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その2の2『雨の話』

 今日は町に雨が降っています。天気予報は予報なので、実際の天気とは違う場合があります。その為、亜理紗ちゃんも知恵ちゃんも、学校へ傘を持って来てはいませんでした。

 

 「どうしよう……亜理紗ちゃん」

 「ちーちゃん!走れば濡れないかもしれない!」


 亜理紗ちゃんは雨からランドセルを守るように抱えて、水浸しの道へと飛び出しました。早く行こうとばかりに亜理紗ちゃんが雨の中で待っていて、置いていかれないように知恵ちゃんも走り出しました。

 2人の家は学校から遠くはありませんが、走っていく中で雨足は強まりつつあり、家へ到着する頃にはランドセルに雨粒が流れていました。家の前で短く別れを告げると、それぞれが自分の家へと駆けこみます。

 

 「傘、持って行かなかったの?お風呂、洗ってあるから入りなさい」

 「うん」

 

 知恵ちゃんのお母さんが湯船に湯を溜めてくれて、それを待ちながら知恵ちゃんはシャワーを浴びました。その内、蛇口から流れ出たお湯はバスタブの3分の1程まで溜まり、知恵ちゃんはお腹の辺りまで体をお湯に浸すことができました。


 「ちーちゃん!一緒に入りに来たよ!」

 「あ……亜理紗ちゃん」

 「お風呂場に洗濯が干してあったから、ちーちゃんの家に来た!」

 

 脱衣所から亜理紗ちゃんの声が聞こえ、髪を濡らしたままの亜理紗ちゃんがお風呂場に現れました。大きな洗濯物が亜理紗ちゃんの家のお風呂場に避難していて、それを見た亜理紗ちゃんが勝手に知恵ちゃんの家へ来てしまったのです。知恵ちゃんの使っている石鹸をかりて体を洗うと、亜理紗ちゃんも溜まったお湯に足をつけました。


 「ちーちゃんと一緒に入ると、お湯が増えるよ」

 「本当だ」


 知恵ちゃんの家のお風呂は特別な大きさではありませんが、小学生が2人で入るには十分な広さです。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんが向かい合ってお湯に入ると、胸の辺りまでお湯の高さが上がりました。


 「……」

 「ちーちゃん。どうしたの?」

 「うん……新しい傘を買ったけど、今日は使えなかったから」


 知恵ちゃんの家の玄関には、まだ使っていない赤い水玉模様の傘と、ピンク色の長靴があります。どちらも曇り一つなくピカピカで、知恵ちゃんは雨が降るのを楽しみにしていたのです。


 「……そうだ。ちーちゃん。あとで出かけよう」

 「こんな雨なのに?」

 「ちーちゃんの傘に入りたい。あの石も持って、雨の探検だよ!」

 「……ありがとう。亜理紗ちゃん」

 

 こうして2人は雨空の下、家の周りを探検することにしました。知恵ちゃんは濡れていない私服に着替えると、勉強机から紫色の石を取り出し、お母さんに家へと連れ戻された亜理紗ちゃんを迎えに行きます。

 新しい傘の水をはじく音、底の減っていない長くつの感触を確かめながら、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんを玄関口の前で待ちました。


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