第139話 「町中の事件」
ラムエダの町は大きくも小さくもない普通の村だった。
アギトの目からすれば田舎も同然だったが、このレムグランドに来てから・・・アギトが立ち寄ったことのあるマトモな町といえば首都位のものだったので、そんな風に映っても仕方がないと言えば仕方ない。
しかしさすが物流で発展した地域というだけはあって、商店街にある店の数は首都にも負けない程だった。
様々な種類の店がある中、アギトは久々の異世界ショッピングに気分が浮かれている。
「おぉ〜〜っ!!あれって何っ?
もしかして魔法に関する道具とかが売ってる店なのかな!?
あっ!あっちにあるのって何かスゲェーーっ!ゲームん中で見たような鎧とか剣とか盾とかたくさん売ってんじゃん!!
おわっ!なんだあれ、まさかペットショップとか言うやつか!?変な動物がたくさんいるぅーーっ!!」
見かける店全てに興味を示して歩き回るアギトの興奮とは裏腹に、後方では冷めたパーティーが遠い目になっていた。
「ドルチェ、アギトから目を離さないようにしっかりと見張っておいてください。
また何かトラブルを起こしたり迷子になったりしないようにね・・・。」
「了解。」
そう返事をするとドルチェはアギトの白いロングコートの裾をこっそり掴むと、金魚のフンみたいに後ろをついて回った。
呆れた顔でアギトの興奮を見つめるザナハは、頭痛でもしてきたかのように頭を押さえている。
「・・・本っ当、あいつってこういうのが好きよね。
向こうではそんなに珍しい光景なのかしら・・・?あんなにはしゃいじゃって・・・、あたし達が使命の為にここを訪れている
ことを忘れてるんじゃないの!?」
「だが、ああいうのが一人位いたら・・・気が楽でいいだろ。
ここには年中気難しい顔をした軍人やら、使命に凝り固まった連中ばかりで肩が凝るったらないからなぁ。
オレはかえってリラックス出来てちょうどいいと思うぞ!?」
ジャックは楽しそうな表情になりながら、ザナハを諭した。
その言葉に、オルフェが意外にも賛同する。
「そうですよザナハ姫、四六時中難しいことばかり考えていても道は開けません。
かえって視野が狭くなり柔軟な思考が出来なくなってしまいます、人間・・・時にはああやって脳みその髄までリラックスする
必要もあると、私は思いますよ?」
「・・・お前が言うと褒めてんだかけなしてんだか、わからんな・・・。」
「そうですか?
私は心の底から褒めちぎっているつもりなんですけどねぇ?」
「でも・・・まぁ。」
ザナハの顔にもふっと笑みがこぼれると、町の中を見渡して・・・人々の往来をその目に焼き付けるようにジッと眺めた。
既に戦争が始まっている状態で、この活気・・・。
もっと町は沈んで、いさかいや混乱が起こっているのかと警戒していたのだが・・・その心配は無用だったように町の中は通常通りに穏やかだった。
「この町ではそれ程アビスや魔物に対する脅威がなさそうで安心した・・・。
といっても、魔物の強さから見れば手放しに喜ぶわけにはいかないんだろうけど・・・この町の人達の顔には笑顔がある!」
「古来より商売人という種族は、挫折しても不屈の根性で立ち上がるという強さがあると聞きます。
この町だけが戦争による被害が全くないわけではないでしょう、それでもその逆境に負けず自分達の力で立ち向かう術を・・・
彼等は一人一人が持ち合わせているのかもしれませんね。」
「泥棒ーーーっ!!」
オルフェが『イイ話』をした矢先、どこからかそんな叫び声や怒号が聞こえて来た。
その声を聞いたオルフェは「やれやれ・・・」と肩を竦めると、皮肉を込めた笑みに戻って水を差されたと言わんばかりだった。
「ま・・・、中にはこういう私欲に目の眩んだ人間がいるのも事実ですが・・・。」
「んな悠長なこと言ってる場合か!?
お前は軍人だろう、泥棒を捕まえるぞっ!!」
そう叫ぶと、ジャックは人混みを掻き分けるように騒ぎが聞こえた方向へと走って行ってしまった。
後に残されたオルフェとザナハは、自分達の身の振り方を悩んでいる様子である。
「・・・泥棒を捕まえる位だったら、別に構わないわよね!?」
そう呟いたザナハの目は、正義の炎に満ちていた。
その眼差しを見て否定する程、オルフェは野暮ではない・・・というよりジャックの言うことの方が正しかったりするのだが。
正体を隠したままの状態で泥棒を捕縛出来るかどうかいささか疑問ではあったが、そんなことを言ってる場合でもなかった。
「ザナハ姫、くれぐれも私から離れないようにお願いしますよ?
こんな人混みで姫を見失ったとあれば、私が中尉に何て言われるかわかったものではありませんから。」
「わかってるって!!
さぁオルフェ、泥棒をとっ捕まえに行くわよぉーーっ!」
存外ノリ気なザナハに、オルフェは苦笑しながらもジャックが突き進んで行った方へ向かって走って行った。
そんな中・・・、叫び声を聞きつけて誰よりも真っ先に現場に向かって行った人物がいた・・・。
青い髪を風になびかせ、ツンツンに伸びた髪の毛には1本だけ一際目立つように立ったアンテナ・・・。
全速力で駆け抜けるその姿は視線の位置が誰よりも低い為、あまり人目につくことはない。
「この町の事件は、勇者のお供であるこのアギト様が見事解決してみせるぜっ!!」
「パーティーから離れるの、良くない。」
アギトが駆けても決して離すことのなかったドルチェが注意するが、まるで聞く耳がない様子だった為すぐに諦めた。
その時、アギト達が今まさに向かっている方向から何かが通行人を押しのけて突き進んでくるようだった。
必死で逃げるその姿から、アギトはその人物こそ騒ぎを起こしている泥棒だと思ってドルチェに目で合図を送る。
瞬間・・・!
人々の間から突然現れたのは、アギトとそう年齢が変わらないような少年だった。
頭にはキャップをかぶり・・・蝶ネクタイにサスペンダー・・・、すれ違ったのはほんの一瞬だったのでアギトの目からはそれ位しか確認出来なかった。
すぐさま手を伸ばしかけるが、逃げ足の速い少年だったので指先にほんの少し触れただけで取り逃がしてしまう。
「あーーくっそ!!
ドルチェっ、準備はいいかっ!?」
「問題ない。」
アギトの言葉にドルチェは、いつの間にかいぬのぬいぐるみであるペスを取り出していて・・・追跡を開始した。
ペスは鼻をクンクン動かしながら逃げて行った少年が走り去った方へ、確実に歩いて行った。
回りの人達は不思議そうな視線でアギト達を見ていたが、追跡に夢中なアギトは全く気にしてない。
シッポを振り振り、ペスはどんどん人々の往来から外れて行って・・・どんどんと裏通りの方へと進んで行く。
「へっ、泥棒のパターンだな。
アジトは町はずれにある・・・ってか?」
そして裏通りを抜けた先には、少し古ぼけた真っ白い教会が目の前に立っていた。
ペスはここが目標の逃げ込んだ先だと言わんばかりに、ドルチェの足元にお座りすると次の命令を待っている様子だ。
「ちょっと待てよ・・・、教会関係者!?
それとも教会を勝手にアジトにしてるとかか・・・!?」
ちょっと意外な目的地に、アギトはこの先どうしたらいいのか考え込んでいる。
ドルチェはペスから魔力の糸を切り離すとアギトに向き直って、次の行動を促した。
「ペスの鼻は完璧、さっきの人物は確実にこの場所に逃げ込んだ・・・。
・・・この先、どうしたい?」
「どうしたい・・・って、そりゃ・・・やっぱ乗り込むしか他に道はねぇだろ。」
戸惑いながらもアギトは先頭に立って教会の前まで歩いて行くと、ちょんっと扉に触れた。
すると鍵がかかっているわけでも、立てこもっているわけでもなく・・・扉はあっさりと鈍い音を立てながら開いていく。
中を覗き込むと、そこは薄暗く・・・明りが灯っていない状態だった。
扉が動く度に積もっていた埃がパラパラと振って来て、危うくくしゃみをしかけたアギト。
ぎしっ、ぎしっと軋む床をそ〜っと歩いて、教会の中にある木製の横長の椅子の背もたれに人差し指を当てて・・・すーっと撫でた。
指の先を見るとかなり放置されているのか、砂埃のようなものが指について・・・指で撫でた椅子の背もたれにはくっきりと指の跡が残っている。
「長い間使われてないみたいだな・・・ここ。
これじゃ不逞の輩が住み着いても不思議じゃないってか・・・。」
「誰が不逞の輩だっ!!」
「・・・っ!!」
大声のした先にバッと振り向くと、正面にはさっきの少年が木の棒を構えてこちらを睨みつけている。
武器は武器だが、危険なものじゃなくて良かったと・・・アギトは少しだけほっとした。
キャップに蝶ネクタイ・・・、まるで少年探偵団ルックみたいな格好をしていて・・・思わずそういうコスプレセットを着こなしているんじゃ?と疑いそうになる。
アギトは決して油断することなく、少年に向かって問いただした。
刺激しないように十分警戒しながらアギトは、まず少年の話を聞こうと思ったのだ。
「お前・・・、さっき町の中で騒ぎがあった場所から逃げてきたろ?
オレはその泥棒を追いかけて来たんだけどさ、・・・その犯人がまさかお前だって言わないよなぁ!?」
アギトの言葉に、少年はびくっとしながら木の棒を構え直す・・・。
木の棒の先端が震えている・・・、少年が脅えて震えているんだとアギトは推察した。
一歩・・・、少年に歩み寄る。
「く・・・、来るなっ!!」
「何か事情があるならオレに話せよ。
無抵抗の人間相手に、この剣を抜いたりなんかしねぇ・・・それがオレのポリシーだからな。」
「それじゃ威嚇にならない・・・、相手にナメられる。」
小声でドルチェが助言する・・・が、アギトは真っ直ぐに少年を見据えたまま・・・また一歩近づいた。
少年は脅えたまま木の棒を構えて・・・同じように一歩後退する。
相手に殺意がないとわかった以上、アギトは臆することがないと察した。
どうひいき目に見てもアギトの方が戦闘能力は上、脅えて震える少年に後れを取ることなど有り得なかった。
・・・この教会にいるのが、少年一人だったなら。
ガッ・・・!!
後ろから強い衝撃を受けたアギトは、そのまま反撃しようとしたが・・・みぞおちに2撃目を食らって床に倒れる。
誰かの足がアギトの顔を踏みつけるようにして、アギトはそれ以上起き上がることが出来なかった。
かろうじて片目で見上げると、隣にいたドルチェは喉元にナイフを突き付けられてジッとしている。
「て・・・めぇっ、卑怯だぞっ!?」
そう言葉を漏らすアギトに、踏みつけた足が容赦なく力を込めて床に押し付けた。
「卑怯とは違うね、利口なだけさ!
オラお前等、さっさとこいつらの身ぐるみ剥がしてやりな!!」
声は15〜6歳の青年といったところだろう、その青年の声に・・・わらわらと教会の中にあった長椅子の間から、そして奥の方から子供達が出て来た。
一番幼くても7歳位、そしてアギトを踏みつけているのが恐らくこの中で一番の年長者であろう。
総勢8人位の子供達がアギトの回りに群がった。
「ねぇ、このお兄ちゃんってあたし達と同じ位の子だよ?
この子からも盗るの?・・・仲間じゃないの?」
ツインテールの小さな女の子・・・恐らく8歳位の少女がアギトに向かって同類だと訴える。
「仲間なんかじゃねぇ!!
こんな上等な剣とか衣服を着てるヤツはみんなオレ達の敵なんだよ!!
わかったらさっさと全部盗っちまえって!!」
するとドルチェの回りに集まっている女の子達が、ドルチェのリボンやドレスをべたべたと触ってきゃーきゃー騒いでいる。
「わぁ〜、綺麗なドレス!
あたしもこんなの着てみたいなぁ!!」
「この子の靴カワイイ!!ねぇ、これあたしがもらってもいいかな?」
「それじゃあたしはこの大きなリボン!!」
まるでマネキン人形が着ている服を取り合いするように、中にはドルチェの髪を引っ張る者までいる。
14歳位の少年がドルチェの金髪を手に取ると・・・、その反対側の手にはハサミを構えていた。
「これだけ綺麗なブロンドなら、かなりの値で売れるはずだ!」
少年がそう言うと、大きなハサミでドルチェの髪を無残にもバッサリと切り落としてしまった。
「おいっ、ドルチェに触るんじゃねぇっ!!
お前等ただの追い剥ぎ集団かよ・・・さっさとこの足どけろ、くるぁーーっ!!」
「うるっせぇーー!!」
アギトの怒号に、リーダー格の青年が思い切りアギトの顔を蹴飛ばした!
それを見た少年探偵団ルックの少年が慌てて駆け寄り、青年に反論した。
「ちょっと待てよリヒター、何もここまですることないじゃないか!!
こいつらから金目の物を盗ればそれでいいって・・・っ、乱暴なことはしないって約束だろう!」
自分に逆らってきた少年に向かって、目の前に威嚇するように立ちはだかると青年は顔を歪めながら言い返す。
「甘ぇこと言ってんじゃねぇよカトル、こいつらが刃向かったから制裁を加えているだけだ!
こいつらが大人しく全部渡せば怪我をさせるつもりはなかったぜ、オレだってな。
・・・わかったらお前もこいつらから剥ぎ盗れ!!」
リーダー格の青年リヒターは、少年探偵団ルックの少年カトルから木の棒を奪い取って埃まみれの長椅子に座り、
アギト達が剥ぎ盗られるのをニヤニヤと笑みを浮かべながら眺めていた。
蹴られた顔がズキズキと痛みながらもアギトは、リヒターを睨みつける。
情けない・・・、こんな子供の一般人にしてやられるとは・・・オルフェに知られたらイヤミの嵐だけじゃ済まないだろう。
腰のベルトに装着していた剣も盗られてしまった・・・、アギトに出来ることは素手で叩きのめすこと位だが。
(相手はみんなガキばっかり・・・!
ガキ相手に本気もないな・・・、てゆうか暴力振るえるワケねぇじゃんかっ!!
・・・どうするっ!!)
頭の中で反撃の作戦を練っている時、リボンを奪われ・・・綺麗なブロンドの髪を切り落とされたドルチェが無表情のまま
アギトに言葉をかけた。
その言葉には怒りも、憤りもなく・・・ただ淡々と無感情に綴られる。
「時間切れよ、ここからはあたしが指揮を執る。
・・・今すぐ両目を閉じて。」
「・・・あ?」
「早くっ!」
意味がわからないままアギトは、ドルチェに言われた通り力一杯に両目を閉じた・・・その直後。
上方からガラスの割れる音が聞こえてきたかと思うと、パラパラと上の方から何かが降り注いだ。
回りから子供達が悲鳴を上げながら駆け回る、ドタバタとパニック状態のように全員が教会の奥の方へと逃げていく足音が聞こえて来た。
「わぁーーっ、目が・・・目が痛いっ!!」
「なんだあのブサイクな鳥はっ!!」
「あいつが上から砂を撒き散らかしたんだ!!」
「ガラスが服の中に入った・・・、クソっ!!目も痛くて開けられないっ!!」
もう何も振って来ないと判断したアギトは、そ〜っと両目を開けると回りにあれだけいた子供達の姿がなく・・・残っているのは
リヒターと、ドルチェの髪を切った少年と・・・カトルだけだった。
床にはアギト達の持ち物が散らばっている。
恐らく・・・突然上方にあるステンドグラスから、ドルチェのとりのぬいぐるみであるチャッピーが窓を破って入って来て、
上から教会内一面に砂をばら撒いたおかげで・・・全員が物を盗るのを忘れて慌てて逃げて行ったのだろうと思った。
物を盗るよりも、砂が入った目の痛みに耐えられなかった・・・といったところだろう。
勿論、事前に両目を閉じていたアギトとドルチェは全然平気で床に転がっていた剣を手に取り、素早くリヒターに向かって
剣の切っ先を突き付けた。
「おっと・・・、今度はそっちが大人しくしてもらおうか?」
形勢逆転・・・という風に、アギトは途端に強気な態度に出ると・・・もうこの3人に対して甘やかす必要がないことを見せつける。
剣を突き付けたまま横目でドルチェを見ると・・・、平気そうな顔をしているがその姿はとても哀れで見るに堪えなかった。
無残に切り落とされた髪が、アギトの胸をえぐる。
「おいっ、そこの少年探偵団っ!!
床に落ちてるオレ達の持ち物を全部拾えっ!・・・ドルチェの髪の毛もだ、いいなっ!?」
反抗的な眼差しになるも、目線で「言う通りにしろ」とリヒターに促されて・・・黙って従った。
アギトは残った二人から目を離さず、全て拾い終えるまで待つ。
カトルが持ち物を拾っている間、リヒターが無抵抗の合図として両手を上げながらアギトに尋ねる。
「この後オレ達をどうするつもりなんだ・・・。
オレ達を憲兵に突き出すのか?・・・それともこの場で全員殺すのか!?」
後ろで大人しくしている少年も同じように両手を上げながら、泣きそうになりながらうつむいている。
いつもならここでイジワルそうな笑みを浮かべて、死ぬよりツライ地獄を宣言してやるところなのだが・・・今のアギトは
そんな冗談が言える程、心にゆとりがなかった。
自分のせいでドルチェの綺麗な金髪がメチャクチャにされて・・・、笑顔になれるはずもない。
アギトの短絡的で安直な判断が、この結果を招いてしまった。
悔やんでも悔やみきれない、・・・他のみんなは何て言うだろう。
そんなことがアギトの脳裏を支配していた時、カトルが全部拾い終えて声をかけて来た。
その声にハッと我に返って、目線はリヒター達に向けたまま・・・もう片方の手だけで持ち物を掴み取ろうとした時・・・。
ぐにゃ・・・っ。
「・・・んあ!?」
ものすごく柔らかい物体を掴んだ・・・。
あまりに柔らかくて思わず何度も確かめるように、ぐにゃぐにゃと揉む。
(・・・あっれぇ〜!?
オレの持ち物の中にこんな・・・プリンみたいなの、あったっけ・・・?)
さぁーっと頭から血の気が引いて行くアギトは、ゆっくりと・・・『それ』が何なのか殺気を感じながらも振り向いた。
「いやぁーーーーーっっ!!」
カトルの胸を鷲掴みにしたアギトは、そのまま振り向いたと同時に強烈なビンタを食らってしまう。
2メートル程殴り飛ばされたアギトは、そのままぐしゃっと埃だらけの床に・・・またしても倒れてしまった。
またしても形勢逆転・・・かと思いきやドルチェは、一度に2種類のぬいぐるみを操ると反撃しようとしたリヒターと・・・
そしてもう一人の少年をすでにマークしていた。
カトルは顔を真っ赤にしながらすぐさま両手で胸元を覆い隠すと、教会内の空気が凍っていることに気がつく。
ビンタを食らった方の頬をさすりながらアギトは尻もちをついたまま、カトルの方を見つめながら驚愕した声を上げる。
「おま・・・っ、女かよっっ!!」
どこかのツッコミベタな芸人のようにキレのないツッコミをして・・・、辺りが更に寒々しくなったのは言うまでもない。