その24の1『おかしな話』
ある日の放課後、今日は亜理紗ちゃんの家に知恵ちゃんと百合ちゃんが遊びに来ています。百合ちゃんは知恵ちゃんと同じクラスの女の子で、亜理紗ちゃんの家に来たのは今日が初めてです。
「ユリちゃん。なにする?」
「なんでもいいよ」
「ちーちゃんは?」
「なんでもいい」
なんでもいい2人が集まってしまった為、亜理紗ちゃんは複数人で遊べるオモチャが入った箱を持ってきました。それは一見するとスゴロクのようですが、マスにはフタがされていて何が書いてあるのか隠されています。
「これやろう」
「いいよ~」
「アリサちゃん、こんなの持ってたの?」
「たぶん、お母さんの」
頻繁に亜理紗ちゃんの家へ来ている知恵ちゃんすら知らないオモチャが登場し、持ってきた亜理紗ちゃんも説明書を読み始めました。
「サイコロを振ってコマを動かします。コマが到着したマスのフタをめくって、中に書いてあるお題に失敗すると3マス戻されます……コマ?」
箱にはスゴロクのボードとカードしか入っておらず、コマになりそうなものは見当たりません。代わりとして、亜理紗ちゃんはケーキの形をした小さな消しゴムを持ってきました。
「じゃあ、これ使おう。赤いマスにとまると、オジャマカードがもらえます」
「おいしそう」
「あ、お菓子もらってこよう」
百合ちゃんがショートケーキの消しゴムを持ち上げていて、それを見た亜理紗ちゃんはお母さんが食べていいと言っていたお菓子を思い出しました。今日はお母さんが家を留守にしているので、知恵ちゃんと百合ちゃんも一緒にお菓子を取りに手伝いに行きます。
亜理紗ちゃんはクッキーの袋を開き、それを大きなお皿に流し込みます。そして、亜理紗ちゃんの家に常備してある丸い形のカステラを見せながら、お菓子の好き嫌いを百合ちゃんに聞いています。
「百合ちゃん。これ、食べれる?」
「これはなぁに?」
「ちーちゃん。これ、なに?」
「なにってなに……」
それは知恵ちゃんが亜理紗ちゃんの家に遊びに来ると、いつも亜理紗ちゃんのお母さんが出してくれるお菓子なのですが、知恵ちゃんも百合ちゃんも亜理紗ちゃんの家以外では見た覚えのないものでした。亜理紗ちゃんはお菓子の袋を確認しています。
「……すずカステラ」
「すず?」
「……これ、すずだったの?」
鈴というお菓子と結びつかない言葉を受け、いつももらっている知恵ちゃんも疑問を浮かべています。お菓子とジュースを持って亜理紗ちゃんの部屋へと戻り、3人はゲームはさておきお皿に乗っているカステラを見つめています。それは上半分が茶色く、下半分が白色で、見ようによっては鈴にも似ている形でした。
家では滅多に洋菓子を食べない百合ちゃんでもクッキーは知っていますが、すずカステラについては知識がなかったので、どんなお菓子なのか亜理紗ちゃんに質問します。
「これ、上の茶色いところはチョコなの?」
「チョコじゃあないよ」
「ついてる粉は?」
「おさとうみたいなもの」
「へぇ~」
淡々とした会話をした後、亜理紗ちゃんと百合ちゃんは鈴カステラを振ってみます。音はしませんが、まぶしてある砂糖が落ちます。知恵ちゃんは一足先にお菓子を食べながら、2人に注意したりしています。
「振っても音しないでしょ」
「……あ」
何かを思いついたように亜理紗ちゃんは一人で部屋を出ていき、つまようじを3本だけ持って戻ってきます。それをお菓子に刺すと、誰が聞くより先に自分で行動の答えを出しました。。
「たこ焼き」
「たこ焼きじゃないでしょ」
「知恵ちゃん。これは中にタコさんは入ってるの?」
「何も入ってない」
「だったら、焼きだよ~」
「……焼き?」
その24の2へ続く






