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その84の2『宇宙人の話』

 映画を見終わって家に帰ると、もう時刻は7時半を回っていました。その日はすぐにお別れになってしまったので、映画の感想については次の日の朝に持ち越されました。映画の映像が非常にリアルだったので、亜理紗ちゃんはどうやって撮ったのかを気にしています。


 「宇宙船って、映画のために作ったのかな」

 「作ってはいないんじゃないの?絵で描いただけで」

 「宇宙人は作りものだった」

 「うん。なんかヌメヌメしてた」


 無機物はコンピュータグラフィックスで丁寧に作られていたものの、宇宙人や動物は動きがウソっぽかったので、亜理紗ちゃんにも偽物だと見破られました。それでも、宇宙のどこかには本物の宇宙人がいるのではないかと、亜理紗ちゃんは青い空を見上げています。


 「ねえ。ちーちゃんは、どんな宇宙人が好き?」

 「どんなのが好きって言われても……」

 「緑色のおじいさんみたいなのとか……」

 「キライじゃないけど……それは別に」


 映画に出て来た宇宙人は多様な姿をしていて、でも爬虫類のような姿をしたものや、触手のはえたものなどが比較的に多く、知恵ちゃんから見ると好みではありません。もっと哺乳類や鳥類の宇宙人がいいと考えている中で、知恵ちゃんは本に載っていたお話を思い出しました。


 「月にはウサギがいるって、本に書いてあった。月で、おもちをついてるらしい」

 「うさぎ星人だ」

 「月にいるから月星人じゃないの?」

 「たぶん、こんなだよ」


 亜理紗ちゃんは落ちている石をひろって、コンクリートの道路のスミに簡単な絵を描きました。頭はウサギで、体は人間のよう。服も着ています。


 「うさぎ星人は、おもちをきな粉で食べる」

 「きなこなんだ」


 亜理紗ちゃんのきな粉もちを食べたい気持ちだけで、うさぎ星人もきな粉もちが好きな設定にされました。学校へ着くまでの間、ずっと2人は宇宙人のことを話していました。うさぎ星人の生活や喋り方、性格などまで細かに決めていきます。結局、学校へ着いた頃にはもう、うさぎ星人はウサギだけじゃなく、犬もネコも色々といることになっていました。


 「じゃあ、ちーちゃん。また学校のあとでね」

 「うん」


 2人は別々のクラスなので、教室の前でお別れをして自分の学級へと向かいます。知恵ちゃんが自分の机にランドセルを置くと、珍しく凛ちゃんが知恵ちゃんの席へとやってきました。


 「チエきち。おはよう」

 「お……おはよう」


 何か悪い事でも起こるのではないかと、知恵ちゃんは助けを求めるようにして友だちの桜ちゃんたちを探しています。しかし、今日はまだ誰も学校へ来てはいません。話しかける言葉が見当たらず、ひとまず凛ちゃんの話を聞く姿勢をとります。


 「ねえ。うわさで聞いたんだけど……公園の花壇に、ミステリーサークルがあるんだって」

 「ミステリーサークルって?」

 「ミステリーって、それは謎よ。よく解んないけど、学校が終わったら見に行かない?」

 

 いつものことながら、凛ちゃんは面白いものを見つけると、知恵ちゃんを誘いにやってきます。そして、なんだかんだで亜理紗ちゃんが勝手についてくるので、結局は3人で遊びにいくのがお決まりとなっていました。


 「きっとアリサちゃんも来るけど」

 「いいわよ。また帰りにね」

 「うん」


 約束を取り付けると、凛ちゃんは別の友達のところへ行ってしまいました。凛ちゃんと入れ替わりで、桜ちゃんと百合ちゃんが教室へと入ってきました。凛ちゃんと知恵ちゃんが話をしていたのが見えたので、それについて桜ちゃんは知恵ちゃんに聞いています。


 「知恵。なにかあった?」

 「なんか、公園にミステリーサークルがあるとか」

 「ああ。あれか。百合と一緒に見に行ったよ」

 「うん。見に行ったよ~」


 そんなに有名な話なのかと、知恵ちゃんは2人のお話を聞いて目をパチパチさせています。そのまま話の流れで、どんなものなのかを桜ちゃんが語ってくれました。


 「すべり台の上から花壇を見ると、キレイな丸の形に白い花が咲いてるんだ」

 「へえ」


 凛ちゃんと見に行く前にミステリーサークルの謎が明らかとなり、知恵ちゃんは何とも言えない表情で口をへの字に曲げていました。

その84の3へ続く

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