第206話 「導き出した答え」
なぜハルヒとイフォンがこの拷問室にいることを二人・・・サイロンとメイロンが
知っていたのか・・・、まずはそれが疑問だった。
しかしそれもすぐに理解し、納得する。
サイロンが傷だらけのハルヒとイフォンの方に駆け寄った際、拷問室の扉の前で見張り
をしていたメイロンの他に・・・ミズキの里の者と、ハルヒ達の拷問に参加しなかった
役人3人が懸命に手助けしていたのだ。
恐らく自分の部屋に戻ったサイロンが、ハルヒとイフォンがいなくなっていることに
気付き・・・ハルヒと共に護衛の任に就いていたミズキの里の者から事情を
聞いたのだと把握する。
その際に恐らく、弱気な役人三人組も一緒になってここへ来たのであろう。
しかし・・・メイロンがなぜここにいるかまでは、よく把握しきれないが・・・。
そんなことを頭の中で巡らせていると・・・ハルヒと目が合った役人の一人が、
申し訳なさそうな顔で弱々しく話しかけて来る。
「あの・・・、申し訳ありませんでした。
私達3人はこの役職に就任したばかりで、強く抵抗することが出来ず・・・。
本当に情けないです・・・、悪を取り締まるのが私達の仕事だと言うのに。」
そう言うと3人が一斉にハルヒ達に向かって深く謝罪してきた。
元々ハルヒの表情は眉間にシワ、への字口な無愛想顔だったので・・・恐らく
激怒していると思われたのだろう。
びくびくしながら謝っているのが丸わかりだった。
正直こんな所で呑気に会話している場合でもなかったのだが、彼等がひどく自分達を
責めている様子だったので・・・ハルヒは彼等を許した。
「いや・・・、過ぎたことだからもう気にするな。」
サイロンやイフォン以外には極端に口数の少ないハルヒが一言だけそう告げると、
3人は怯えながらも少しほっとしている様子だった。
しかし・・・、彼等の怯えた態度に業を煮やしたメイロンが喝を入れる。
「お前達! 男のクセに情けないアル!
男ならもっと腹から声を出して、堂々とするといいネ!」
族長の娘であるメイロンからのお叱りを受け、余計に委縮する3人。
どうやら根っからの小心だと悟ったメイロンが腰に両手を当てながら、思わぬことを
提案し出した。
「仕方ないアル、お前達3人をわらわの付き人として鍛え直してやるネ!」
「え・・・、えぇっ!?」
驚愕した声が見事にユニゾンする3人。
びしぃっと子供サイズの扇子で3人に突き付けると、その場にいた全員が硬直した。
そんな時・・・、ミズキの者が場の空気を変える為・・・というわけでもないが
周囲への警戒に神経を研ぎ澄ませながら、サイロン達を急かした。
「若様、とにかくお急ぎください。
元老院の方々は本気になって若様を捜索しています、すぐにでも新たな追手が
ここまで調べに来るでしょうから・・・。」
警戒を怠らないように鋭い眼光で周囲を見渡しながら、ミズキの者が注意を促す。
サイロンは自室から持ってきていた羽織をハルヒに着せると、余裕のある笑みを
浮かべながら二人に話しかけた。
「遅くなってすまんかったのう、傷の手当ては後でちゃんとするから我慢せい。
それより・・・ハルヒよ、お前まだ閉所恐怖症が治っておらんようだのう。
狭い場所にいるといつもより口数が増えて、恐怖感を紛らわせようとするクセは
相変わらずじゃな・・・。」
「・・・・・・う。」
グウの音も出ないハルヒに、イフォンがからかいながら嘲笑する。
「ホントだよ、せっかくゆっくり寝てたのに・・・ハルヒがペラペラと口うるさく
喋るせいで眠気が覚めてしまって、迷惑極まりなかったね。」
「お前こそ人のこと言えんだろうが。
暗所恐怖症をきっかけに、幼児退行現象が再発するクセに・・・。」
ハルヒがバラすと、サイロンは呆れた顔になりながら肩を竦めている。
反論するかと思いきや・・・、どうやら本当にゆっくり話をしている場合では
なくなり・・・、全員きりっとした表情に切り替わる。
役人3人に嫌がるメイロンを部屋へ連れ戻すように指示すると、サイロン達は
ミズキの者の案内に従って宮中を抜け出すことに何とか成功した。
裏で手を回したのか、現在最も警備が手薄になっている宮中の東門の前に着く。
そこにはヒルゼンに戻った際にサイロンが手配しておいた飛馬が待機していた。
「ではハルヒとイフォンのことは伊綱に一任しておるから、二人を
ミズキの里まで連れて行ってやってくれ。
余はこのまま道を閉ざす作業に取り掛かるでな・・・。
あの演説は十中八九ディアヴォロの眷族も、どこかで聞いておるに違いないからのう。
余と一緒にいては眷族に狙われてしまう・・・。
しばしの間会えぬが、な~に・・・1年なんてすぐじゃ。」
サイロンが別れの挨拶をし始めたので、ハルヒとイフォンは互いに顔を見合わせて
笑みを浮かべると・・・当然のように馬車台に乗りこんだ。
「ほら、早くしないと置いてっちゃいますよ!?」
「飛馬の手綱はオレが・・・、若様は急いでここまで飛んできたみたいですからね。
若様は馬車台で休んでいてください。」
二人の行動に呆気に取られながら、サイロンは口をパクパクさせている。
ようやく事態を把握し・・・、慌ててハルヒとイフォンを馬車から降ろそうとした。
「な・・・っ、何をしておるんじゃお前等!
余は眷族に狙われる身じゃと言うとろうが、そんな危険な目に遭うことがわかって
いて・・・お前達を連れ回すなど出来るはずがなかろう!
今すぐ降りるのじゃ、これは命令じゃぞ!」
サイロンに腕を引っ張られ、苦痛に顔を歪めるハルヒ。
拷問で受けた全身の傷のことを思い出したサイロンが掴んだ手を慌てて離すと、
ハルヒはそんなサイロンの優しさに安堵した顔になって、本当の気持ち・・・、
本当の思いを主に・・・サイロンに告げた。
「だったら・・・、なおさら若様のお側を離れるわけには参りません。
オレ達は若様をお守りする為に、こうして仕えているんですから・・・。
若様が安心してご自分のやりたいことを全う出来るように、その手助けをすること
こそが・・・オレ達の望みでもあるんです。」
馬車台の中で先にくつろいでいたイフォンが小窓から顔を出すと、女の子のような
面立ちでにっこり微笑むと、可愛らしい外見とは裏腹に手厳しい言葉を吐いた。
「若様がいてもいなくてもオレ達、どうせ散々とばっちりを受ける運命なんだから。
だったら若様がこれ以上馬鹿なことをしてオレ達に迷惑をかけないように、目の
届く所で見張っておくしかないじゃないですか。」
「ハルヒ・・・、イフォン・・・っ!」
二人の言葉に、サイロンは心から感動しているのか・・・全身を小刻みに震わせながら
声も出ない様子だった。
そんな姿を横でずっと見聞きしていたミズキの者が、愕然とした顔をしている。
(ハルヒ殿の言葉はともかく・・・、イフォン殿のは絶対何ひとつとして褒めてない!
心を揺さぶるような台詞は一言も言ってないのに、なぜ若君は感動っ!?)
サイロンは両目を潤ませながら、二人の真っ直ぐな瞳を見つめ返す。
「お前等・・・、そこまで余のことを・・・っ!
本当にいいんじゃな!? 余の行く道はイバラの道より険しく過酷じゃ。
それでも余について来てくれると、そう言ってくれるのか・・・!?」
「当然です、元よりその覚悟で今まで付き従っていましたから。」
(え~~~・・・、ちょっとイヤかも・・・。)
ハルヒの即答に感動し過ぎて、イフォンの心の声を察知できなかったサイロンは
二人の決意をしっかり受け止め(たつもりで)・・・、共に馬車に乗り込んだ。
「ミズキの者よ、話は今聞いた通りじゃ!
すまぬが伊綱によろしく言うておいてくれ、ではさらばなのじゃ!!」
馬車台から身を乗り出すように大きく手を振るサイロン、そして御者台から会釈
するハルヒを確認し・・・ミズキの者は半ば納得のいかない感じで見送った。
走る速度を速めた飛馬は背中に生えた翼をはばたかせ、助走をつけた勢いに乗って
大空へと舞い上がる。
1時間程し、ようやく目的地に到着したようで飛馬は速度をゆるめて着地の姿勢を
取っている。
天高くそびえる岩山の頂上付近に、大きな空洞があった。
サイロン達はそこを目指している。
ハルヒがその空洞めがけて手綱を操っていると、そこに人影を見つけて警戒した。
「若様っ、制御洞に何者かが・・・っ!」
慌てて軌道を変えようとするが、目を凝らし・・・よく見るとその人物には見覚え
があった。
「まさか・・・っ、なぜあのお方がこんな所にっ!?」
一瞬ハルヒは自分の目を疑ったが、あの人物を見間違えるはずもない。
威厳に満ちたオーラ、目が合っただけで石にされてしまいそうな鋭い眼光、威風堂々と
した態度・・・、その威圧感だけで遠くに吹き飛ばされてしまいそうになる。
驚き戸惑うハルヒの声にサイロンが小窓から顔を出し、その人物を確認した。
「おお・・・、これはこれは・・・何とも適格で適切な判断力よのう!
ハルヒ! 構わん。」
「あ・・・、はいっ!」
サイロンの合図にハルヒは軌道を変えず、そのまま岩山の空洞めがけて飛んで行った。
飛馬は広い空洞の中を数歩走り・・・速度を落として、ようやく止まる。
馬車からサイロン、イフォン・・・そして最後にハルヒが降りて行った。
3人が馬車から降りる所を、にこりともせずに厳しい眼差しで見据えている。
その人物の前に3人が恭しく膝をついて、独特の挨拶をした。
長く大きな袖の中に両手を入れ、自分の頭の上まで挙げた姿勢のままサイロンが
挨拶の言葉を口にする。
「まさか供も付けずに自ら出向かれるとは・・・、思ってもおりませんでしたぞ。
やはり余の行動の先を読める者は、襷殿を置いて他にないですのう。」
「ふん・・・、お前如きに褒められたとて嬉しくも何ともないわ。
他の者が使えんならば、自分から動いた方が早いわい。
その結果がこれじゃ・・・。」
「仰る通りじゃ、ならば・・・余がこれから何をしようとしているか・・・。
襷殿ならばすでにわかっておると思いますが?」
すっと立ち上がり、サイロンは不敵な眼差しで襷を見据える。
その態度は例え元老院最高責任者であろうと、邪魔はさせない・・・と言ってる
ようなものだった。
サイロンの後方に控えていたハルヒとイフォンも、黙ったままサイロンに従い
ゆっくりと立ち上がる。
しかし襷はサイロン達の戦闘態勢にもビクともせずに、ただ静かに見据えていた。
殺気を放つどころか、構えすら取らない。
ただ一言だけ・・・。
確認するように、サイロンに話しかけただけだった。
「それが・・・、お前の導き出した答えなのか?」
「襷殿・・・・・・!?」
虚を突かれたサイロンが、言葉の意味を聞こうとする間もなく・・・襷は続けて
話しかけて来た。
「己の立場・・・、里の行く末・・・、世界の秩序・・・。
それら全てを天秤にかけ、その結果導き出した答えがそれなのかと聞いておる。
お前は一人ではない、お前の双肩に全てがかかっているのだ。
一族の未来は勿論のこと、里に住む民達の命・・・そして他国との関係。
それらを全て背負う覚悟が出来た上で、実行するつもりなのか!?」
襷の厳しい口調に怯むことなく、サイロンは「そんなことか・・・」と言うような
顔で受け答えた。
「そんな難しい言葉を並べ立てられても、余にはよくわからんのう。」
軽口に聞こえた襷の眉間にシワが入る。
しかしそんなことは構わず、サイロンは・・・なおも続けた。
「ただこれだけは言えるがのう・・・。
それらを天秤にかけようとしている時点で、すでに考え方がズレておる。
ただ余はこう思っただけじゃ・・・世界を変えられるのは今しかない! とな。」
断言するような・・・そんな強い口調で言い放ったサイロンに、襷はほんの少しだけ
揺り動かされた様子だった。
「このままそれぞれの国のトップ達が、自分の国のことばかり考えておっては
・・・そりゃ良い方向に進むはずがない。
誰かがまとめ上げねばならんのじゃ、誰かが一歩先を見据えて動かねば・・・
世界は何も変わらんまま・・・いや、破滅の一途を辿る可能性さえ出て来る。
余はその第一歩を踏ませてやりたかったんじゃよ、・・・ただそれだけじゃ。
今まで里の者に迷惑をかけながらも世界を渡り歩き、それが無駄ではなかった
ということが・・・今なら胸を張って言えるのう。
第一歩を踏みたくても踏み出すことがなかなか出来ず、きっかけを待ち続けて
いた者の何と多いことか・・・。
世を憂いていたのは親父殿だけではなかった、他にもたくさんいるんじゃ。
しかしどうしたらいいのかわからず、ただ手をこまねいておるしか出来ん
かったんじゃよ・・・。
余は思ったのう、今こそ皆が足踏み揃えて・・・第一歩を踏み出す時が
来たんだと・・・。
順序良く考えてみた結果、今の世界の有様が如何に歪んだものであったか
・・・改めてよ~~くわかった。
世界を救う為に知恵を絞った結果であったのだろうが、それは種族間の
溝をより一層深くする結果にも繋がってしもうた・・・。
余はこの溝をなくしたい、いや・・・なくさねばならんのじゃ。
人間が変わるのを信じて待つ親父殿のやり方に反する行為になろうが、
余はまず世界を変えねば・・・人の心も決して変わることはないと悟った。
そして人は必ず、変われると信じておる。
変われる強さを・・・、人間は持っておるのじゃ。」
いつの間にか真剣に、一切の迷いもなく語るサイロンの瞳の奥に・・・燃える
炎を見た気がした。
「襷殿・・・、龍神とはどれだけ偉い!?
えばりくさっておっても、所詮人となんら変わらぬと余は思っておるよ。
そんな隔たりなんぞあったところで・・・、これまで一体何の役に立った!?
余は宮中でのらりくらりとしておるより、里の者と交流し・・・民と会話する
ことで得られたものがたくさんあった・・・。
それは里の中だけではない、レムグランドにも・・・アビスグランドにも。
得る為に・・・国や種族なんぞ、関係なかったんじゃ。
かつて存在した創世時代がそうであったように、今こそ世界をひとつにする
時なんじゃ・・・生きとし生けるものがひとつとなる時なのじゃ。
だから襷殿よ、・・・邪魔をせんでくれ!
ぶらぶらと務めも果たさずに放浪していた余の言う言葉ではないかもしれんが、
・・・必ず! 余が必ず責任持って皆の安全を保障するから・・・!
異界交通の制御装置を操作させてもらえんか!!」
懇願するように、サイロンは必死になって訴えた。
己の全てを懸けるように・・・、必要ならば土下座すらする覚悟でサイロンは襷に
同意を求めた。
襷は両目を閉じ・・・、しばしの沈黙が訪れる。
重苦しい、緊迫した空気。
族長のいない今・・・、実質的に全選択権があるのは襷一人であった。
じ・・・っと、まばたきすらせずに襷を瞠っていたら小さく溜め息を漏らしたので
それが答えだと思ったサイロンはがっかりする。
すると・・・。
「・・・・・・襷、殿!?」
襷は険しい表情を浮かべたまま、サイロン達に道を開けるように・・・体を傾けて
制御装置のある奥へと進むよう・・・促しているように見えた。
「・・・誰が、誰の邪魔をすると言った!?
ワシはお前の導き出した答えを聞きに、ここまで来ただけじゃ。」
「なんと!? 余を連れ戻すように指示しておったのではないのかの!?」
驚きの余り、三白眼のツリ目だったサイロンの目はまん丸になっていた。
いつも虚を突いてくるサイロンを、逆に驚かせることが出来て少し満足しているのか。
襷は微かに得意満面な表情を一瞬だけ浮かべると、いつもの威厳溢れる口調で
説明した。
「何やら勘違いをしているようだから、一応説明しておいてやる。
確かにワシは全勢力を挙げてでもお前をワシの前に引きずり出すつもりじゃった。
しかし、別にお前の意見を真っ向から反対する為に・・・。
ましてや馬鹿な行動に出るお前を幽閉する為に、捕縛命令を下したわけではない。
行動力のあり過ぎるお前のこと、どうせワシらに何の了解も得ずに行動を起こす
ことなど・・・目に見える程に明らかだったからな。
ワシの許しを得ずに制御装置を操作すれば、例え次期族長であるお前でも大罪と
なってしまう・・・。
ワシはな・・・、サイロンよ。
お前がきちんとよく考えて導き出した結論だと、そう断言するのならば・・・。
ワシはお前の答えを、尊重するつもりだった・・・。
元老院最高責任者であるワシの了解を得た上で、制御装置を操作する権限を
与えるつもりだったんじゃよ。
・・・・・・それをっ!」
襷は右手の拳に濃厚なマナを集約させると、一気に解き放ち・・・サイロンを
思い切り吹き飛ばしてしまった!
「のおおぉおおぉぉーーーーっっ!??」
「若様っ!!」
高い岩山からあわや、落下しかけた所にハルヒが受け止め・・・事なきを得た。
しゅう~っと攻撃を受けた腹から、衝撃による煙が立ち・・・サイロンはかろうじて
意識を保っている状態である。
「た・・・、たす・・・き・・・ど、・・・の!?」
襷は両手を組んで、サイロンを思い切り見下すように一瞥すると・・・いつもの
大きな怒声をぶちかました。
それこそ空洞全体に響く程、とてつもなく大きな声で・・・。
「この・・・バカがっ!!
好き勝手に行動するのも大概にせんか、お前はすでに里の未来をその背に背負うて
おるのじゃぞっ!!
鏡ごしなんぞで元老院の石頭共を納得させられるはずなかろうが!」
「じゃ・・・、じゃが・・・里に置いて来た鏡は青龍廟に置いておったはずじゃ。
余はまず亡き親父殿に聞いてもらいたく・・・っ!」
「僧侶の務めの際にすぐ発見されること位、お前ならば百も承知じゃろうがぁっ!」
そう叫ぶと今度は支えているハルヒ共々・・・、襷の練り上げたマナの塊がまるで
レーザー光線のように真っ直ぐとサイロン達めがけて放たれた!
「どあああぁぁぁあーーーっっ!!」
「自分の思いを相手に伝えたくば鏡ごしではなく・・・、正面から堂々と話せと
言っておるんじゃ!
全く・・・お前のすることはいつも慌ただしくていかん!
もう少し落ち着きを持って行動せいと、いつも言うておろうが・・・。」
襷の叱咤が続くが・・・、襷の愛の攻撃によりサイロンとハルヒは戦闘不能寸前だった。
「あの~、襷様。
二人とも聞いちゃいないですよ!?」
完全に他人事な口調でイフォンが告げた。
少しマナを込め過ぎたか・・・と、襷は少々張り切り過ぎた自分に羞恥を感じている
様子だ。
「ま・・・まぁ、二人とも回復力だけは凄まじいから・・・しばらくすれば
気がつくじゃろう。」
「さすが襷様、容赦ないですね。」
それからサイロン達が目覚めるまで、約1時間も無駄にしてしまった・・・。
異世界間、完全封鎖まで・・・あと二日。