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第19話 「トランスポーター」

 予想だにしなかった帰り道に、あまりの恐怖感で絶叫した為か・・・ノドを

痛めてティーカップのお茶を全部飲み干すアギトとリュート。

突然絶叫した二人に、回りの者達は怪訝な表情になっていた。

とりあえずノドを潤して、アギトがガクガクと小刻みに震えて冷や汗を流しながら

聞いてみた。


「な・・・なぁ。

 そのレイラインの場所って、他の場所に変えることって出来ねぇのか!?

 確か専門用具とかがあれば探せるって言ってたよな!?」


必死で他のレイラインを探そうとするアギト・・・それもそのはず。


 自分達の元いた世界『リ=ヴァース』へ帰るには、マナというエネルギーの

集まる力場・・・『レイライン』と呼ばれる特定の場所でしか異世界間を移動

することが出来ないらしい。

そしてアギト達が、偶然にもそのレイラインを使ってこの世界『レムグランド』に

降り立った。

その時に異世界間移動を発動させたレイラインが、廃工場の屋上から飛び降りた

空中であること・・・。

レムグランドから再びリ=ヴァースへ帰った際の出現場所が、その空中の続きとなる。

そしてそのまま地面へと真っ逆さまに落ちていくというのだから、他の場所を希望

するのは当然のことだった。


そんな二人の期待も空しく、オルフェ大佐は首を左右に振って否定した。


「現段階では不可能でしょう。

 何しろ探し当てるには、まずリ=ヴァースへ行かないことには話になりませんから。

 今言えることは、一番最初に発動した場所以外・・・他に帰る方法はないということ

 だけです。」

 がっっっくりと肩を落とすアギトとリュート。

あの時は廃工場から落ちて行って、もう助からない・・・死ぬ!! と思った矢先、

異世界へ飛ばされるというアクシデントから、助かった!! と命拾いをして安心して

いたというのに・・・まさかその続きを体験しなければいけなくなるなんて・・・、

誰が予想出来ただろう?

二人が沈黙と絶望の中にいると、ミラが少々急かすように時間を気にしながら二人に

重要な話をし始めた。


「落ち込んでいるところすみませんが、あなた達はもう・・・。

 そうですね・・・今すぐにでも。

 元いた場所へ帰らなければならないということを、話さなくては。」


少し深刻そうな表情で話すものだから、アギト達の不安は更に高まった。


「え・・・なに!?

 今すぐ帰らないといけない・・・って、なんで!?

 この世界に長くいたら何かヤバイのか!? 命の危険に関わることとかっ!?」


 蒼白になって立ち上がり、ミラに話の続きを急かすアギト。

勿論リュートだって心穏やかではなかった。

そもそもこういう『異世界モノ』とか『ファンタジーもの』とかに疎いリュートは、

アギトの反応次第で物事を判断していた。

アギトがヤバイと言ったら、きっと・・・何かはわからないが・・・ヤバイんだろう。


「いえ、命に関わることではありません。

 あなた達、見たところまだ未成年なのでご両親や、ご家族がいるのでは・・・と

 思いまして。」


 両手を振って、誤解しないでという風に否定すると、ミラが急に家庭について

話しだした。

また急に話題が飛んだものだから、二人とも頭の切り替えに混乱しそうになる。


「え・・・? あ・・・?

 ま、まぁ・・・確かに未成年だから家族も、親も・・・いますけど?」


 それが何か? ・・・という風にリュートが聞く。

家族がいたら何か不都合な点でもあるのだろうか?

どのみち彼らに協力すると約束した以上、戦争に巻き込まれているのだから、

命の危険は勿論のこと・・・、親にその旨を伝える・・・とか、保護者の許可・・・

というものが必要になってくるのだろうか?とリュートは想像した。

あまりこういう展開に詳しくないリュートだが、異世界の人から親の心配をされるとは

思ってもみなかった。

しかし、ミラが言いたいのはそういうことではなかった。


「ではなおさら急いだ方がいいかもしれませんね。

 実はあなた達の検査結果で発覚したことなのですが、どうやら私達の世界である

 レムグランドと、あなた達の世界であるリ=ヴァースとでは・・・時間の流れが

 同一であることがわかったのです。」


 しばしの沈黙があった。

頭の切り替えが出来ていないというわけではない。

オウム返しのように、アギトがもう一度言葉を繰り返す。


「え・・・、同一・・・って?

 時間の流れが一緒って・・・、どゆこと!?」


 頭を抱えながら、考え込むアギト。

なんだかさっきから、だんだんとアギトが夢見ていた『異世界での冒険活劇』という

ゲームやマンガでよくあるパターンからかけ離れていっているような・・・、そんな

イヤな流れにどんどん進んでいっているように感じていた。

そんな二人にわかるように、ゆっくりと・・・丁寧に説明し出すミラ。


「つまり、お互いの世界の時間が同じように・・・同じスピードで・・・リアルタイムに

 進行しているということになっているんです。」


 ・・・把握した。

リアルタイムオンラインゲーム? ・・・の、現実世界版。

そして再び沈黙が訪れて・・・、そして確認するように、確かめるように、リュートが

恐ろしいことを聞く。


「あの・・・、それで・・・、僕達がこっちの世界に来て・・・どれ位の時間が

 経っているんですか・・・?」


「2日経過しています。」


ぐわっしゃぁーーーーんっっ!!


 驚きのあまり、アギトはテーブルについていた肘をすべらせてティーカップに当たり、

カップと一緒にテーブルから床へと転げ落ちた。

リュートも、がんっと勢いよくテーブルにオデコをぶつけるように、卒倒した。

そして即座に床から起き上がると、アギトが絶叫する。


「二日ーーーっっ!!?

 それじゃ今頃、神隠し事件勃発中じゃねぇかぁーーーーーっっ!!!」


頭を抱えて、オーバーリアクションを取りながら叫んだ。


「そうです・・・。

 ですからご両親が心配しているだろうと・・・早く帰るのをすすめているんですよ。」


アギト達の騒ぎに高見の見物を決め込みながら、余裕の表情でティーカップに

口を付けて平然と言い放つ大佐。


「えぇっと・・・、確か廃工場にいたのは金曜の晩だったから・・・。

 それから二日経ってるってことは・・・。

 今・・・日曜の晩位になるのかな・・・?」


 すぐに計算できるような簡単な数字にも、まるで信じられないといわんばかりに、

指折り数えて計算するリュート。


「明日学校じゃねぇかぁーーーっっ!!

 しんどっ!! 帰ってすぐ寝て明日学校行くなんてウザッ!! メンドくさっ!!

 過労ーーーっっ!!!」


「いやアギト・・・、それ以前に今頃絶対に行方不明とか誘拐とか言われて大騒ぎに

 なってるって・・・。

 学校どころの問題じゃないでしょ・・・。」


パニックになりながらも、その辺は相変わらず冷静につっこむ。


「では、今すぐ帰りますか?」


「当たり前じゃボケーーーーーッ!!!!」


 大佐に向かって、パニックになってるとはいえ暴言を吐くアギトだったが、

すぐにまた帰り道のことを思い出してブルーになる。


「なんだよ・・・、異世界っつーから冒険ファンタジーの始まりかと

 思ってたのに・・・。

 なんでこんなにも現実世界のことばっかり考えて行動しなきゃいけねぇんだよ・・・、

 夢もクソもねぇよ。」


・・・全くだ、と横で静かに頷くリュートだった。


 アギト達はとにもかくにも、急いで帰らないと本当にテレビで報道されかねない・・・

ということで、レイラインの場所がダイビング途中だとしても・・・、それを

受け入れざるを得なかった。

そして全員で、この洋館の地下にあるという異世界間を移動する為の魔法陣が描かれて

いる場所へと向かった。

そこはアギト達が閉じ込められた地下牢とは、全く反対の場所に地下へ下りる階段が

あって、そこを下りて行った。

階段を下りていくと、少しひんやりと肌寒くなってきた。

明かりがついているとはいえ、地下はやはり何度来ても不気味だった。

壁は石壁で、地下牢にいた時と同じように冷たく感じられたし、全員が歩く足音が

反響して背筋が凍る。

今にもゴーストでも出てきそうな、うすら寒い場所だった。

結構長い石の通路を歩いて行って、一番奥にひとつだけポツンと扉が見えた。

木製の扉で、頑丈に錠前が掛けられていた。

腰に常備していた鍵束を取り出して、地下牢の扉の鍵を探し当てたようにすぐ

目的の鍵を探し当てるミラ。

もしかして全ての鍵を覚えているんじゃ・・・?と疑いたくなる位の素早さだった。

がちゃがちゃと鍵穴に差し込んで、長く大きな鍵を回すと錠前が外れた。

「さぁ、入りましょう!」と、先頭切って大佐が中へと入って行った。

続いてアギト達も中へ入って行くと・・・、目の前に広がった光景は・・・長い間

誰一人として使用していないようなさびれた感じと、殺風景な雰囲気・・・扉を開けた

途端、冷気のような風がサァーッとアギト達の髪を揺らす。

異様な空気はカビくさく、少しホコリも混じっていたせいか・・・ザナハ姫が

せき込んだ。

構わず大佐はスタスタと部屋の中心に真っ直ぐと歩いて行った。

アギト達はきょろきょろと何もない石の壁でできた薄暗い部屋を眺めながら、

ゆっくりついて行く。

てっきり変な銅像があったり、鎧のコレクションがあったり、奇妙な魔法の道具や、

ホルマリン漬けの『なにか』がたくさん置いてある棚とかが並んでいるとばかり

思っていた・・・。

しかし実際には部屋中の石壁に一定の間隔で設置してあるランプと、床に描かれた

奇妙な模様・・・魔法陣があるだけだった。

ランプは、不思議なことにアギト達が入った途端に、一人でに明かりが灯った。

オートセンサーか何かだろうか?

そのランプには、この世界に来たばかりの時に兵士が持っていたランプと同じで、

ランプの中にはロウソクの火を灯す為の芯がなくて、半端な位置に小さな炎が

踊るようにメラメラと燃えていた。

それが次々と灯り出して、一瞬にして薄暗かった部屋の中は一面が見渡せる位に

明るくなった。

それでもやはり、アギト達の世界の蛍光灯のような明るさまでには、程遠かったが・・・。


 部屋の中央まで来た全員が、大佐が立ち止まったと同時に同じように近くまで来て

足を止めた。

腕を後ろに組みながら大佐が説明する。


「先程言ったように、この洋館はレイラインの範囲内に建造されていますから、

 この部屋・・・つまりこの魔法陣のことになりますね。

 これを使って互いの世界を行き来します、いいですね?」


 そう言われても、どうせそれしかないんだろ? と言いたくなったが、話がこれ以上

長引いてしまうわけにはいかないと、アギトはぐっとこらえて静かに首を上下に揺らした。

従順なアギトの本音を察したのか、大佐は冷たい笑みを浮かべながらメガネのブリッジに

指を当てて、くいっと位置を直すと話を続けた。


「一応今から元の世界に帰ってもらいますが・・・、またすぐにこの世界に戻って

 きてもらいます。

 あなた方は私達に協力すると・・・そう約束してくれました。

 私達もそれを信じてあなた達を元の世界に帰すのです、約束は守っていただきますよ?」


 まどろっこしい話し方にイライラしたアギトが口を挟もうとしたが、意外にも

リュートに制止された。

アギトが話すとややこしくなる・・・という意味なのかどうかはともかく、リュートが

口を挟んだ。


「あの・・・確かに協力するって約束は守りますけど・・・、僕達には僕達の世界での

 生活もあるんです。

 長い間家を離れるわけにはいかないし、学校もあります。

 少なくとも・・・、こっちの世界に来るのは今回みたいに金曜の夕方から日曜の

 夕方まで・・・、あっ・・・ここじゃ金曜とか言ってもわかんないか・・・。

 確か時間軸が同じって言ってたから・・・えっと。」


口ごもるリュートに、ミラがもしかして・・・という風に補足する。


「あなた達の世界にも曜日があるんですか?

 多分君の言ってることは理解できると思います。

 私達の世界では、7日を1週分としてそれぞれに曜日があります。

 一日目から、レム、ルナ、イフリート、ウンディーネ、シルフ、ヴォルト、ノーム。

 それぞれの語尾にデイを付けて表しています。

 君達が初めて来た日がヴォルトデイですから、今日はレムデイになりますね。」


 それを聞いたアギトが、どれもゲームとかで聞いたことがある名前なのか・・・

それぞれの曜日名を即座に把握した。


「それじゃこっちの日・月・火・水・木・金・土と殆ど同じじゃねぇか!!

 わかりやすくてイイや!!」


 相槌を打つアギトに、全くついていけないリュート・・・口を挟むんじゃ

なかったと、今頃後悔する。


「それでは君達の都合も、まだ始めたばかりということを配慮して・・・今は君達に

 合わせるとしましょう。」


「でもそれじゃ今度来るのは5日も後になるじゃない!!

 それじゃ時間をかけ過ぎよ・・・、こっちにだって猶予はないんだから!!」


 ザナハが抗議するが、大佐は仕方ないですよ・・・と肩を竦めた仕草をして

ザナハの理解を求めた。


「こっちだってなぁ、出来ることならこの世界で冒険したいっつーの!!

 でもそういうわけにいかないのが社会ってモンなんだから、あんまワガママ

 言ってんじゃねぇよ!!」

 アギトの口から社会の常識という言葉が出てくるとは思ってもいなかったのか、

リュート以外にも全員が唖然とした。

なんだよ・・・と文句を言おうとしたが、大佐が説明の続きをし出したので

不完全燃焼となった。


「こちらにも都合というものがありますからね。

 今後はお互いスケジュールの打ち合わせをして・・・出来るだけこのレムグランドに

 来てもらうようにお願いすることになりますよ?

 君達も、そしてザナハ姫も・・・とりあえず今はそれで構わないですね?」


 同意を求める・・・というより、有無を言わせないような口調で断言する大佐に

異論を唱える者は一人もいなかった。

ふむ・・・と、全員の同意を得られたことに満足した大佐は、両手をパンッと一発

叩いて、再び説明を始めた。


「それでは、次に来るのは今回と同じヴォルトデイということでよろしいですね?

 そうと決まれば、今度はこのトランスポーターの使い方を説明しますよ。」


アギト達は『トランスポーター』と聞いて、多分この魔法陣のことだろうと・・・

目線を足元に向けた。

丸い円の中に三角形が複雑に重なり合って、その周りにもワケのわからない模様だか、

文字だかがたくさん描かれていた。

とてもじゃないが・・・、模写できるような代物ではないことだけはわかった。


「使用者は、この魔法陣のちょうど中心に立ってください。

 多少はみだしても大丈夫ですよ、安心してください。

 ただし、あんまり端に寄り過ぎたりすると大変なことになるから・・・出来るだけ

 真ん中に立つようにしてくださいね? 軽く死にますから。」


 さらりととんでもないことを口走る大佐に、アギト達は冗談なのか本気なのか

わからず鳥肌が立った。


「死ぬという表現はあんまりじゃありませんか、大佐。」


ミラが注意して、なんだ・・・冗談か、とほっと安心する二人・・・だが。


「ちゃんと、次元の狭間に迷い込んで二度と戻ってくることが出来なくなると・・・

 真実だけを説明してください!」


 ・・・聞きたくなかった。

聞きたくなかったよ? ミラ中尉・・・と、二人の瞳は涙で潤んだ。


「・・・ということなので、とにかく注意してください?

 そして、中心に立ったら二人とも互いの手をつないでください。」


「えぇっっ!!?」


二人の声が見事にハモッた。


「キモイこと言うなよおっさん!!

 オレ達親友でもそんな恥ずかしいこと出来るか!!」


 苦笑いを浮かべながら、同感・・・と頷くリュート。

だが大佐はにっこりと笑顔を作ってその文句に対して、理由を述べた。


「イヤでも何でも、つないでもらいます。

 ちょうど君達は相反属性同士で都合が良い。

 このトランスポートの欠点は、単独では発動出来ないことなんですよ。

 『光属性』と『闇属性』を持つ者同士が、マナを重ねることによってレイラインに

 特殊な信号を送ります。

 別に暗号とかではありません、誰でも簡単に出来てしまう安易なものです。

 診断結果によると、アギトの方は右手に光属性が集中していて、リュートの方は

 左手に闇属性が集中していました。

 ですからアギトは右手を、リュートは左手を互いの手に重ね合わせて下さい。

 これならマナを練る・・・という難しい技法を一から習わなくても、マナを発動

 出来るようになるというわけなのです。

 多分、こっちに来る時もその右手と左手を重ねたことによって、マナを練る方法を

 知らなくても発動させることが出来て、転移を可能にさせたんでしょうね。

 まぁ、そこの力場のエネルギー量が高かったことも要因のひとつなのでしょうが・・・。

 だから無意識だった二人は、こちらの世界にまるで迷い込んだような感覚に

 なったんです。」


 ・・・その説明で納得がいった。

確かに廃工場から落ちて行った時、お互い利き腕の方を無意識の内に重ねた瞬間・・・

まばゆい光に包まれた。

つまりあれがマナの発動だったのだ。

そしてリュートが闇のマナを暴走させた時も、アギトが無理矢理手をつないだことで

発動した・・・。

それならば、わざわざマナを練る・・・という難しそうな技法を習わなくても、すぐに

出来そうだ。


「オッケー、わかった。

 そういうことなら仕方ねぇわな・・・。」


 両手をぷらぷらと振って、了解の合図を送る。

こればかりは仕方無い・・・我慢しようと、お互い目配せをした。


「これには練習とかはありません。すぐにでも慣れてください。

 さっき中尉からの説明があったように、・・・プレッシャーを与えて緊張を高める

 つもりはありませんが、失敗すれば別の次元に飛ばされて、二度と戻ることが

 出来なくなるので一応覚えておいてください。」


恐ろしいことを聞かされて、ますます緊張するリュートが震える声で大佐に聞く。


「あの・・・それ聞いたらますます成功する気になれないんですけど・・・。

 失敗することって・・・、よくあることなんですか?」


「そもそも転移自体、多用することは法律で禁じられています。

 ですから確証したことは言えませんが、戦士の資格を持つマナの持ち主である

 君達なら・・・失敗する可能性は5%にも満たないでしょう。

 よっぽど他から妨害や干渉をされない限りは、殆ど安全に転移できます・・・

 あくまで理論上ですけど。」


 それを聞いて、安心したのかどうか複雑だった。

でも5%という数字は確かに殆ど失敗しない・・・と言ってもいい位の数値だった。


「手順をもう一度説明しますね。

 まず、魔法陣の中心に立つこと。

 そしてお互いのマナが集中している方の利き手を重ね合わせることで、マナを

 発動させる。

 あとは自分の世界のレイラインを強く頭の中でイメージしてください。

 今はレイラインの場所を特定できないと言いましたが、必ず指定した場所に

 出るとは限らない。

 頭の中でイメージして、それを信号としてトランスポーターに認識させる

 必要があります。

 そのイメージは自動的に、二人とも同じ場所を思い描くはずです。

 それが信号となって、その場にポイントを置いて・・・いよいよトランスポーターが

 本格的に起動します。

 魔法陣が輝いて浮遊感を感じたら、あとは何もしなくても自動的にトランスポーターが

 目的の場所へ移動させてくれます。

 ・・・理解できましたか?」


 二人とも頭の中で大佐の説明を反芻はんすうさせて、そしてゆっくりと

返事をした。


「こちらの世界へ来る時は、最初に来た時と同じ行動を取れば来れるように

 なりますよ。

 一度往復しているので、この魔法陣が記憶しています。

 ですからあちらの世界からこっちへ来る時は、マナを発動させるだけで

 結構です。」

 それを聞いて改めて、今から向かう場所が決死のダイビング途中から始まる・・・

ということを思い出して吐き気がした。

そんなことは露とも知らず、大佐は無責任だが実に楽しそうな笑顔を浮かべて開始の

合図を送る。


「では、トランスポーター起動といきましょうか!!」










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