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その98の1『かくれんぼの話』

 「じゃあ、鬼はちーちゃんです。100数えたら、探してください。おねがいします」

 「はい」


 学校が終わり、知恵ちゃんたちは近所の公園へ集まって遊んでいました。じゃんけんの結果、知恵ちゃんがかくれんぼの鬼となったので、100数えてからみんなを探すようにと亜理紗ちゃんから言われます。


 「1……2……3……」


 目を閉じて、顔を手でおおって、知恵ちゃんがカウントを始めます。みんなの足音が遠ざかっていき、段々と自分の声に気持ちが集中していきます。50を超えたあたりからは声に出して数えるのが面倒になってきて、知恵ちゃんは心の中で数えながらも、口では適当に歌っていました。


 「うんうんうん……100」

 「もういいよー!」


 100数えると同時に亜理紗ちゃんの声が聞こえ、知恵ちゃんはパッと目を開きました。ここは噴水のある広い公園で、みんなで集まって遊ぶ時などには、ここへ来ることが多々ありました。知恵ちゃんは一切の迷いなく花壇の方へと向かい、その後ろをのぞき込みます。


 「アリサちゃん。見つけた」

 「……こんなに早く見つかるなんて」


 あっという間に発見され、亜理紗ちゃんは悔しそうに立ち上がりました。残りは百合ちゃんと桜ちゃんと凛ちゃんです。みんなを探しに向かおうとする知恵ちゃんの横で、亜理紗ちゃんはキョロキョロしつつ後ずさっています。


 「……アリサちゃん。どこ行くの?」

 「……」


 逃げるより早く見つかってしまい、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの近くへと戻ってきました。なぜ逃げようとしたのかと、疑問の表情をしている知恵ちゃんへ、亜理紗ちゃんがルール説明を補足します。


 「見つかっても、気づかれないように隠れなおせばセーフ」

 「え……そんなルールなの?」

 

 亜理紗ちゃんしか知らない特殊ルールが発動し、だからと言って亜理紗ちゃんを見つけることなど知恵ちゃんには容易いので、あまり動じるところはありません。知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと手を繋いで、ぎゅっとして肩を寄せました。

 

 「もう、逃げられれなくなっちゃったね」

 「つかまったか……」


 知恵ちゃんにとらわれてしまったので、亜理紗ちゃんも観念して一緒に友達を探すことにしました。とはいえ、公園自体は大して広くはなく、隠れる場所もたかが知れています。きっと、すぐに見つかるだろうと歩き回っているのですが、意外と一人も見つからずに困惑してしまいます。


 「あ……見つけた」

 「……う~ん。見つかった」


 木の裏の辺りに人の気配を察知し、知恵ちゃんが指さしながらに呼びかけます。すると、知らない小さな女の子が、いそいそと出てきました。


 「……すみません。人違いでした」

 「もう……勝手に見つけないで」


 小さな女の子は知恵ちゃんに注意しつつ、また木の後ろに身を隠しました。それからも知らない女の子は何人か見つけたのですが、桜ちゃんたちは1人も見つかりません。もう公園に探す場所もなくなってしまい、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと顔を見合わせました。


 「そういえば……かくれんぼの場所って、どこまでなんだっけ?」

 「……家には帰らないようにとは言った」

 「……」


 亜理紗ちゃんから漠然としたルールを聞かされ、のっそりとした動きで知恵ちゃんは近くのベンチに腰かけました。亜理紗ちゃんも横に座ります。ここは高い木が生えていて、その木陰は居心地がよさそうです。あくびが出てしまいます。涙をこすりながら、知恵ちゃんはつぶやきました。


 「私には無理だよ……見つけられない」

 「ちーちゃん……がんばろう」


その98の2へ続く

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