その26の4『階段下、謎のトビラの話』
「もう、なんで転ぶの……」
「だって、ちーちゃん。この人、足ないし」
「人じゃないし……」
倒れているドアは見た目に反して軽く、亜理紗ちゃん1人でも簡単に助け起こせました。起き上がったドアは勝手に2人の先を歩き出し、影の中にある階段を飛び跳ねるように降りていきます。その遅い歩みにあわせて、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは灰色の玉が作り出した影の中へと足を踏み入れました。
しばらくは下りの階段が続いていましたが、そこから見渡す限りの四方八方、縦横斜めと様々な角度で階段が鎖のように張り巡らせれてあり、次第に亜理紗ちゃんも知恵ちゃんも自分が下りているのか上がっているのか混乱してきました。幾重にも重なっている階段の向こうには暗闇だけがあり、2人が入ってきた影の入り口を探すと、今は2人の立っている真下あたりにありました。
「ちーちゃん。道、あってる?」
「だって、分かれ道ないし……」
写真に映っている地図らしきものを見てみても、そもそも道に分岐がないので迷いようがありません。どこへ向かっているのかすら示されない道を上り下りしている内、前を歩いているドアの頭越しに知恵ちゃんは明るい青色の光を見つけました。
「あれ、出口じゃない?」
「ほんとだ!」
出口のようなものを見つけたまではよかったのですが、それからも階段が続くままに歩けども歩けども、どうしてか青い光の場所へは到達できません。あと少しでゴールとばかりに進んでいた2人でしたが、さすがに疲れて階段に座り込んでしまいます。
「ちーちゃん。ジュース飲む?」
「ジュースあるの?」
亜理紗ちゃんの肩にかけてあるエコバックには黄色い缶が入っていて、それは甘くて酸っぱいリンゴのジュースです。2人はジュースで喉を潤しながら、渦巻くように続いている階段の向こうで光っている出口らしきものをながめています。
「……アリサちゃん。あれ、動かなかった?」
「どれ?」
「あの青い光」
知恵ちゃんに言われて、亜理紗ちゃんも青い光を見つめます。周りにある階段の位置を目印にして、光が動いているのか確認します。すると、目の錯覚と勘違いしそうなくらい遅い動きで、青い光は徐々に右へと移動を始めました。
「あぁ、行っちゃう」
そう亜理紗ちゃんが言うと、出口らしき光は左へと戻ってきました。2人は不思議そうな顔でお互いの顔を見合わせました。
「アリサちゃん。呼んだらくるんじゃない?」
「呼んでみよう!おーい、こっち来て」
「こっち来て」
2人の呼びかけに引っ張られ、次第に青い光は大きくなっていきます。その後、ものの2分ほどで青い光は2人の目の前まで近づき、2人が座っている階段の先へと繋がりました。光の奥には自ずと発光するように輝く花や草木が見え、森にも似た場所が青みがかって映し出されています。
「やった!ちーちゃん!」
出口を呼び寄せることに成功し、2人は飲み終わったジュースの缶を振り上げました。光の先へ進もうと亜理紗ちゃんが立ち上がった際に後ろを見ると、2人が影の中へ入ってきた入り口も、知らぬ間に後ろに移動していました。
「……あれ、ちーちゃん。入り口も呼んだ?」
「多分、ちょっと戻りたくなった気持ちがバレた……」
その26の5へ続く






