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その34の3『まちがいさがしの話』

 「トマトのせいにしてすいませんでした」


 亜理紗ちゃんがイタズラ妖精へ謝ると、それを聞いた風は知恵ちゃんの家の裏側へと入っていきます。知恵ちゃんの家の小さな庭に面した窓が開いており、そこを通ってリビングへと入っていったのがカーテンの動きで解ります。


 「お母さん。アリサちゃんと、中に入ってもいい?」

 「いいけど、どうしたの?」

 「このままにしたら、家の中が大変」


 家の中をイタズラされてしまうと心配し、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんはイタズラ妖精を追いかけて家へと上がります。リビングのドアを開くと、リビングの中を強い風が吹き抜け、そのまま廊下へと出ていきました。ソファで本を読んでいたお父さんが、風でしおりを飛ばされてしまいます。


 「はい」

 「ありがとう」


 知恵ちゃんは落ちたしおりをお父さんに渡し、風の行き先を探して亜理紗ちゃんと一緒に廊下へと出ます。お手洗いの方へ行ったのか、お風呂場の方に行ったのか、2階へ上がっていったのか、いたずらのあとを探しながら歩いていきます。


 「どこだー?」

 「ちょっとしかイタズラしないから解りにくい……」


 イタズラ妖精は悪質ないたずらをしない反面、解りにくいイタズラをしていくので知恵ちゃんは困っています。階段の近くまで来たところで、亜理紗ちゃんが階段の窓を指さして言いました。


 「あ、絵が倒れてる」

 「どこ?」


 窓のフチには手のひらサイズのジグソーパズルが完成した状態で飾られており、木目のフレームに入ってスタンドで立ててあります。それがパタンと手前に倒れているのを見て、イタズラ妖精が2階へ向かったことを知りました。


 2階の廊下から各部屋を見てみます。すると、知恵ちゃんの部屋のドアだけが少しだけ開いていました。自分の部屋にイタズラ妖精が入ったことを知ると、知恵ちゃんは足早に通路を進んでドアを開きました。


 「……どこ?」


 知恵ちゃんの部屋は窓が開いておらず、机の上に置いたままの勉強ノートがパラパラとめくられています。ドアを閉めてしまえば逃げ場もないので、部屋の中にイタズラ妖精が隠れたと考え、2人は部屋を探し始めました。


 「ちーちゃん。ちょっと服入れが開いてる」

 「ほんとだ」


 クローゼットが少し開いているのを亜理紗ちゃんが発見し、恐る恐るの手つきで知恵ちゃんがクローゼットを大きく開きます。クローゼットの中から風が吹き出し、また部屋のどこかへと逃げ込んでしまいました。このままでは、見つけても見つけても追いかけっこになってしまいます。


 「どうしよう」

 「……そうだ。窓を開けよう」


 亜理紗ちゃんが知恵ちゃんの部屋の窓を開きます。イタズラ妖精が隠れた場所は、かたよって本が斜めに倒れている本棚です。どうするのかと疑問の表情を浮かべている知恵ちゃんに、亜理紗ちゃんは勉強机の下敷きを借りて手渡しました。


 「これ、使っていい?」

 「いいけど」

 「私が妖精を見つけたら、ちーちゃんは窓の方にあおいでね」


 そう言われて、やっと知恵ちゃんは亜理紗ちゃんのやりたいことを理解しました。知恵ちゃんが下敷きを持って待機し、亜理紗ちゃんは足音をたてないように本棚へ近づきます。


 「ちーちゃん。せーのだよ」

 「うん」

 「せーの」


 亜理紗ちゃんが本の1つを引き抜き、そこから風が吹き出します。知恵ちゃんが下敷きをうちわのように振ります。風は下敷きの送った風に流されて、窓から外へと出ていきました。亜理紗ちゃんは窓を閉めながら、部屋の中に風が残っていないことを確認します。


 「……んー。ちゃんと出ていったかな?」

 「たぶん」


 イタズラ妖精を家の外に逃がすことに成功し、2人は一息つくようにベッドへと腰かけました。他にイタズラされた場所が部屋にないか探し、それから知恵ちゃんは片手に持っている間違い探しの紙へと目を向けます。


 「そういえば……これ、まちがいの最後の1個はなんだったんだろう」

 「……言っていい?」

 「んー……いいよ」


 もう疲れたので、知恵ちゃんは間違いを探すのは諦め、亜理紗ちゃんに答えを教えてもらうことにしました。亜理紗ちゃんは間違い探しの絵の回りにある縁取り線へと人差し指をのせ、2つの絵の縁取り線の色を指し示します。


 「ここの色が違う」

 「……絵じゃないじゃん」


 答えを知ってなお、知恵ちゃんは腑に落ちない様子で口をふくらませていました。


                                   その35へ続く


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