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その25の3『嘘の話』

 その後も、ふと気づけば周囲に変化が見られるのですが、不思議な生き物は亜理紗ちゃんの前にしか現れません。ただ、でも今日の亜理紗ちゃんは嘘をつく日なので、その話が本当なのかすら知恵ちゃんには解りません。


 「アリサちゃん。ほんとうに何かいるの?」

 「いるんだけども」


 一通りの商品を見終わり、2人は商品をおばあさんのところへと持って行きます。結局、亜理紗ちゃんはチョコの香りの消しゴムを買うようで、丁度100円をわたしてお会計をしました。知恵ちゃんは普通の消しゴムと赤ペンを買い、500円玉を出してお釣りをもらいます。


 「はい。お釣り、300万円」

 「お……ありがとうございました」


 そう言っておばあさんに300円を返してもらいますが、知恵ちゃんは数字の大きさに驚いてしまって普通の返事をしていました。買い物を終えた2人はお店から出て、外のベンチで買ったものを交換しながら見つめています。知恵ちゃんは亜理紗ちゃんが買った消しゴムの香りをかいでみましたが、ややゴムのにおいが混じっているせいかチョコの香りを怪しいんでいます。


 「……これ、チョコ?」

 「これは……う~ん」


 買った本人すら少し自信がなさそうですが、どこか甘い香りのする消しゴムでした。買った証拠に赤いテープが貼ってある文房具をポケットへ入れると、2人はお店の前にあるオモチャのガチャガチャをながめました。


 「ちーちゃん。これ、たまこっぴ入ってるって」

 「なんか名前が違う……」


 液晶画面つきのオモチャが入っているとガチャガチャには描かれていますが、知恵ちゃんが知ってい有名なるオモチャとは少し違っていて、どうやら似た別のオモチャのようです。亜理紗ちゃんがガチャガチャの中を横からのぞいてみますが、すでに画面つきのオモチャは入っていない様子でした。


 お店の前から町の通りをながめてみると、小学生や中学生など色々な人が歩いていきます。その人たちの何人かは傘を持っており、でも空には雲一つ見当たりません。亜理紗ちゃんは軒下から出ると空を見上げ、何かを探すように目を細めながら知恵ちゃんへと言いました。


 「あ、雨だ」

 「雨?」

 

 知恵ちゃんも立ち上がって空を見てみます。ですが、体には一滴の水もつきませんでしたし、振ってくる雨粒も目には見えません。そんな2人の足元をネコが走り抜け、そのままお店の裏へと入っていきました。


 「ちーちゃん。雨が降る前に帰ろう」

 「うん」


 雨が降ったとしても走れば濡れずに済むのですが、2人は雨が降り出す前に家路をたどり始めました。家に到着したあとも一向に雨が降る気配はなく、知恵ちゃんは自宅の前で再び空を見上げました。


 「雨って……うそ?」

 「ほんとに降ってきたんだけど」


 亜理紗ちゃんは両腕を組んで雨を探しています。知恵ちゃんも、もう何が嘘で何が本当か解らなくなってしまい、その証拠を探すようにして一緒に雨を探しました。2人の気持ちに答えるようにして、次第に1つ……2つ……点々と、輝く太陽の光の中を通り抜ける水玉が見えました。


 「雨だ」

 「ほんとに降ってきた」


 みるみる間に雨粒は大きさを増し、すぐに屋根を叩くほどの大雨となりました。雨が本当だったことを見届けると、亜理紗ちゃんは手を振って隣の自分の家へと走っていきます。


 「すごい雨だ!じゃあ、帰るね!」

 「うん」


 亜理紗ちゃんが家に入っていくのを見つめ、知恵ちゃんも自分の家へと帰ります。丁度、知恵ちゃんのお母さんは買い物へ行く支度をしているところでした。

 

 「雨、降る予報だったっけ……知恵、ぬれなかった?」

 「うん。大丈夫」

 「お母さん、買い物に行ってくるから、留守番しててね」


 お母さんが知恵ちゃんと入れ替わりで家を出るのを見送り、知恵ちゃんは自分の部屋へ行きました。ランドセルの中からプリントを取り出し、夕食前に終わるよう早めに宿題を始めました。


 「あ……」


 早速、解答を間違えた場所があり、知恵ちゃんは買ってきた消しゴムを使ってみます。まだ白いままの消しゴムの角で、鉛筆で書いた文字をこすりました。しかし、とても文字が消えにくく、知恵ちゃんは困ったように首をかしげます。あんまり消えない消しゴムを指でいじりながら、知恵ちゃんは窓の外の雨をながめていました。



                             その26へ続く

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