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ランチのゆくえ

作者: 皿日八目

「よし、ようやく完成したぞ」博士は満足げにつぶやいた。

 

 大量に廃棄される食品は、ずっと問題にされていた。しかし、今までだれも解決策を見つけられないでいた。

 それを、この博士は発見、いや、発明したのだ。


 集まった記者の前で、博士は説明を始めた。

「わたしはもともと、人間の脳の研究をしていました。そして何人もの脳を調べているうち、ある発見をしたのです。いつものように調べていると、その人の脳からは、特殊な信号が発せられていました。さらに、ほかの人からもそれは見つかりました。最初は原因が分からなかったのですが、調べていくうち、共通点を発見しました。特殊な信号を脳から発する者は、みな一様に空腹状態だったのです」


 博士はいったん言葉を切り、息を吸う。


「わたしはその信号を利用して、なにか役に立つ発明ができないかと考えました。そして研究し続け、ようやく完成したのがこれです」


 そう言って博士は、小型の機械を取り出した。ランタンのような形をしている。


「この機械が発する光を食品に当てると、件の信号を発する脳、つまり飢えた人間の元へ転送されるのです。これがあれば、食品廃棄、食糧問題の両方を一挙に解決できるでしょう」


 博士の発明は世界中で話題となり、機械は瞬く間に広がっていった。レストランで、コンビニで、スーパーで、機械はてきめんの働きをした。

 しかし、廃棄の問題は解決したものの、飢えた人の元へ食品が転送されることは、一向になかった。博士は首をひねったが、機械の使用者はあまり問題にしなかった。廃棄食品が消えてくれれば、なんでもよかったのである。


 そのころ、宇宙のどこか、浮かぶ船の中で、ある人々が歓喜していた。

 どこからともなく、大量の食料が現れたからである。

 彼らは故郷の星を戦争で汚染し尽くしてしまい、他の星への移住を目指して旅立った。しかし、居住に適した星はなかなか見つからず、食料はどんどん減っていった。そもそも、数十億人の船員を飢えさせない量など、確保できるはずがなかったのだ。

 そんなときに、食料は現れた。彼らは知るよしもなかったが、まぎれもなく地球のそれだった。

 滅菌処理を行い、大丈夫そうだと判断すると、各船員に分配され始めた。みな、この降って湧いた恵みに感謝した。

 危機を乗り越えた船は、二五五回目のワープを行った。

 

 再び出現した船の目の前には、青く光る星があった。


 ちなみに、彼らはこの後一斉に攻撃を開始するが、はっきり言ってそんな必要はあまりなかった。


 というのも、そのころ地球では、食品と一緒に光を浴びた人間が、続々と飢えたサメやライオンの前に転送されていたからである。


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