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その18の1『本の話』

 「アリサちゃん。宿題やってる?」

 「もう、たくさん終わってるよ」


 夏休みも終盤に差し掛かり、知恵ちゃんも亜理紗ちゃんも徐々に休み慣れしてきた頃でした。知恵ちゃんが亜理紗ちゃんの家のリビングでスイカを食べていると、ふとして知恵ちゃんは思い出したかのように宿題の話を始めます。というのも、知恵ちゃんは宿題を終わらせてしまったので、あとは亜理紗ちゃんの心配以外にすることがないからでした。


 「アリサちゃんは、あと何が終わってないの?」

 「ドリルの後ろの方と、本の感想文……」

 「読書感想文だ……」

 「マンガでもいいの?」

 「マンガはダメでしょ」


 知恵ちゃんの知る限り、亜理紗ちゃんの部屋に読書に使えそうな本は大してなくて、一度も開いていないのではないかと疑われているキレイな辞書が、一際の存在感を放っているくらいです。亜理紗ちゃんの食べているスイカはイヤに種が多くて、でも亜理紗ちゃんは種をかんで食べてしまうので出しません。


 「タネまで食べると、おへそから芽が出るって言うよ……」

 「……じゃあ、ちゃんと出す。ねぇ?ちーちゃん」

 「なに?」

 「ちーちゃん。なにを読んだの?」

 「私?」


 知恵ちゃんの口ぶりからして読書感想文は終わっていると見て、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの読んだ本について質問しました。ただ、本の名前を言っても絶対に亜理紗ちゃんは知らないと見て、知恵ちゃんは内容を思い出しながら説明を始めました。


 「ネコが……昔の日本を探検する話……」

 「面白そう!私も読みたい!」

 「読めるの?」

 「読みたいの」

 「じゃあ、あとで持ってくるね」


 亜理紗ちゃんが知恵ちゃんと同じ本を読みたいと言うので、スイカを食べ終わると知恵ちゃんは家から本を持ってきました。その本は表紙に猫のイラストが描かれていて、見た目だけは読みやすそうな雰囲気をかもし出しています。なので、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんから本を借りて読んでみることにしました。


 二日後、朝方に亜理紗ちゃんが知恵ちゃんの家へとやってきました。でも、その顔は本の感想を言いたそうな様子ではなく、どちらかといえば困ったようにマユをひそめた表情でした。


 「ダメだ……これは読めない。ちーちゃん、実は頭がよかった」

 「アリサちゃん。別に頭、悪くないでしょ……」

 「そうかもだけど、あんまり漢字は読みたくない……」


 知恵ちゃんの貸した本は亜理紗ちゃんには難し過ぎたので、二日間は読もうと頑張ったものの、あえなく持ち主へ返却となりました。ただ、このままでは亜理紗ちゃんの読書感想文が終わらないので、知恵ちゃんは別の本を亜理紗ちゃんに貸し出すことにしました。


 「読めそうな本、持ってくるね」

 「うん」


 知恵ちゃんは本棚に並んでいる本をざっと見つめると、男の子が不思議な世界を冒険するファンタジー小説を取り出しました。それはアニメの映画にもなっているものだったので、小学生の間では割と有名なものでした。


 「これでいい?」

 「あっ!これ知ってる!いいの?」

 「いいよ」

 「ありがたいありがたい」

 「……なんでネコの本の最後だけ読んだの?」


                                その18の2へ続く


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