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その17の1『コレクションの話』


 「アリサちゃん。これある?」

 「これない!」


 ある日の放課後、知恵ちゃんはペットボトルのキャップを持って、亜理紗ちゃんの家の玄関先にやってきていました。亜理紗ちゃんはキャップを集めるのが好きなので、彼女が持っていなさそうなものを見つけては知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの家に持ってくるのです。


 「……そうだ。ちーちゃん。コレクション、見る?」

 「いい……」

 「見て。ちーちゃんだけに見せるから」


 なかば強引にコレクションを見せられる事となり、2人は亜理紗ちゃんの部屋へと移動しました。ペットボトルのキャップはクッキーが入っていた大きな缶に収められていて、すでにコレクションの缶は二つ目に突入しています。


 知恵ちゃんが亜理紗ちゃんに渡したものはオレンジジュースのペットボトルキャップだったのですが、そこには青い犬のようなキャラクターの顔が描かれています。しかし、似たような絵がついたものは缶の中にいくつも入っていて、それらを探し出しながら亜理紗ちゃんは、ゆかに並べ始めました。


 「アリサちゃん。もう持ってるじゃん……」

 「や、ちょっとずつ顔がチガウ」


 そう言われて知恵ちゃんが目をこらすと、確かに描かれているキャラクターの表情は様々あります。今日、知恵ちゃんがあげたものは無表情なものでしたが、その表情のキャップは缶の中にはありませんでした。


 「ちーちゃん」

 「なんですか」

 「うわさだと、あとニヤニヤしてるのがあるらしい」

 「持ってないの?」

 「見たことない」

 「欲しいの?」

 「ほしい」


 集めることには協力しているものの、知恵ちゃんにはペットボトルのキャップの魅力が解らないようです。そのため、ひかえめながらも失礼を覚悟した声で質問しました。


 「……いつか捨てるのに、そんなに集めるの?」

 「あ……レアなの見せてあげる」


 明らかに聞こえてはいるのですが、それよりも亜理紗ちゃんはキャップを見せたくて仕方がありません。亜理紗ちゃんはウキウキした仕草で、缶の中からキラキラした金色のキャップを取り出しました。


 「見て。金色のやつ」

 「ジンジャーエールのやつじゃん……別にレアじゃないよ」

 「金色なのに……」


 お互いにレアの意味合いが違っていることに気づかないまま、2人は金色のペットボトルのキャップを見下ろしています。そして、知恵ちゃんは再び亜理紗ちゃんに聞きました。


 「そんなに集めて、いつまでとっておくの?」

 「いつまでもとっておく」

 「捨てないの?」

 「捨てない」


 いつもは割と分かり合っている2人ですが、ここでは互いに理解できないとばかりに首をかしげています。そんな知恵ちゃんの素っ気ない態度に怒るでもなく、亜理紗ちゃんは何か思いついた様子で顔を上げました。


 「じゃあ、ちーちゃんが集めたいもの、探そう」

 「あるかな?」

 「あるかも」


 物への執着がない知恵ちゃんのために、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんが欲しいものを探してあげると言いました。そして、学習机の中からビンに入った何かを取り出しました。


 「鉛筆のけずりカス、集めたんだけど……いる?」

 「……いらない」


                            その17の2へ続く


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