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その33の2『お金の話』

 こうなると、何を入れれば何が出てくるのかという好奇心がくすぐられ、亜理紗ちゃんは石以外のものを入れるべく探し始めました。地面には枯れ葉が積もっていて、土肌の大部分をおおい隠しています。


 「葉っぱを入れてみる」


 亜理紗ちゃんは枯れ葉を1枚だけひろって、それを自動販売機の木の上の穴へと入れてみます。しかし、今回は何も出てはきませんでした。


 「あれ……葉っぱじゃ松ぼっくりは買えないのかな?」

 「枚数が足りないんじゃないの?」

 「そうか!葉っぱは安いから、たくさん入れないと!」


 亜理紗ちゃんは枯れ葉を5枚、手に持って1枚ずつ穴へと落としていきます。すると、2枚だけ入れたところで、木の下の穴からは松ぼっくりが落ちてきました。


 「ちーちゃん!松ぼっくりは、葉っぱ3枚で買える」

 「やっぱり葉っぱは安いんだ……」


 石は1個で松ぼっくり、葉っぱは3枚で松ぼっくりです。ただ、他に何か出てこないものかと知恵ちゃんは考え始め、何か思いついたように亜理紗ちゃんへと尋ねました。


 「上の穴に松ぼっくりを入れたら、何が出てくるんだろう……」

 「松ぼっくりの店だから、松ぼっくりなんじゃないの?」


 亜理紗ちゃんは上に松ぼっくりを入れたら、下からも松ぼっくりが出てくると考えています。知恵ちゃんは亜理紗ちゃんから松ぼっくりを1個もらい、頑張って木の上の穴へと入れてみました。少しして、下の穴からはココンと小さな音が聞こえました。下の穴をのぞいた亜理紗ちゃんが、それらを手に取って知恵ちゃんに見せます。


 「何が出てきたの?」

 「ドングリになった」

 「松ぼっくりの店じゃなかったんだ……」


 松ぼっくりがドングリ2個に交換となり、それを1つずつ手に入れたまま2人は木を見上げています。ふと、亜理紗ちゃんは木からドングリが出てきた意味に気づいてつぶやきました。


 「あ……両替だ」

 「え?」

 「松ぼっくりを両替して、どんぐりが出てきた」

 「両替機もやってるんだ……」


 不意に2人は、木が両替もできるという事実を知りました。松ぼっくり以外に何か買えないものかと、知恵ちゃんは木の周りを調べてみます。すると、木の横側にも穴が空いているのを発見しました。穴は少し大きめで、やや低い位置にあります。その穴を知恵ちゃんがのぞきこんでみると、もぞっと穴の中で何かが動きました。


 「アリサちゃん。なんかいるんだけど……」

 「なにが?」


 ビックリして逃げてしまった知恵ちゃんに代わって、亜理紗ちゃんが穴の中をうかがいます。それにあわせて、穴の中からは丸々としたネコが出てきました。ネコは2人に構わず、そのままどこかへ歩いて行ってしまいました。


 「ちーちゃん。ネコさんだった」

 「なんだ……ビックリした」

 「クリ……栗も入れてみる?」

 「なんで急に……」


 知恵ちゃんの言葉を聞いて栗を思い出し、亜理紗ちゃんは公園の栗の木が生えている所へと走って行ってしまいます。すぐに栗の実を1つ持って戻ってくると、それを亜理紗ちゃんは木の上の穴へ1つ入れました。下の穴でコンと音がしたので、2人は一緒に穴の中を見つめます。


 「あれ?」

 「あれ?」


 今度は松ぼっくりではなく、入れた栗の実が素通りして出てきました。不思議に思った亜理紗ちゃんが上の穴に石を入れたりしてみますが、もう松ぼっくりは出てはきません。入れた物が下から出てくるだけです。どうしてなのかと腕を組んで考えている知恵ちゃんに対して、亜理紗ちゃんはネコが消えていった方を見つめながら言いました。


 「あ……ネコ店長だ」

 「ネコ店長?」

 「ネコ店長が帰ったから、もう今日は閉店」

 「自動販売機なのに……」


 店長が帰ってしまっては仕方がありません。亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは木から買った松ぼっくりとドングリを持ったまま、駄菓子屋さんへ寄って家へと帰りました。


                                

                                   その34へ続く

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