」
「・・・そう、じゃな。 では開けるぞ?」
木箱を会議室のテーブルに置くと、サイロンは細くて赤い紐を解いていく。
オルフェは木箱を開ける様子を窺いながら、開けた瞬間何らかの魔法が発動しないかどうか・・・警戒を怠らなかった。
召使いの状態を見ていたアシュレイであったが今はベアトリーチェに任せるしかないと判断し、立ち上がってオルフェの隣に立つ。
木箱に対して警戒心を持っていたキャラハン将軍は、アシュレイが必要以上に近づかないように片手で制止していた。
紐を解いた限り、何も起きない。
続いてサイロンは慎重に木箱の蓋をそっと開けた。
「―――――――――うっ!」
開けた瞬間、誰もが眉根を寄せて驚愕した。
ただ一人オルフェだけは箱の中身を、視線を逸らすことなくじっと見つめ・・・観察していたが。
数歩後ずさりしたサイロンは不快な感情を露わにして、片手で口元を覆った。
「何じゃこれはっ!?
人間の片腕など・・・、一体誰の仕業じゃ!」
サイロン達の様子にベアトリーチェは、召使いに回復魔法を施しながら不安げに見つめる。
一体自分の国で何がどうなっているのか居ても立っても居られないベアトリーチェは、召使いが早く事情を話せるように懸命に集中した。
最初こそ驚きはしたが、アシュレイはすぐさま平静を取り戻してオルフェのように腕を観察し始める。
「これは・・・、左腕だな。
腕の形や筋肉の付き具合から見て、相当な手練の戦士のものと見たが・・・。」
するとオルフェは無言のまま腕に触れ、少しだけ角度を変えて・・・何かを確認した。
彼の行動を諫めようと元老院最高責任者である襷が声を出そうとした時、オルフェの表情を見て言葉を飲み込んだ。
オルフェは唇を噛みしめるように、そっと左腕を木箱の中に戻す。
様子が変わったオルフェを見てアシュレイが声をかけた。
「どうしたオルフェ、何かわかったのか?」
アシュレイの問いにほんの少しだけ間を置いて、それから小さく溜め息をつくといつもの無感情な表情が現れていた。
メガネの位置を直しながら、オルフェは深刻そうな口調で告げる。
「これは・・・、ジャックの左腕です。
陛下も覚えてらっしゃるでしょう、先の大戦でレム側に加担したアビス人。
レムグランド軍で唯一のアビス出身の少佐であり、私の・・・友だったジャック・ガラルドですよ。」
「―――――――――なっ!?」
全員が言葉を飲んだ、それから再び木箱に戻された左腕を見て・・・事態を把握出来ずにいる。
それからサイロンが気遣うように、静かな口調でオルフェに尋ねた。
「グリムよ、それは真か? なぜわかるのじゃ・・・。」
しかしそんな気遣いは不要とでも言うように、オルフェは背筋を伸ばしたままあくまで軍人として振る舞った。
「左腕の二の腕部分をご覧ください、刺青が彫られているのがわかりますか?
ジャック本人から聞いた話ですがジャックの部族・・・ガラルド族は、特殊な技を継承した時このような刺青を彫ることを
習わしとしているようなのです。
私が以前ジャックに見せられた刺青の模様と、この腕のものは完全に一致すると言ってもいいでしょう。
技を継承したガラルド族ならば皆この刺青を彫られる、ということですが・・・。
ガラルド族は20年以上も前に、ジャックを残して絶滅しています。
腕の状態から見ても、切り落としてから数日と経っていません。
薬品などで保存することも出来ますが、これはあまりに状態が綺麗過ぎる・・・。
ごく最近・・・切り落とされたものだと断定出来ます。
よって私はこの左腕を、ガラルド族最後の生き残りであるジャックのものだと判断しました。」
あくまで科学者としての意見のように、オルフェは淡々と説明した。
それでも全員が押し黙ったまま・・・肝心なことが分からないので、憶測を立てるか召使いから話を聞くことしか出来ずにいる。
「・・・具合はどうじゃ、少しは楽になったかの!?」
ベアトリーチェの言葉に、全員が一斉に振り向いた。
召使いはゆっくりと起き上がり、それから周囲を見渡して自分の状況を把握する。
すぐさま立ち上がろうとする彼女を押さえつけるように、ベアトリーチェはゆっくりと首を振った。
「無理をするでない、このまま横になっておれ。」
「しかし・・・、私はベアトリーチェ様にお伝えしなければならないことが・・・っ!」
自分がどうなろうと主に尽くす召使いの姿を見て、アシュレイは召使いの前に膝をついて声をかける。
「それならば横になったままでも話せるだろう、一体何があったのか教えてくれ。」
傷を癒したばかりの召使いに対して放ったアシュレイの言葉にベアトリーチェは反論しようとしたが、召使いの様子を見て言葉を控えた。
自分に忠義を尽くす配下は全て、自分の身がどうなろうと与えられた使命を全うする心を持っている。
今ここで話もロクにさせず、横にさせられる部屋へ案内したところで彼女が納得するはずもない、むしろ自分のするべきことを全うする為に部屋を抜け出し事の顛末を説明しようと、かえって無理をさせるかもしれなかった。
それならばいっそ、この場で横になったままでも召使いが使命を果たせるように配慮させた方が良いと・・・アシュレイはそう判断してこの場で事情を説明するように言葉をかけたのだ。
ベアトリーチェもまた、それを察して言葉を飲み込んだのである。
召使いはベアトリーチェに支えられたまま、全員が注目する中・・・説明し出した。
「ベアトリーチェ様・・・、ルイドですっ!
ルイドの軍勢が突然クジャナ宮を制圧し、地下に住む国民やクジャナ宮に勤める配下達を追い出しているのです。
口ではディアヴォロ復活を間近に控え危険地帯となるクジャナ宮から、国民を安全な場所へ誘導するのが目的だと言って
おりましたが・・・、抵抗する者には容赦なく武器を向けて排除していき・・・戦闘員である配下は私を含め、怪我を負わされ
放り出されるか殺されてしまいました。
私だけがルイドの元へ案内され、ルイドに戦いを挑んだ男の屍骸を前に、左腕を切り落としてこう言ったのです。
これは警告だ、ディアヴォロの核の影響はここまで来ている。
核は肉体だけではなく精神までも蝕み、もはや負の感情を制御することが出来ずにいる。
意識を乗っ取られる期間が長くなり今も自分は望んでもいないのに、クジャナ宮制圧という行動を取っている始末だ。
そして同族をも手にかけ、先の大戦の頃より敵ではあったが尊敬してやまなかったジャックをもこの手で殺してしまった。
どうか、これ以上取り返しのつかないことをしてしまう前に・・・頼む。
完全に乗っ取られてしまう前に、どうか自分を殺してほしい。
光の戦士の手で殺されることによって、核を1つ破壊したことで・・・自分の罪を清算したいのだ。
自分はこのまま『ルイド』として・・・まだ意識が残っている内に、自分として死んで行きたい。
その望みを叶える為に、ベアトリーチェ・・・。
『自分を犠牲にする』のではなく、『自分のまま逝かせる』為に・・・決断してくれ。
ラ=ヴァースを復活させて、ディアヴォロを倒すのだ。
全ての者が平和で安全に暮らせる世界を、お前達の手で作ってほしい。
ルイドはそう言って・・・、私にこの左腕を託したのです。
ベアトリーチェ様、彼はもう我々の知っているルイドではありません!
あれはもうディアヴォロに心を支配されている、眷族へと成り果てようとしているのです!
どうか・・・我々国民の望みを成就させる為、ご決断ください!」
興奮気味にそう語ると、召使いは再び苦しそうに呻きながら表情を歪めた。
傷は癒されたので後は安静にするだけだと、召使いをここまで連れて来た兵士に彼女を託し、横になれる部屋へと連れて出て行った。
顔色が蒼白になっているベアトリーチェが立ち上がり、召使いの言葉を聞いた全員が言葉を失っている。
ようやく口を開いたのは、サイロンだった。
「ルイドが言っておった、核の進行が早まることで意識を乗っ取られることがたまにあると。
気を張っておけばそのようなことには滅多になりはせんが、核を取り入れてから数年。
完全融合に近い状態になればなる程、ディアヴォロの『負』に当てられやすくなり・・・やがて意識が完全に
乗っ取られてしまえば、その者は例え闇の戦士であろうとディアヴォロの眷族へと成り果ててしまうのじゃ。
そこに自分の意志はなく主であるディアヴォロが命じるままに、非道の限りを尽くす悪魔と化してしまう。
余はルイドの望みを叶える為に、こうして三国同盟を提唱し・・・ラ=ヴァース復活を実現させようとしたんじゃよ。
今さっき召使いの者が言っていた内容そのままじゃ。
ルイドは・・・、『自分』として死んで行きたいとそう願っていた。
友の死を望みたくはないが、ルイドはそれ以上に・・・自分が眷族と成り果ててしまった時、自分の大切な者をこの手で
傷付けてしまうのではないかと・・・『死』よりもむしろ、そっちの方が恐ろしかったと言っておった。
そして余はそれを聞き入れた、ベアトリーチェよ・・・。
お主がツライ気持ちもわかるが、ルイドを大切に思うならば・・・奴の願いを叶えてやってはくれんかの?
余からも、頼む・・・。」
そう言って、サイロンはベアトリーチェに向かって深々と頭を下げた。
ベアトリーチェはうつむいたまま、わずかに瞳を潤ませながら小刻みに震えている。
かつてルイドに恋焦がれていたベアトリーチェの心は、召使いの言葉に相当強いショックを受けていたようだ。
ずっと自分を支えて来た者が、仇敵となってしまう苦しみ。
唇を強く噛み、血が流れる。
その痛みすら・・・心の痛みに比べれば、どうでもよく感じられた。
必死で涙を堪えるベアトリーチェに、オルフェはまるで話題を逸らせるように話を切り出す。
「それにしても・・・、戦争は回避され当初よりも負の感情は落ち着いてきているはず。
にも関わらず核の進行が順調に進んでいる所を見ると、もしかしたらディアヴォロが封印されている場所と何かしら
深い関係があってもおかしくはないですね。」
「それは一体どういうことですかな、グリム大佐?」
話題転換に乗ったのか、本当に疑問に思っただけなのか・・・キャラハンが尋ねる。
「ディアヴォロが封印されている間、活動を活発にさせる方法は2つ。
世界にマナが満ちるか、人間の負の感情によって闇の支配が強まるか。
マナ天秤によってレム側にマナが満ちている状態ですが、ベアトリーチェ女王の話によれば去年の今頃・・・封印の
上書きが既に済んでいる為、その力が多少は弱まっているはずです。
その後に戦争が再開されてしまいましたが、これも全世界に負の感情がばら撒かれる程ではありませんでした。
どちらの状況下においてもルイドは常に自分を保っていたように思えます、・・・憶測ですけどね。
それでもなお核による汚染が進行しているとなれば、ルイドがいる場所に問題があるのかと思いまして。
この会議の中でわかったこと、・・・ディアヴォロが封印されている場所です。
召使いの話によればルイドは今クジャナ宮に滞在していることになります、つまりディアヴォロの真上です。
主に近付けば近付く程、もしかしたら核の進行が予測していた以上に早まる可能性だってあるかもしれません。
ならば今も汚染が進行している状態と見ても、おかしくはないでしょう。
そう考えれば、一刻の猶予もないということになります。」
オートで設定されている笑顔が発動した。
まるで機械のように淡々と、オルフェは現状を全員に突き付ける。
つまり『悩んでいる暇はない』と、オルフェは長い説明の中にたった一言で済む言葉を発することなく、意味合いとして込めたのだ。
当然、暗黙にそう責められていること位・・・ベアトリーチェには理解出来た。
自分が全員の足を引っ張っていることを、会議の進行をせき止めているのだと。
しかし、心がついて行かなかった。
王ともなれば非情に徹して、最善となる方法を即座に決断しなければならなかった。
両手の拳を握り締めるが、たった一言が喉の奥に閊えたまま出て来ない。
『ルイドを殺す』という、たったそれだけの言葉が出て来なかった。
なかなか決断に至らないベアトリーチェの様子を見て、オルフェは溜め息をつくとアシュレイに向き直って進言する。
「陛下、申し訳ありませんが私はこれよりレムグランドへ帰還する許可をいただきたいのですが。
ジャックの訃報を、彼の家族に知らせなければなりません。
それから・・・ジャックの遺体がこの左腕しかない以上、これも家族の元へと持って行きたいと思います。
あと・・・光の精霊との契約にも、今となっては時間が迫られてしまいます。
ラ=ヴァース復活には精霊との契約が不可欠ですから。
闇の精霊に関してはベアトリーチェ女王に一任しますが、それでよろしいでしょうか?」
右手を胸の前に当てて、会釈する。
アシュレイはちらりと横目でベアトリーチェの方を見て、それからすぐにオルフェの方へと向き直った。
「わかった、お前はすぐレムグランドへ戻りこのことを皆に知らせてやれ。
ジャックの葬儀にはオレも参列する。」
「はい、ありがとうございます、陛下。」
もう一度会釈してから左腕の入った木箱を抱えて、その場を後にしようとした時・・・アシュレイが小さく言葉をかけた。
左手を腰に当てながら視線を落とし、アシュレイの顔に苦渋が滲み出る。
「・・・ジャックの家族にすまなかったと、伝えておいてくれ。
国民を守れなかった無能な王だと、恨んでくれて構わないと・・・。」
アシュレイに背を向けたまま立ち止まり、オルフェは含み笑いを浮かべながら言葉を返した。
「そういうことはご自分の口で仰ってください。
陛下の代わりに私が恨み事を言われるのはゴメンですから、それに・・・。
他人を恨めばその感情が更にディアヴォロの力を増加させてしまいます、言葉には気を付けてくださいよ!?」
オルフェの言葉に、アシュレイは自嘲気味に微笑みながら鼻で笑う。
「ふん・・・、臣下に諭されるとは・・・オレも王としてまだまだだな。」
「これからですよ、陛下。
皆がアシュレイ陛下に期待しているのです、それを忘れず精進してください。・・・では。」
それだけ言い残し、オルフェは会議室を出て行った。
オルフェの臣下らしからぬ言動を快く思っていないキャラハンであったが、そんな彼の存在が、言葉が今のアシュレイを突き動かしているのだと思うと、憎まれ口を叩く気にもなれない。
それ以前にこの重苦しい展開をどうにかしようと、必死で頭を悩ませることで手一杯であった。
レムグランドへ帰る為に自分の手荷物を回収しに部屋へ向かうオルフェ。
宮中を歩きながらオルフェは、メガネを光らせ考えに耽っていた。
(ディアヴォロの核の進行により、ルイドは意識を乗っ取られて望まない行動を取っている・・・。
しかし召使いの話によればルイドの軍勢がクジャナ宮を占拠したと言っていた。
つまりルイドの側近でもある軍団長も、それに従っていたことになる。
普通に考えて、そんなことが有り得るのか?
私ならば自分の望まない行動を取らないように、部下にあらかじめ命令して自分の行動を規制させますがね・・・。
クセの強い軍団長のこと、自ら認めたルイドの命令ならまだしも・・・。
ルイドの意志ではない命令に、あの軍団長達が盲目的に従うとは到底思えない。
何やらきな臭いですね・・・。
一体何が真実なのか、そしてルイドが何を考えているのか・・・それがわからない以上何とも言えませんが。
しかし、これは私達にとって好機でもある。
闇の戦士の犠牲に二の足を踏んでいたベアトリーチェ女王も、ルイドの反旗・・・いえ、核の暴走により
決断せざるを得なくなった。
そしてルイドが完全悪となった今なら、トランス状態に頼らずともアギトの手で引導を渡してやることも出来ます。
ふっ・・・、疑心暗鬼のつもりはありませんが。
これすら何者かの手の平の上で操られているような気がしてなりませんね。
様々な分岐点を通りながら、たった一つの終着点へと導かれているような・・・。
どの道、ハッキリとしたことがわかるまで油断しない方がいいですね。)
そんなことを頭の中で巡らせながら、木箱を抱える手に力が入る。
わずかな重みを感じながらもオルフェは無表情のまま、威風堂々とした態度で歩いて行く。
その姿はまるで・・・、友の死から目を背けているようでもあった。