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その15の2『水の話』

 亜理紗ちゃんと凛ちゃんがゲームを取りに行っている間、知恵ちゃんは自分の部屋へ行ってゲーム機を探し出し、しばらく遊んでいなかったゲーム機を充電し始めました。知恵ちゃんのゲーム機は亜理紗ちゃんの持っているゲーム機より少し古くて、お父さんが遊んでいたものをもらったものでした。


 「知恵、昼に行ってた通り、亜理紗ちゃん来るの?」

 「今から来るって」

 「……ちょっとリビングから洗濯物みえるから、そのまま部屋に行ってね」

 「うん」


 早めに知恵ちゃんが家に帰ってきた為、これからどうするのかとお母さんが聞いています。それに答えると、知恵ちゃんは一人で洗面所に行き、手洗いとうがいを済ませました。そして、コップを置いて洗面所の鏡を見つめると、知恵ちゃんは何か聞こえたような素振りで、後ろにあるお風呂場をのぞきこみました。


 「……?」


 バスタブには水が張られていますが、8割がたフタが閉まっているので少ししか水面は見えておりません。お風呂場から短く甲高い音が聞こえた気がして、知恵ちゃんは不思議に思って戸を開きました。しかし、窓は閉まっていて鍵も掛かっています。


 しばらくお風呂場を見つめるも、先程の鳴き声のような音は聞こえてきませんでした。自分の勘違いかと考え、知恵ちゃんがお風呂場の戸を閉めようとします。すると、今度はお風呂の水が大きく揺れました。


 そこへ、玄関の方からインターホンの音が聞こえてきました。知恵ちゃんのお母さんと亜理紗ちゃんの声がします。お風呂のフタを開けようとしていた知恵ちゃんは思い直し、急いで玄関の方へ歩き出しました。


 「あ、ちーちゃん。ゲームあった?」

 「今、電気を充電してる」

 「お菓子、持って行ってあげるから、部屋で遊んでてね」

  

 知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは知恵ちゃんのお母さんにうながされ、2階にある知恵ちゃんの部屋へと向かいます。亜理紗ちゃんは持ってきたカバンからゲーム機と人形を取り出し、知恵ちゃんの部屋のガラステーブルに人形を3つ並べました。それはゲーム機にかざすと認識する人形なのですが、知恵ちゃんのゲーム機は古いので読み取ることができません。


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは2人でベッドに横になり、それぞれの画面を見ながら何かを確認し合うように会話をしています。亜理紗ちゃんのゲーム機の画像は少しキレイですが、一方で知恵ちゃんのゲーム機の画像は少しボソボソしています。


 「ちーちゃん。どうぶつタウンにウサきちいる?」

 「それ、こっちの古いのには、まだいなかったやつだ……」

 

 そう言いつつ、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの持ってきたウサきちの人形をジッと見つめ、おもむろに持ち上げると仰向けに倒して置きました。さながら、ガラスのテーブルに倒れた人形は、水に浮かんでいるようにも見えます。

 

 「お菓子、持ってきたから食べてね」

 「あ……ちーちゃんのお母さん。トイレ借りていい?」

 「どうぞ」


 お菓子とジュースの乗ったお盆をテーブルに置くと、知恵ちゃんのお母さんは亜理紗ちゃんと一緒に部屋から出ていきました。ちょっとすると部屋には亜理紗ちゃんだけが戻ってきて、また知恵ちゃんの横に寝転がりながらゲームを始めました。


 「ねぇ。ちーちゃん」

 「……なに?」


 どこか冗談めかしているような、何か期待しているような声で、亜理紗ちゃんはゲームをしながら知恵ちゃんに尋ねました。


 「なんか……ちーちゃんの家って、お風呂でイルカ飼ってる?」

 「飼ってない……」

 

 その返答を聞くと、今度は亜理紗ちゃんがテーブルの上にあるイルカのような人形を手に取り、ウサきちと並べて寝かせて置きました。せっかくなので、残った猫の人形も、知恵ちゃんが同じく横にしてテーブルに置きます。どこか、3つの人形は気持ちよさそうに川の字で横たわっています。


 「……アリサちゃん。私、ちょっと見て来る」

 「あっ。じゃあ、私も、ちーちゃんと行く!」

 「アリサちゃんはお風呂場に入っちゃダメ……」

 「なんで?」

 「洗面所に私の下着があったから……」

 「……うん」


 そこで、知恵ちゃんがお風呂場を偵察に行き、亜理紗ちゃんは廊下で待っている事となりました。


                                 その15の3へ続く


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