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その30の1『おるすばんの話』

 「知恵。お母さん、買い物して親戚の家に渡してくるものあるから、留守番しててもらっていい?」

 「いいよ」


 知恵ちゃんが学校から帰ってきてすぐ、お母さんは荷物をまとめながら知恵ちゃんに留守番を頼み始めました。知り合いの家に行くと言うと知恵ちゃんが買い物についてこないのは解っているので、聞くまでもなく知恵ちゃんはお留守番です。


 「じゃあ、行ってきます」

 「行ってらっしゃい」


 お母さんは玄関のカギを閉めると、自転車に乗って家から出かけていきます。電話が来ても出なくていいと言われているので、宿題をしようと考え知恵ちゃんは階段を上がり自分の部屋へと向かいました。


 「……?」


 知恵ちゃんが自分の部屋の窓から隣の家を見下ろすと、そちらでも亜理紗ちゃんのお母さんが何かの準備をしています。亜理紗ちゃんとお母さんが自転車の後ろに物を積み込んでいるのを見ている内、知恵ちゃんの視線に亜理紗ちゃんが気づいて手を振りました。


 「ちーちゃん!なにしてるの?」

 「おるすばん」

 「私も、今からお留守番」

 「あんまり大声で言わないの……」


 亜理紗ちゃんの家もお母さんが出かけるようで、お留守番の事実を声高に言わないようお母さんから注意されています。知恵ちゃんの家は犬のモモコがいますが、亜理紗ちゃんの家は本当に1人なので、誰かがやってくるとお母さんは心配なのです。


 「お母さん、早めに帰ってくるから。いい子にしてなさい。誰か来ても、開けなくていいからね」

 「わかった」


 亜理紗ちゃんを家に入れて、お母さんは戸締りを確認すると自転車で家を出発しました。その後、亜理紗ちゃんは家の2階へと上がり、オモチャのトランシーバーをガラス窓越しに知恵ちゃんへと見せます。知恵ちゃんも同じトランシーバーをおもちゃ箱から探し出し、スイッチを入れて口元へと当てました。


 『……ちーちゃん。きこえる?』

 「うん」

 『……もし、うちに悪い人がきたら、すぐ交番に電話してね』

 「悪い人って?」

 『……銀行強盗とか』

 「銀行じゃないのに?」


 それだけの短い会話をすると、知恵ちゃんの持っているトランシーバーは電池が切れてしまいました。トランシーバーから電池を取り出し、それを亜理紗ちゃんに見せてから知恵ちゃんは交換用の充電池を探しにリビングへと降りていきました。


 「どこだっけ……」


 どこに電池が入っていたか忘れてしまい、固定電話が置かれている台の下の引き出しなどを探っています。近頃、この辺りは事件が起きた話もなく、学校でも注意喚起の連絡などがないため、亜理紗ちゃんが言う悪い人が家に来る可能性は高くありません。でも、誰かと話していると落ち着くので、知恵ちゃんは電池を探し出すと、すぐにトランシーバーへ入れて通話を再開しました。


 「アリサちゃん。聞こえる」

 『ちょっと遠いけど、大丈夫……』

 「今のところ、何もない?」

 『平和……』


 そんな会話をしながら、知恵ちゃんがリビングを出ようとします。すると、なぜか開いたままになっていたトビラの隙間から、たぬきみたいな毛むくじゃらの姿をした小人が顔を出しました。知恵ちゃんがビクリとして足を止め、小人もビックリしたように黙ったまま知恵ちゃんを見つめています。


 「……」

 「……」

 「アリサちゃん!出た!」

 『何が?』


                               その30へ続く


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