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その17の3『コレクションの話』

 家の中には知恵ちゃんの好きなものは無いとみて、2人は家の外へと出ることにしました。今日は天気がよく、適度に雲が散っていて、空はマーブル模様になっています。家の周りを歩いてみると、枯れ葉や松ぼっくりが道の脇に落ちていました。松ぼっくりを一つ持ち上げると、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに放ってパスしました。


 「こういうの、リンリンが集めてなかった?」

 「虫が入ってそうだからいい……」

 

 いつか、ひろった木の実から虫らしきものが出てきたのを思い出し、知恵ちゃんは松ぼっくりを亜理紗ちゃんに投げ返しました。2人は亜理紗ちゃんの家の庭先へと移動し、秋になって咲いたピンク色の花を見物しています。


 「ちーちゃんは、なんで、お金あつめてるの?欲しいものあるの?」

 「う~ん……別にない」

 「お金が好きなの?」

 「ないとプレゼントとか買えないし……」

 「……あ、腕時計」


 そう言われて、亜理紗ちゃんはポケットから腕時計を取り出しました。それは亜理紗ちゃんの誕生日に知恵ちゃんがあげたものでしたが、なぜか腕にはつけていませんでした。


 「なんでポケットに入ってるの?」

 「なんか、うまくつけれない……」

 「貸して」


 知恵ちゃんは腕時計を亜理紗ちゃんの左腕に巻き付け、外れないようにベルトを固定しました。亜理紗ちゃんはつけてもらった腕時計の位置をなおしながら、秒針の針が動いていることを確認しています。


 「ちーちゃん。ありがとう」

 「……クツのひもも取れてるけど」

 「これはできる……」


 さすがにクツのヒモは自分で結べると、亜理紗ちゃんは自分で蝶々結びを作ります。亜理紗ちゃんが結んだヒモは不格好で、でもガッチリと結ばれていて簡単には取れそうにありませんでした。


 「そうだ。ちーちゃん。モモコのとこ行こう。中にいる?」

 「モモコは散歩のとき以外は、だいたい中にいる」


 知恵ちゃんの家の玄関を開くと、プードルのモモコが家の中から走ってきました。いつも家にいる知恵ちゃんよりも、たまにくる亜理紗ちゃんの方にモモコは懐いているので、知恵ちゃんが一人で帰ってきてもモモコは走ってきません。しかし、あまり構わないだけで嫌われているわけでもありませんでした。


 「わぁ。モモコきた」


 亜理紗ちゃんがモモコにペロペロと舐められていて、それでいてモモコはプードルの中でも大きめの犬種なので、のしかかられている亜理紗ちゃんが少し重そうにしています。その内、亜理紗ちゃんはモモコをひかえさせると、急に思い出したかのように自分の家へと戻ってしまいました。

 

 「ちょっと待っててね」


 その後、3分くらいして亜理紗ちゃんが戻ってくると、その手にはデジタルカメラが握られていました。


 「ちーちゃん。モモコの写真を集めよう」

 「うん」

 「撮って」

 「私が撮るの?」


 カメラの使い方を亜理紗ちゃんに教えてもらい、知恵ちゃんは試しに何枚かモモコの写真を撮ってみました。カメラが手振れをおさえてくれるせいか、初めて撮ったわりには綺麗に撮影できて知恵ちゃんも驚いていました。


 「私がポーズとらすから、ちーちゃんは写真を撮ってね」

 「うん」


 その後、亜理紗ちゃんがモモコを触りながらポーズをとらせ、言われるがままに撮り続ける内に100枚くらい写真を撮りました。知恵ちゃんはモモコを可愛く撮ろうと頑張っていましたが、どうしてもモモコを支えている亜理紗ちゃんの方が前にいるので大きく映っていまいます。


 「ちーちゃん。楽しかった?」

 「……ちょっと楽しかった」

 「何個か選んだら、お父さんに印刷してもらうけど」

 「いいの?」

 「たぶん、大丈夫」


 印刷してプレゼントできるかもしれないと亜理紗ちゃんが言うので、知恵ちゃんは好きな写真を幾つか選んで教えました。撮影会をしている間に空は薄暗くなっていて、亜理紗ちゃんの家にはお父さんの車が帰ってきました。


 「お父さんだ。じゃあ、またカメラ持ってくるね」

 「うん……ありがとう」


 家を探しても外を探しても見つからなかった知恵ちゃんの趣味が、ようやく亜理紗ちゃんのおかげで見つかりました。知恵ちゃんもモモコを連れてリビングへ行くと、使っていないカメラがないかお母さんに尋ねていました。


                                  その18へ続く


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