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その26の2『階段下、謎のトビラの話』

 階段下にドアがあると知恵ちゃんは言いますが、亜理紗ちゃんは自分の家なのに見た覚えもありません。そこで、2人は部屋を出て階段の下を確かめに行きました。


 「どれ?」

 「……あれ?」


 階段の下、そのすぐ脇にあった扉は消えていて、今は壁紙に描いてある花模様だけが残っています。でも確かに見たとばかり、知恵ちゃんは壁に手をついて感触を確かめていました。


 「……ちーちゃん。それ、なに?」

 「……あっ」


 ポケットに入れている紫色の石が光っており、亜理紗ちゃんに指さされて知恵ちゃんは石を取り出しました。キーホルダーについている石に反応し、ゆっくりと壁には扉が映し出されました。


 「ちーちゃん。知らないドアだ!」

 「知らないドアなの?」


 階段下にある謎の扉を見つけ、亜理紗ちゃんは扉を横から見てみたり、壁伝いにドアの繋がっている先を探したりしています。不思議なドアとはいえ人の家のドアなので、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんが開けていいと言うまで待っています。


 「アリサちゃん……開ける?」

 「開くかな」


 特に躊躇いもなく亜理紗ちゃんがドアノブをひねって引くと、キィという甲高い音を立ててドアは簡単に開きました。ドアの先には下りの階段があり、壁で囲まれていない開けた階段は光の中へと繋がっています。


 「ちーちゃん。ちょっと待って」

 「なに?」

 「ちょっと、おやつ持ってくるから待ってて」


 すでに亜理紗ちゃんは探検の気持ちでいっぱいのようで、食料を確保すべくリビングへと走っていきます。数分後、ビスケットとジャムパンを持って亜理紗ちゃんは戻ってきたのですが、それ以外にもメモ帳やペン、懐中電灯なども用意していました。


 「じゃあ、私が隊長をやるから、ちーちゃんカメラマンね」

 「うん」

 

 ジャムパンを一つ知恵ちゃんに手渡し、亜理紗ちゃんはドアを開いて光の中へと進んでいきます。下り階段は色とりどりの段差でできていて、横へと手を伸ばすと見えない壁が両脇をふさいでいて落ちる心配はありません。階段を透かして見た下方には白い靄が立ち込めており、まるで雲の上を歩いているようです。


 「ちーちゃん隊員。あれ」

 「どれ?」


 階段を下っていくと、次第に石でできた門のようなものが現れました。その場所で階段は終わっていて、そこからは真っ白い床が広く続いています。2人は上部分が見えないくらいに大きな門を見上げ、それに触って石のザラザラとした質感をおぼえます。亜理紗ちゃんは門の表面にある凹凸を指先絵なぞり、その高いところにはまっている宝石を見つけました。


 「ちーちゃん。あそこにキラキラした石があるよ」

 「……」


 模様が施してあるのは門の一部だけで、それ以外はキズ一つないキレイな壁です。模様の形と宝石のある場所を何度も確認し、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんに自分の予想を伝えます。


 「……この模様、地図なんじゃない?」

 「じゃあ、あの石の場所に何かあるかな……ちーちゃん。これ、カメラで撮っておいてちょうだい」


 宝石が示している部屋まで行けば、何かがあるに違いない。そう理解したが今、亜理紗ちゃんは早く先に進もうとばかり足踏みを始めました。しかし、知恵ちゃんは今一つ乗り気ではありません。


 「戻れなくかもしれないから、止めておこう……」

 「ええ……」


 そう言って、知恵ちゃんは階段を上って帰ろうとします。すると、階段の上から何かがやってくるのに気づき、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと一緒に門の影に隠れました。階段を降りてきたのは2人が通ってきたドアで、足もないのに器用に走って階段を下り終えると、その場に直立して動作を止めました。

 そうっとドアに近づき、亜理紗ちゃんがノブを回してみます。開いたドアの向こうは、亜理紗ちゃんの家の階段の前に繋がっていました。


 「帰る?」

 「……」


 帰り道が後ろを勝手についてくると解り、知恵ちゃんは考え込むようにしてジャムパンを何気なく食べ始めました。


                                 その26の3へ続く


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