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その6の1『石の話』

 「今日はハンバーグを食べに行きます」


 朝、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは一緒に学校へ行きます。その中で、亜理紗ちゃんが朝の挨拶の次に出した話題は、夜に外食するという内容のものでした。本日は木曜日でしたが、亜理紗ちゃんの家は金曜日や土曜日、日曜日にレストランが混み合うことを想定して、それ以外の日に外食をすることが幾らかありました。

 

 「宮さんのハンバーグです。たまご焼きハンバーグを食べるけど、ちーちゃんは、何が好き?」

 「宮さんのハンバーグを食べに行くと、いつもコーンスープ」


 宮さんと呼ばれているステーキレストランは大通りに面して立つチェーン店で、二人が通う小学校では名の知れたグルメスポットながら、正式な名称は浸透しておりません。知恵ちゃんは宮さんへ行くと、スープバーのコーンスープを必ず2杯以上は飲みました。


 亜理紗ちゃんの家で外食する際、知恵ちゃんも一緒に連れて行ってもらうことはありましたが、今日は知恵ちゃんの家にお母さんのお姉さんが訪ねてくるので、今日は一緒に行く事ができませんでした。


 「じゃあね。ちーちゃん」

 「うん。またね」


 いつものように学校では別のクラスに分かれ、いつものように放課後は亜理紗ちゃんが知恵ちゃんを迎えに来ます。そして、二人は普段と同じ通学路を通って、寄り道もなく家に帰ってきました。

 二人が知恵ちゃんの家の前でお別れをしていると、そこへ銀色の普通車がやってきて、亜理紗ちゃんの家の駐車スペースへ入っていきました。今日は亜理紗ちゃんのお父さんが朝早く家を出た分、早く帰宅する日でした。


 知恵ちゃんの家の玄関には女性用の茶色い革靴が光っていて、リビングからも知恵ちゃんのお母さんと、お母さんのお姉さんの声が聞こえてきます。知恵ちゃんは親戚にも人見知りをする方でしたが、お母さんのお姉さんとは半年に一度ほどは会う為、そこまで緊張せずに顔をあわせることができました。


 「おばちゃん。こんにちは」

 「知恵ちゃん。久しぶり。去年の暮れ以来だね」

 

 きちんとしたスーツ姿の女の人が、知恵ちゃんのお母さんと向かい合うように座っています。彼女は知恵ちゃんのお母さんとは一歳違いのお姉さんです。テーブルには大粒のチョコレートが置いてあって、それが入っている箱にはミミズを貼り付けたような見慣れない文字が書かれていました。


 「おばちゃんがお菓子かってきたから、先に手洗いしてきなさいね」

 「あんたに、おばちゃんって言われるの慣れないわ。お姉ちゃんにしてよ」

 

 おばちゃんとは呼ばれてはいますが、知恵ちゃんのお母さんの方が子育てをした分だけ大人びていて、お姉さんの方は大学生と名乗ってもばれない雰囲気を持っています。知恵ちゃんが手洗いうがいや着替えをして戻ると、おばちゃんは仕事で外国へ行った事、そこで会った人の事などを話し出してくれました。


 「そろそろ、お母さん買い物に行ってくるけど、知恵も来る?」

 「おばちゃんとお話ししてる」


 知恵ちゃんのお母さんは晩ご飯の買い物に出かけ、リビングには知恵ちゃんと、おばちゃんだけ。テレビでは夕方のニュースが放送されていますけども、それとは別におばちゃんは知恵ちゃんに質問を投げかけました。


 「あれ、まだ持ってる?」


                                    その6の2へ続く

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