その24の2『おかしな話』
カステラにつまようじを刺して食べながら、3人はゲームの準備を始めます。まず、一人ずつサイコロを振って、コマを進める順番を決めます。
「私が一番、数が小さい」
「ちーちゃんが最後で、百合ちゃんが2番。私が1番」
亜理紗ちゃんは3つのコマをスタート地点へと置くと、自分で最初にサイコロを転がしました。サイコロは7の目を出したので、亜理紗ちゃんは自分のコマを7つ進めます。その時、すぐに知恵ちゃんからストップがかかりました。
「……7?」
「ん?」
「なんでサイコロなのに7?おかしいよね?」
知恵ちゃんがサイコロの目を見てみます。それは6面サイコロなのに4の目がなく、代わりに7の数が書かれています。首をかしげている知恵ちゃんに、百合ちゃんが個人的な予想を告げます。
「不吉だから、4だけないんじゃないの?」
「え……4って不吉なの?」
「たぶん」
「……うちのお父さんの誕生日が」
「あっ……うちも」
「……うちもだ」
3人のお父さんの誕生日が全員、4月4日だった事実はさておき、亜理紗ちゃんは7つ進んだ先のフタをめくりました。そこにはお題が書かれており、それに失敗すると3つコマを戻さなくてはなりません。
「えっと……『次の番の人の悪いところを言う』だって』
「私?」
亜理紗ちゃんは百合ちゃんの悪いところを探そうと、じっくり顔から足先まで観察を始めました。その後、ちょっと迷いがちに答えを出します。
「百合ちゃんって……正直だよね。よく解んないけど」
「えぇ~、なんで?」
「アリサちゃん……それは悪いところなの?」
第三者として、知恵ちゃんが亜理紗ちゃんの回答を審議します。その結果は、すんなり5秒で発表されました。
「……アリサちゃん。3つ戻して」
「ひゃあ……」
正直なところは悪いところではないと判断され、亜理紗ちゃんは7つ進んで3つ戻る結果となりました。次に百合ちゃんがサイコロを振ります。5の目が出たので、スタート地点から5つ進んだ先、赤いマスにコマを置きました。
「私、赤いところにとまった」
「はい。オジャマカードです」
亜理紗ちゃんがカードの束を渡し、その中から一枚をもらいます。カードには『一回、休みにできる』と書かれていて、それを百合ちゃんは知恵ちゃんに渡しました。
「はい」
「なんで進んでる人じゃなくて私なの……」
「知恵ちゃんならいいかなって」
「おかしいでしょ……いいけど」
カードを受け取って一回休みになりつつも、知恵ちゃんは百合ちゃんにカードのことをぼやいています。
「アリサちゃんが4つも進んでるから、そっちに使えばいいんじゃないの?」
「でも、私。今は亜理紗ちゃんの家にオジャマしてるから、失礼ないようにしたかったの」
「えぇ?私、別にいいのに」
「そう?じゃあ次、アリサちゃんに使っていい?」
「いいよ」
次のオジャマカードの許可など出しつつ、亜理紗ちゃんがサイコロを振ります。今度は6の目が出たので、そこまでコマを進めてフタを開きます。
「一つ前の番の人のお願いを聞く……だって。一つ前……ちーちゃんだ!なにかある?お願いして?」
「お願い……」
知恵ちゃんは上目遣いでお願いを待っている亜理紗ちゃんから目をそらすと、百合ちゃんの方を見つめます。そして、そのまま亜理紗ちゃんにお願いしました。
「……アリサちゃん。さっき戻した分、3つ進めていいよ」
「えっ、なんで?」
「……いいから」
その24の3へ続く






