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その31の1『右か左の話』

 学校の午前の授業が終わり、給食の時間がやってきました。今日は桜ちゃんと百合ちゃんが給食当番の準備をしていて、その隙を見て凛ちゃんが知恵ちゃんの席へと遊びに来ています。


 「チエきち!誕生日、いつ?」

 「8月の最後の方だけど」


 急に誕生日を聞かれ、何が目的なのかも解らないまま知恵ちゃんが答えます。すると、凛ちゃんは手元のメモへ目をやり、ちょっと気の毒なことに気づいた様子で話し始めました。


 「チエきち……星座占い、最下位ね」

 「そうなんだ……別にいいけど」

 「でも、大丈夫!私、1位だったから。分けてあげる!」


 凛ちゃんは可愛いメモの一枚にキレイな字で『運』と書いて、それを知恵ちゃんに手渡しました。そもそも知恵ちゃんは占いを信じておらず、最下位だったことについても残念な思いはありません。しかし、せっかくくれた『運』を返すに返せず、それを受け取ってポケットへと入れました。

 

 「給食、配るから並んで」


 料理の入った寸胴の近くに立って、桜ちゃんがクラスのみんなを呼んでいます。廊下側の席に座っている生徒から順番に並び、献立を一つずつトレーに乗せていきます。その日の料理は白米ごはんと肉じゃが、野菜炒め、デザートは冷凍のリンゴです。ごはんを桜ちゃんがよそい、野菜炒めは百合ちゃんがお皿に入れてくれます。全てもらい受け、知恵ちゃんは料理を持って席へと戻ってきます。


 「……」


 他の生徒たちが給食を受け取っている中、知恵ちゃんはお椀の中に入っている肉じゃがを見つめています。具は肉とじゃがいも、こんにゃくとニンジンと玉ねぎです。全員に料理が行きわたり、いただきますのアイサツをして知恵ちゃんはお箸に手をかけます。


 「……」


 肉じゃがをお箸の先で持ち上げてみますが、お椀の上の方にも下の方にも玉ねぎと、こんにゃくばかりが入っています。ごはんの量は適切で、野菜炒めもバランスのよい彩でお皿に乗っています。それだけに、肉じゃがの内容だけが片よりを大きく見せています。


 「知恵ちゃん。こんにゃく好きなの?お肉あげようか?」

 「好きだからいいよ」


 隣の席の女の子に心配されてしまいますが、知恵ちゃんは好きな食べ物も嫌いな食べ物も多くはないので、文句を言わずにこんにゃくを口へと運んでいます。そうして、こんにゃくにそまった口で、食後はデザートの冷凍りんごを溶かしながらなめていました。


 給食を食べ終わって休み時間になり、給食の片づけを終えた桜ちゃんと百合ちゃんが知恵ちゃんの席へとやってきました。いつもの通り、昨日のテレビ番組や、読んだマンガの話などを桜ちゃんがしています。その中で、ふと知恵ちゃんは星座占いの話を思い出して桜ちゃんに尋ねました。


 「桜ちゃん。占いって信じてる?」

 「雑誌に載ってるのをよく見るけども、当たったり当たらなかったりするよ。知恵は信じてるの?」

 「信じてない」

 「じゃあ、なんで占いの話をした……」


 知恵ちゃんが占いに対して自分で結論を出してしまったので、今度は桜ちゃんが別の占いを思い出しながら知恵ちゃんに質問をします。


 「血液型占いってあるでしょ?知恵って、O型じゃないの?それか、B型?」

 「A型だけど」

 「え……」


 桜ちゃんは血液型占いの傾向から、知恵ちゃんをO型か、でなければB型だと判断したようです。しかし、想定以上に予想が外れてしまった為、ちょっと自信なさそうな口調で話をしめくくりました。


 「占い……あんまり、あてにならないね」

 「そうだよ」


                                 その31の2へ続く


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