その26の5『階段下、謎のトビラの話』
階段を降りた先にある青い光の中へと、亜理紗ちゃんの家と繋がっているドアが我先に歩いていきます。そのあとを追うようにして、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんも足元を確かめつつ慎重に進みました。
青い光の先には天井が見えなくらい縦長の部屋があり、壁は全て青いトビラの連なりでできてます。トビラとトビラの隙間には白い花が咲いており、天から降り注ぐ光を受けて左右に揺れていました。
「うわぁ、ドアばっかり」
「……でも、開かない」
亜理紗ちゃんが空まで続きそうな部屋の上側を仰いでいる横で、知恵ちゃんは壁についているドアの一つを引き開けようとしてみます。ですが、ドアノブは回ってもドアは開きません。他のトビラも試してみますが、壁についているトビラは一つとして開きません。
「上の方に歩けそうなところはあるけど……ちーちゃん、地図、見せて」
知恵ちゃんが持っているカメラの画面を2人でのぞきこみ、柱に刻まれていた模様を何度も目で追って確認します。その模様の中にも縦長の部分があり、その上の方には何かを示すように宝石がはまっていました。どうやって上に行くのか考えている2人の後ろで、平たいものが倒れたようなパタンという軽い音がしました。
「……ちーちゃん。またドア倒れてる」
「またなの?」
知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは一緒に歩いてきたドアが倒れているのを見つけ、それを持ちあげて助け起こそうとします。ですが、今回は持ち上げようとしてもドアが床にくっついていて離れません。そこで、亜理紗ちゃんはドアのノブを回し、倒れているドアを引き開けてみました。
「……あれ?ここ、どこ?」
「……アリサちゃん。どうしたの?」
倒れているドアの中を亜理紗ちゃんがのぞいています。そのドアの向こうには2人がいる部屋と同じような場所が広がっていて、どこか高い場所に繋がっているのが見えます。試しに亜理紗ちゃんがドアの中へと降りてみると、なぜか知恵ちゃんの頭上から亜理紗ちゃんの声が聞こえてきました。
「ちーちゃん!なんで下にいるの?」
「……?」
亜理紗ちゃんは倒れているドアの向こうにいるのですが、同時に知恵ちゃんの頭上にある足場の上にも亜理紗ちゃんがいます。置いていかれないよう亜理紗ちゃんに続いて、知恵ちゃんも倒れているドアに入ります。すると、亜理紗ちゃんが立っている場所と同じ場所に移動することができました。
「アリサちゃん。さっきのドアは?」
「あそこ」
足場に沿って付いている手すりの隙間から亜理紗ちゃんが下を指さし、そちらに知恵ちゃんは目を向けます。床に倒れているドアは下の方に残っていて、2人がくぐってきたドアと繋がっています。通り抜けてきたドアを亜理紗ちゃんが閉じると、今度は今さっき2人が出てきたドアが勝手に歩き出し、足場の先にある床へと倒れ込みました。それを見て、亜理紗ちゃんは勝手にドアに名前をつけました。
「ワープドアだ!」
「どこでも行けるやつ?」
「うん」
亜理紗ちゃんは倒れているドアを開く寸前、今いる場所よりも上にあるドアを見つめました。
開いたドアの中は亜理紗ちゃんが見つめた場所のドアと繋がっていて、これを続けていけば部屋の好きな場所へと行くことができます。また更に上の足場へと移動したのち、2人はカメラで撮った地図を見つめました。
「ちーちゃん!この上の方に宝石のついてる場所があるよ!」
「ほんとだ……」
何度かドアをくぐって上へと登っていき、次第に一番下の床へと倒れているドアは小さく見えなくなっていきます。そちらへ、亜理紗ちゃんが手を振ってお別れを言います。
「バイバイ。ドア」
その後も何度もドアを通り抜け、2人は部屋の天井が見える場所まで上がっていきました。そこには、他のトビラとは違う金属でできたトビラがあり、柱の模様の地図でいう宝石のついた場所と繋がっていることが解ります。大きなドアノブへと手をかけながら、亜理紗ちゃんが知恵ちゃんに尋ねます。
「ゴールかな」
「ゴールじゃない?」
ドアの向こうに何が待っているのか、2人で同時にドアを引っ張って開きます。まばゆい光が2人を包みます。ドアの向こう側にある薄ぼんやりとした景色が、次第に鮮明になっていきます。その中から誰かの声が聞こえてきました。
「……アリサ、どうしたの?」
「……あ、お母さん」
ドアを開いた先は亜理紗ちゃんんの家のリビングに繋がっていて、部屋の片付けをしている亜理紗ちゃんがお母さんが不思議そうに2人を見つめています。通ってきたドアを振り返ってみても、そこには家の廊下しかありません。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは借りていった冒険道具とエコバックを元あった場所へ戻し、食べ物と飲み物だけ持ってリビングを出ました。
「ちーちゃん。石は?」
「光ってない」
知恵ちゃんが階段下で紫の石を取り出してみますが、もうドアは姿を現しません。ドアを探すのを諦めて、2人は亜理紗ちゃんの部屋へと戻ろうとします。すると、そんな2人へ呼びかけるようにして、近くにある洗面所へ続くドアのノブがカチャリと勝手に動きました。それに気づき、2人は顔を見合わせました
その27へ続く






