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余命0日 ルートb

作者: 高森
掲載日:2019/04/21

丁度1年前、余命は1年だと言われた。


つまり、今日が命日になるはずだ。


余命宣告なんて前後するものだけれど、今日という日は特別だ。


昨日までは、どんどん死に近付いている。と考えながら生きていた。

もし明日からも生きているのなら、どれだけ死に抗えるのだろう。そう考えが切り替わる。


もしかしたらこんなことを考えている間にも、容態が急変して死に至るかもしれない。

10秒先の未来すら分からない。


それでもまだ、私は生きている。


数秒先の未来を危ぶんでいると、病室の扉が開かれた。


大丈夫かい?


そう声をかけながら入室してきた彼は、椅子を引いて私の隣に座った。


大丈夫……ではないのでしょうけど、つらくも何ともないわよ。


そう言葉を返すと、彼は複雑そうな顔をした。そして私に問いかける。


何かしたいことはある?


いいえ。これから死にゆく人間が何をしたところで、どうしようも無いわ。


私は返事をし、続けて言葉を紡ぐ。


先のあるあなたのことを考えたほうが、よほど建設的だと思うわ。何か、私にしてほしいことはある?


想定外だったのであろう質問をされた彼は、迷いながらも望みを口にした。


頭を……、撫でて欲しい。


ふふふ。本当は甘えん坊なところは、いつまでも変わらないわね。


望みを承諾すると、彼は私のお腹に顔をうずめた。


右手を伸ばして彼の頭に添える。

力は僅かながらも残っているが、病のせいで感覚は全く無い。触れているのだと、目で確認するしかなかった。


本当に、これが最後かもしれないんだな。


ええ。


彼の言葉を短く肯定しながら、右手をぎこちなく動かして頭を撫でる。


このままずっと、時間が止まればいいのに。


ええ。


彼を不安にさせないために、返事も欠かさなかった。


いろいろあったよなーー、初めて会った時からーーーー。


ええ。


私はまだ大丈夫だと、右手を動かし続けて応える。


いままでーー嬉しーー、ーーってーーーーたよ。


ええ。


彼の言葉は、私の中に全て届いている。


ーーーーなぁ、もうーーーーーー、ーーぐすっーーーー。


ええ。


感覚は無いけれど、意識はずっと彼を感じていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


ええ。


大丈夫だよ。私はまだ、大丈夫。


いつまでも、いつまでも、彼の言葉に返事をした。

いつまでも、いつまでも、彼の頭を撫で続けた。

いつまでも、いつまでも…………。

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