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その32の2『デコレーションの話』

 リボン好きな女の子の気持ちが理解できず、手始めに知恵ちゃんは桜ちゃんが持っているアクセサリーの中からリボンらしきものを探し始めました。ブローチや髪留めに比べると種類は少ないものの、色違いのものが3つほど見つかりました。


 「桜ちゃん。この大きい赤いの、つけたことあるの?」

 「ない……」

 「つけたかったの?」

 「いや……」


 アニメのキャラクターがつけているような大きな赤いリボンを発見し、それを持って遠目に見つつ桜ちゃんの髪へとあわせてみます。それはもう、リボンの迫力が桜ちゃんの存在感を上回ってしまい、あまり知恵ちゃんとしてもオススメはできません。


 「これは違う気がする……この青くて透けてるリボンは?」

 「かわいいでしょ?」

 「つける?」

 「それは……」


 自分でつけてみたいと言ったはずが、一向に桜ちゃんはリボンをつけようとしません。最後の1つは黒色に金の模様が入っているリボンで、それを知恵ちゃんは桜ちゃんに個人的なオススメとして渡します。


 「きっと、これは似合うよ」

 「そうかな……」

 「うん」


 桜ちゃんはリボンを受けとりますが、しばらく黙って見つめた末、それを知恵ちゃんへと返しました。知恵ちゃんはリボンを自分のおでこの上へあてがい、試着のモデルをかってでます。すると、桜ちゃんは知恵ちゃんを見ながら、もじもじと体を揺すりつつ伝えました。


 「知恵。見た目が女の子らしいから、こういうのも似合うよね」

 「ありがとう……解んないけど」

 「なんかダメなんだ……リボンは」


 いまいち乗り気なのか乗り気でないのか解らない桜ちゃんにリボンをつけるべく、そのための作戦を知恵ちゃんは考え始めます。そして、今日はリボンをつけている人が他にいたことを思い出し、そちらの見学へ行こうと誘います。


 「お母さん。今日、リボンつけてるけど」

 「そうなの?」

 「見に行く?」

 「行ってみよっか」


 リビングにいる知恵ちゃんのお母さんからセンスを探るため、2人は部屋を出て廊下を歩いて移動します。リビングのテレビの前に置いてあるテーブルをはさんで、知恵ちゃんのお母さんと桜ちゃんのお母さんが笑いながらおしゃべりをしています。桜ちゃんがトビラを開くと、すぐに桜ちゃんのお母さんが2人に気づきました。


 「どうしたの?持って行ったお菓子、食べ終わっちゃった?」

 「あ……そうじゃないんだけど。ちょっとね」

 「そうそう。リンゴあるから、むいてあげるね」


 桜ちゃんのお母さんがキッチンに立ち、青いりんごを冷蔵庫から出して皮をむいてくれます。その間、桜ちゃんと知恵ちゃんは知恵ちゃんのお母さんの後ろへと回り込み、頭の後ろについているシックな色のリボンを見て勉強します。


 「どうかしたの?2人して後ろから」

 「お母さん」

 「なに?」

 「……リボンをつけるコツってなに?」

 「……?」


 知恵ちゃんの疑問に対して疑問符を浮かべていた知恵ちゃんのお母さんでしたが、知恵ちゃんが見慣れないヘアゴムをつけているのを知り、2人がオシャレの話をしているのだと気づきました。とはいえ、お母さんはリボンをつける事に抵抗がないので、それなりに思い当った程度のアドバイスをします。


 「自分に似合うと思ったら、つければいいと思うけど」

 「ははぁ……それだけ?」

 「……あとは目立ち過ぎないようにするくらいね」

 「リンゴむいたから、よければ持っていってね」


 あとはアドバイスを引き出せそうにないと見て、桜ちゃんと知恵ちゃんはリンゴの入ったお皿をもらい部屋へと戻ります。その途中、何か成果はあったかと知恵ちゃんが桜ちゃんに聞きました。


 「リボン、つけれそう?」

 「う~ん……」

 「ダメそう?」

 「……」


 知恵ちゃんが桜ちゃんの部屋のトビラを開き、リンゴを持っている桜ちゃんが先に部屋へと入ります。皮も残さずキレイにむかれたリンゴをテーブルに置きながら、桜ちゃんはまゆを八の字に下げつつ言いました。


 「知恵の家族は素材がよすぎて勉強にならない……」

 「……もしかして、うちのお母さんって美人なの?」

 「美人でしょ……」

 「知らなかった……」


                            その32の3へ続く


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