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その85の1『五七五の話』

 「ちーちゃん。ちょっといい?」

 「……」


 給食の時間が終わった後の昼休み、亜理紗ちゃんが知恵ちゃんたちのクラスにやってきました。他のクラスに闇雲に入ってはいけないという暗黙のルールを気にして、亜理紗ちゃんはドアの外から知恵ちゃんを呼んでいます。


 「……どうしたの?」

 「今日の国語の授業で、面白い遊びを考えたから、こっちでもやろうと思って」

 「国語の授業?」


 まだ知恵ちゃんは、今日は国語の授業を受けていないので、どのような遊びを思いついたのかは想像もつきません。珍しく亜理紗ちゃんが来ているのを見て、友達の桜ちゃんと百合ちゃんもやってきました。


 「アリサ。教科書、忘れたの?」

 「あ、さくピー。そういえば……算数の教科書も忘れたんだけど、それじゃなくて」

 「それじゃないんだ……」

 「七五三ゲームっていうのをやろうと思って」


 桜ちゃんが言う通り、亜理紗ちゃんは算数の教科書を忘れてきたのですが、それは今は問題ではありません。ただ、七五三ゲームと聞いても、どのような遊びなのかはまだ伝わりません。折角なのでと、亜理紗ちゃんは凛ちゃんも呼びます。


 「りんりん、今ヒマ?」

 「え?なになに?私、いつでもヒマよ」


 窓際でたそがれていた凛ちゃんも呼び、5人で七五三ゲームをすることにします。最近、凛ちゃんは亜理紗ちゃんと普通に仲が良くて、たまに2人で会っているのも見かけます。それが知恵ちゃんは、やや気になったりしています。少しやきもちを見せつつも、知恵ちゃんはゲームの方のお話を進めます。


 「アリサちゃん。どんなゲームするの?」

 「そうそう。国語の時間にね。俳句っていうのを聞いたんだけど、七五三でしゃべるんだ」

 「……?」

 「アリサちゃん。俳句だったら、五七五ゲームじゃないの?」


 百合ちゃんから的確な指摘が入り、ゲーム名もあえなく修正となりました。


 「五七五ゲームだった。五七五ゲームは、五七五でしゃべるゲームです」

 「……?」


 百合ちゃんと桜ちゃんは大体、概要を理解したようですが、知恵ちゃんと凛ちゃんは頭を悩ませています。そこで、まずは亜理紗ちゃんと百合ちゃんだけでゲームを試してみることにしました。亜理紗ちゃんからゲームをスタートします。


 「こ……こんにちは。よろしくおねが。いいたしま」

 「はい。アリサちゃんの負け~」

 「文字の数はあってるのに……」


 自分で作ったゲームの難易度に、亜理紗ちゃんは頭を抱えています。つまりは、五文字、七文字、五文字で会話をする遊びをしたいようなのですが、しっかりと言葉になっていなければ負けになるのは発案者も想定外です。すると、凛ちゃんも細かなルールを確認したくなってしまいます。


 「ねえ。数字は何文字なの?」

 「数字はね……書いたら1文字だから、きっと1文字」

 「英語は?」

 「よく解んないから禁止」

 「アリサちゃん……それは」

 

 あまりにも亜理紗ちゃんが適当なので、数字と英語はひらがなで書いた文字数にするよう知恵ちゃんから苦言が呈されました。それも含めて、知恵ちゃんが亜理紗ちゃんに言います。


 「アリサちゃんって遊びは思いつくけど、ルール考える才能ないよね……」

 「ひええ……」


 ちょっとショックを受けた様子ながらも、めげずに亜理紗ちゃんは五七五ゲームに再チャレンジします。今度は立ち位置の順番に、亜理紗ちゃん、百合ちゃん、桜ちゃん、凛ちゃん、知恵ちゃんとゲームを進めます。最初は亜理紗ちゃんからです。


 「こ……こんにちは」

 「最初は絶対、こんにちはなんだ……」


 初手こんにちはは、亜理紗ちゃんの考えた必勝法なので、そこはゆずりません。知恵ちゃんの厳しい指摘にも負けず、亜理紗ちゃんは初志貫徹の気持ちで続けます。


 「いいてんきです。ありさです」

 「自己紹介しちゃった……」


 言いたい事はたくさんあれど、あまりつっこむとゲームが進まないので、今回は知恵ちゃんもおおらかです。百合ちゃんと桜ちゃんはそつなく会話を繋げ、次は凛ちゃんの番です。


 「こ……こんにちは。いいてんきです。りんです……よ」

 「あのね……りんりん。あのね……」


 凛ちゃんの回答があまりにもだったので、さすがの亜理紗ちゃんも一言あるようです。


 「りんりんって苗字が佐藤だから、そっちにすれば最後に『よ』をつけなくてよかったのに……」

 「そっか!あんた、頭いいわね!」


 こんな2人なので、仲良くなるのも無理はないと、知恵ちゃんは1人で納得しました。


その85の2へ続く

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