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その26の1『階段下、謎のトビラの話』

 「こんにちは」

 「あぁ、知恵ちゃん。こんにちは」


 ある日曜日の昼過ぎ、知恵ちゃんは約束通りに亜理紗ちゃんの家へと遊びに来ました。しかし、亜理紗ちゃんはお風呂に入っていて、まだ数分は出てきそうにありません。亜理紗ちゃんのお母さんの案内で家の廊下を歩き、知恵ちゃんは家の奥へと入れてもらいます。


 「あと少しで出てくると思うから、ちょっと待っててね」

 「はい」


 階段の前を通り、その先にあるリビングへと入ります。キレイに片付けられているリビングのイスに座り、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんのお母さんに飲み物をもらったりしています。


 「なんでアリサちゃん、お風呂に入ってるんですか?」

 「さっき、牛乳を服にこぼしたからね」


 こぼした牛乳の香りがする食卓で、知恵ちゃんはオレンジジュースを飲んでいます。その内、バスタオルで髪を拭きながら薄着の亜理紗ちゃんがやってきました。


 「ちーちゃん来てる!待った?」

 「さっき来た」

 「アリサ。部屋、片付けたの?」

 「片づけてある。ちーちゃん、行こう」


 2人はリビングを出て、亜理紗ちゃんの部屋へと向かいます。亜理紗ちゃんの髪からはシャンプーの香りが漂います。部屋へ行くと、亜理紗ちゃんはシャツの上にトレーナーを着て、濡れたバスタオルをハンガーにかけて干しました。


 「じゃあ、ちーちゃん。なにする?」

 「お父さんにカメラ借りてきたから、何か撮っていい?」

 「じゃあ、これ出そう」


 亜理紗ちゃんはダンボール箱の中から大きな家の形のオモチャを取り出し、オモチャに付属している動物の人形を置き始めました。オモチャの家は2階建てで、真ん中から真っ二つに開く作りとなっており、そこから見れば家の中が一望できます。


 「うさぎさんのお母さんと、うさぎさんの女の子をここに置く」

 「リスさんじゃないの?」


 亜理紗ちゃんはリスのお母さんと女の子をキッチンに置いて、料理をしているように位置をあわせます。知恵ちゃんは借りてきたデジタルカメラの映像をズームさせ、人形にレンズを近づけて写真を撮ります。知恵ちゃんが撮った写真を2人はカメラの画面で確認し、折角だからと亜理紗ちゃんは野菜の形の消しゴムを持ってきてキッチンに乗せました。


 「消しゴムあった!これも置きます」

 「大きすぎる……」


 うさぎのお母さんよりもナスの消しゴムの方が大きく、これでは料理になりません。もう少し良いサイズのものがないか亜理紗ちゃんは探しに行き、その間に知恵ちゃんはオモチャの家の細部をカメラで映していました。すると、2階の廊下の奥の方の壁に、何か解らないドアが描かれているのを見つけました。


 「アリサちゃん。このドア、なに?」

 「どれ?」


 亜理紗ちゃんは知恵ちゃんが指さした2階のドアを見つめ、ドアが描かれている部分の外壁を確かめてみます。しかし、オモチャの家の外側の壁にはドアはついていませんでしたし、ドアの先には部屋もありません。


 「玄関かな?」

 「2階なのに……」


 どう見ても不自然な位置に描いてあるドアなのですが、何かの部屋が省略されているのだろうとか、ベランダに出るドアなのだろうとか理由をつけて2人は納得しました。そんな中で、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの家のリビングに行く途中で見つけたドアを思い出します。


 「そういえば……アリサちゃんの家の階段の下のドアって、なんの部屋のドアなの?」

 「え?」

 「……え?」


 不意に亜理紗ちゃんから疑問を返され、知恵ちゃんも同じ声をそっくり返します。少し考える素振りを見せた後、またしても亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに疑問を投げかけました。


 「……そんなのあるの?」

 「亜理紗ちゃんの家なのに……」


 

                                 その26の2へ続く

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