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その100の2『友達の話』

 亜理紗ちゃんが生き物を描くと、あらゆる生き物が謎の怪獣アリサウルスになってしまいます。なので、次のページでは背景と生き物を描く係を交代して、知恵ちゃんが生き物の絵を手掛けていきます。


 「なにを描くの?」

 「私、にゃむにゃむさん描く」


 にゃむにゃむさんというのは、見知らぬ街で買い物をしていた、ネコのおじいさんです。知恵ちゃんは、にゃむにゃむさんの毛の色を思い出しながら、茶色の鉛筆で白い絵日記帳を塗っていきます。その横で、亜理紗ちゃんは小さな家の連なる街並みを描いていきます。


 「ええと……あとは」


 知恵ちゃんは茶色い毛に白髪も描き加えて、葉っぱで作った服も着せていきます。建物の絵を描くのに集中していた亜理紗ちゃんが、少し手を止めて知恵ちゃんの絵へと目を向けました。


 「……ちーちゃん。また木を描いてるの?」

 「にゃむにゃむさんなんだけど……」


 知恵ちゃんの絵には茶色のカタマリと緑色の服が描いてあり、亜理紗ちゃんの描いた家々との遠近感も整っていないので、パッと見ると家と同じ大きさの木が立っているようにも見えます。それでも、引き車や、それに乗っているお魚を描いていくにつれて、絵の中にいるのが何者なのかくらいは判別がつくようになりました。


 「ちーちゃんに、にゃむにゃむさんは難し過ぎたと思う……」

 「じゃあ、なまけものさんを描く」

 

 知恵ちゃんは絵が得意ではないので、茶色や緑の鉛筆を使うと木や森を描いているようにしか見えなくなります。そこで、白くてもこもこした生き物を描くと決め、絵日記帳を次のページへと進めました。ただ、亜理紗ちゃんはなまけものさんが誰だったのか、いまいち思い出せていません。


 「……なまけものさんって、どんな人だっけ?」

 「自分でごはんを食べるのも面倒にしてた、白くて大きいの」

 「思い出した」


 なまけものさんは木に寄りかかって木の実を食べたそうに見上げていた、白くて丸くてもこもこの生き物です。それを思い出すと、亜理紗ちゃんは木や果物の輪郭を鉛筆で形作り始めました。


 「……アリサちゃん。白い鉛筆ってある?」

 「ノートが白いから、持ってきてない」


 亜理紗ちゃんの筆箱に白い色鉛筆は入っておりませんでしたし、そもそも白いノートを白く塗る必要はありません。すると、白いノートに白い生き物を描く方法が解らず、知恵ちゃんは仕方なさそうに薄い青色の鉛筆を手に取ります。

 

 「待って。ちーちゃん。それで何をぬるの?」

 「なまけものさん」

 「水色でぬったら、空の色とかぶる……」

 「だったら緑にする」

 「木の葉っぱと色がかぶる……」


 亜理紗ちゃんに苦言を呈され、仕方なくピンク色の色鉛筆を手に取ります。でも、それも違うという亜理紗ちゃんからの視線を受けて、ひとまず背景が描き終わるまで待機することにしました。


 「……」


 ひまそうに部屋を見回している内、知恵ちゃんの視線はカバンについている紫色の石に止まりました。学習机に置いたカバンからキーホルダーをはずして、紫の石だけを持ってテーブルの前に座り直します。


 「アリサちゃん。私たちが変な場所に行くようになったのって、これが来てからだよね」

 「たまに光ってるから、そうだと思う」

 「これ、なんなんだろう……」


 知恵ちゃんがテーブルに石を置き、その手のひらにのるくらいの小さな石へ、亜理紗ちゃんも絵を描く手を止めて意識を向けます。すると、また石は柔らかな光を発し、知恵ちゃんの家のクローゼットも同じく紫色に輝き始めました。


 「あっ……ちーちゃん。あそこ、光ってる」

 「ほんとだ」


 知恵ちゃんは立ち上がり、クローゼットの戸に手を押しつけます。でも、自分で開く勇気が出なかったので、そのまま亜理紗ちゃんへと顔を向けました。亜理紗ちゃんは怪しく輝くクローゼットをながめながらも、絵日記帳の前から動かずに知恵ちゃんを呼び止めました。


 「もうちょっとで木が描き終わるから、ちょっと待って」

 「……うん」


 亜理紗ちゃんから待ったがかかったので、石とクローゼットの様子を気にしつつ、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの横へと戻ってきました。


その100の3へ続く

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