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その29の2『破壊神の話』

 亜理紗ちゃんは背伸びをして、カレンダーに残ってしまったはがし残しを取り除きます。その後、はがしたカレンダーの紙で紙飛行機を作りますが、投げてみても左右の歪みが原因で期待通りには飛びません。はがしたカレンダーの紙は、もう一枚だけあります。


 「ちーちゃん、作ってほしいものある?」

 「……じゃあ、ゴミ箱」


 知恵ちゃんからのオーダーを受けて、亜理紗ちゃんはごみを入れておける卓上のゴミ箱を折り始めました。ただし、できあがったものは底が三角になっており、テーブルの上に置いても傾いてしまいます。知恵ちゃんはゴミ箱として使うのを諦め、それを亜理紗ちゃんの頭に被せました。


 「ボウシにしよう」

 「ボウシでいっか」


 紙のボウシを被ったまま、亜理紗ちゃんは壊せるものはないかと探しています。しかし、室内には壊してよさそうなものは見つからず、今度は窓の外へと目を向けます。知恵ちゃんと2人で窓から景色をながめていますが、そちらにも目ぼしいものはありません。


 「……ちーちゃん。なに、あれ」

 「どれ?」


 2人が室内へ視線を戻します。すると、テーブルの上には先程まではなかった、奇妙な物体が置かれていました。それはミカン箱ほども大きさがある、銅色をした四角い正方形で、キラキラとした質感を帯びています。あまりに異質なものが部屋に現われた為、知恵ちゃんはビックリした様子で息をのみ込みます。


 「……」


 そうっと亜理紗ちゃんが近づいてみますが、やっぱり四角形の物は動きもしなければ音も発しません。その時、知恵ちゃんは家から持ってきていた紫色の石が光っているのを知り、また変な世界から迷い込んできたものだと察します。


 「ちーちゃん。これ、さわっていいかな?」

 「あぶないんじゃないの?」


 知恵ちゃんの言葉を受けて、亜理紗ちゃんは学習机から三角定規を持ってきます。その先端で謎の物体をつついてみると、謎の物体は軽く触れた部分から小さなカケラとなり、パラパラと崩れ落ちました。


 「亜理紗ちゃん……なんで壊したの」

 「壊れたんだけど……」


 あまりにも呆気なく形を変えた謎の物体でしたが、その落ちたカケラを亜理紗ちゃんが拾い上げるより先に、カケラは自分から欠けた部分へと戻り修復を始めます。三角定規が汚れたり、熱くなっていないのを確認して、亜理紗ちゃんは謎の物体を右手でつかみました。


 「……!」


 さっきは発泡スチロールのように砕けた物体が、今度は亜理紗ちゃんが触れた部分からプリンにも似た触感ですくい取られます。銅色の物体が手からこぼれないよう保ちながら、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの元へと運んでいきました。


 「柔らかいの?」

 「すごい」


 亜理紗ちゃんが持っているゲル状のものを半分だけもらい、知恵ちゃんも謎の物体を手の中で揺らしてみます。謎の物体はキラキラと輝き、その中にも更に光の粒子が透けて見えます。それを2人で観察している内、亜理紗ちゃんが何気なく言いました。


 「茶色く光る金属のお豆腐」

 「……おいしくなさそう」


                                   

                         その29の3へ続く

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