表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

紅茶

作者: HAL model
掲載日:2018/11/04

紅茶が大好きです。


幼い頃からの特別な飲み物ってありますか?

紅茶。




お湯を沸かして

リプトンのティーパックをカップに入れ

カップに蓋をして一分間。

茶葉をよーく蒸らして

レモンの果汁を振りかけて

お砂糖をたっぷり入れたら出来上がり。




古くて少し調子の悪いトースター、

タイマーで焼けたパンが ポンッて飛び出すやつ。

それにお砂糖たっぷり入れた紅茶。


朝はトースト1枚にマーガリンを塗って

紅茶を飲んで学校へ。

それが私の日常でした。



学校が休みの日には 朝の10時と 午後の3時

おやつの時間には 母の買ってきたお菓子に

やっぱりリプトンの紅茶のティーパック。

食べる方が甘いお菓子でも 紅茶には

お砂糖はたっぷりと。



小学校の頃の記憶は本当に

その甘い紅茶とお菓子

家族で見るTV番組。


母と喧嘩した時も

仲直りは甘い紅茶でした。


日曜日の朝

寝ぼけまなこで朝食のテーブルについた私は

赤くて大きな ホーローのマグカップを掴もうとして

マグをひっくり返してしまい 熱々の紅茶が左脚に。


もう家中、大変だ大変だって大騒ぎ。

私は急いでお風呂に運ばれて

冷水で患部をジャブジャブに冷やされました。

結局

皮がベロベロに剥けるほどに火傷して

今でも少しだけ左脚に火傷の跡が残ってる。


もう寝ぼけて紅茶を掴もうとか しません、あはは。


中学も高校も

朝はトーストにマーガリンを塗って

甘い紅茶を飲んで

3時にはおやつと紅茶を飲んで

人間の80%は水で出来ているっていうけど

学生時代の私は 紅茶で出来ていたかも。



高校を卒業して

進学のために家を出て都会に行きました。



初めての一人暮らし。

荷ほどきをして一息つきたい時は

やっぱり紅茶じゃない?


ケトルでお湯を沸かして

実家から持ってきたティーパックをポン。

そう、あの赤い大きなホーローのマグカップ。


1分蒸らして お砂糖たっぷり入れて出来上がり。

新しい街で ブレイクタイム〜〜〜



⋯⋯


⋯⋯ ⋯⋯ 不味い。


なにこれ美味しくないよ〜〜〜


都会の水はさ、田舎と違って

なんだかすごくクスリっぽいの。


都会に出て 初めてわかった、

「水が美味しい」って意味。


ホントにぜんぜん違うの、

田舎の水が美味しいって言うより



都会のお水が劇的に不味いって感じ。





その日から私は紅茶を淹れなくなった。



都会で淹れる紅茶は

あの記憶の中にある味とは

比べ様もないくらい不味くて 別物で

私に安らぎを与える物じゃなかったから。






故郷を離れた都会では

カフェでラテを飲み

ベーグルを食べて


お酒が飲めるようになってからは

流行りの服を着て

無敵って顔してお洒落なバーでカクテルを飲んだ


実家からは時々 荷物を送ってきてくれて

中には紅茶のティーパックも入ってた。




でも私は それを一度も開けた事がないの。

だって 美味しく淹れられないんだもの。





オトナになった私は

華やかなメイク術を身に付けて

調子に乗って夜にはアヤシイお店に出入りしたりして

あぶない思いも何度かした。


でも

運が良かったのね、

本当に危ないって事にはならなくて⋯⋯

毎日がパーティーのように

浴びる様にお酒を飲んで

数年間 おもしろおかしく暮らしたわ。





でも 美味しい紅茶は飲めないの



⋯⋯ 学校を卒後するように


私は 紅茶が飲めない都会を卒業した。






十何年振りの故郷。



本当は

田舎で 文化水準が低くて

何も無くて大嫌いだった街。



実家や故郷を離れて暮らすと

自分の根幹のような物を確認するようになるよね。








私は都会でオトナになったと思ってた自分よりも

ずっとずっと大人になった。








「はーい おやつの時間ですよ〜」


幼稚園の年中さんになる娘が笑ってる。


私の口癖をそっくり そのままパパに言うので

私がその度に吹き出しちゃう。


娘が生まれ

私はこの街で暮らしている。


若い頃はあんなに嫌いだった街。

紅茶と家族の記憶。

今は逆に

紅い茶葉の色が都会の喧騒の記憶を薄く薄く

消してゆく。


飲む事の出来なかった

大好きな紅茶。


年齢を重ねるって悪い事じゃないわね。


お湯を沸かして

リプトンのティーパックをカップに入れ

カップに蓋をして一分間。

茶葉をよーく蒸らして

レモンの果汁を振りかけて

お砂糖をたっぷり入れたら出来上がり。



やっぱり故郷のお美味しいお水で淹れた紅茶は最高。





「熱いから フーフーして飲もうね」

あなたにも紅茶が特別な飲み物になりますように。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] はぁ...素敵だなぁ。本当に...。Re HALさん、こんばんは!最初と最後に同じ紅茶の淹れ方の描写を挟んで、話を閉じる。その文章の構成も、お話も自分のことではないのに、とても懐かしさを感…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ