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その15の1『水の話』

 深夜から朝方にかけて雨が降り、地面には水たまりが広がっています。今日は日曜日ということで学校が休みなので、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは凛ちゃんの誘いで少し大きな公園へと遊びに来ていました。

 

 「チエきち!時計ある?」

 「時計ないよ」

 「私はつけてる」


 本当は凛ちゃんは自分の腕時計を自慢しかったのですが、亜理紗ちゃんが時計をつけていた為に出すタイミングを逃してしまいました。時計の針は午後の3時より少し前を指していて、あと数分もすれば短い針は3時を指し示します。水の出ていない枯れた噴水の前に立って、凛ちゃんは知恵ちゃんと亜理紗ちゃんに説明を始めました。


 「ここの噴水、3時になると水が出てくるから見てて」

 「ここ、水が出てるの見た事ない。そうなんだ!」

 

 知恵ちゃんは3時に噴水から水が出ることを知っていましたが、亜理紗ちゃんは知らなかったので、真面目に感心した様子で腕を組んでいました。そんな話をしている内にも時計は3時を回っており、凛ちゃんは水が出てくるのを今かと待ち構えています。しかし、なかなか噴水から水は噴き出してきません。


 「りんりん。今日って噴水も休みなの?」

 「そんなことないし……」

 「水が出るまで、ちょっと時間がかかるんでしょ?」

 「そうそう!チエきちの言う通り!」


 そう言いながら凛ちゃんが知恵ちゃんの方を振り向くと、そのタイミングで噴水からは徐々に水が噴き出し始めました。これを見せたいが為に凛ちゃんは2人を呼んだ訳で、ちゃんと水が出てきた事に本人は安心した表情をしていました。噴水の水はテッペンからドーム状に広がり、周りには涼しげなしぶきを散らしています。

 凛ちゃんと知恵ちゃんは噴水にかかった虹をながめているのですが、亜理紗ちゃんだけ噴水の下に溜まっている水をのぞきこんでいます。そして、何気ない口調で知恵ちゃんに問いかけました。


 「のどかわいたんだけど……これ、飲んでもいいの?」

 「やめておいた方がいいよ……アリサちゃん」

 「そうそう!噴水の水なんか飲んだら、お腹が痛くなるからね!」

 「そうなの?」


 そう凛ちゃんは言いますが、亜理紗ちゃんが見ている噴水の下に溜まった水は澄んで透明で、水道から出てくるものと違いが見て取れません。やや考え込むように亜理紗ちゃんは噴水から離れると、綺麗な水たまりの水を見てから再び凛ちゃんに聞きました。


 「蛇口の水と、何が違うんだろう……茶色くないし。う~ん」

 「噴水だって、いっつも洗ってるんじゃないんだから、中に見えない生き物がいるの」

 「なにかいるの?」

 「そうよ!」


 凛ちゃんの言い分を受けて、また亜理紗ちゃんはまじまじと噴水の水を見つめています。でも、やっぱり何も見えなかったようで、見えない生き物を探すのを諦めたのち、凛ちゃんの水筒からお茶をもらって飲んでいました。噴水は15分ほどで水が止まったので、3人は公園帰りに駄菓子屋へ寄ってから知恵ちゃんの家の前までやってきました。


 「私、ちーちゃんの家でゲームするけど」

 「えっ?チエきちん家で遊ぶの?」

 「佐藤さん、どうぶつタウン持ってる?」

 「やった!私、家から持ってくる!」


 知恵ちゃんの家で遊ぶと決まり、みんなはゲームを取りに家へ帰ることとなりました。凛ちゃんの家は知恵ちゃんの家から少し離れているので、戻ってくるまで10分ほどかかります。頑張って走り去っていった凛ちゃんを見送ると、亜理紗ちゃんも隣にある自分の家へと向かいました。


 「すぐ行くから。ちーちゃん、ちょっと家で待っててね」

 「うん」


                               その15の2へ続く

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