その83の3『コンセントの話』
壊れた腕、それと顔らしき板があります。とすれば、ゆかに転がっているガラクタの中に、ロボットのパーツが散らばっているのではないかと2人は考えました。どのような姿をしたロボットなのか気になり、亜理紗ちゃんは部品を探してみようと提案します。
「この赤い線が目印だと思うんだ」
「うん」
落ちている腕には特徴的な赤色の線が入っており、それがロボットの一部であることを示していると亜理紗ちゃんは判断しました。言われて探してみると、赤線の入っているパーツはところどころに落ちています。1つ1つは重くもなかったため、見つけたパーツを腕のある場所へと集めてみます。
「ちーちゃん!こっちに大きいのがあるよ!」
亜理紗ちゃんに呼ばれ、知恵ちゃんはガシャガシャと金属を踏んで進みます。亜理紗ちゃんの近くには大きな金属の物体が落ちていました。それは腕のパーツと同じ赤線がボディに入っていて、形は肩から胴体にかけて丸々、キレイに残されています。
「ここに腕を運ぼう」
「どうやって?」
「こうして転がす」
腕のパーツは持ち上げるには大きいので、亜理紗ちゃんはゴロゴロと転がして運んでいきます。腕の部分にあうよう配置してみましたが、どことなく知恵ちゃんは違和感を覚えます。
「逆の腕なんじゃない?」
「ここがこうだから……手は……そうだ。こっちの手だ」
亜理紗ちゃんはロボットの体と自分の体を見比べてみて、手の向きと指の向きを確認します。逆側にある肩の下まで腕を運ぶと、今度はキチンと形に当てはまりました。
「……?」
亜理紗ちゃんが腕から手を離します。すると、腕と肩の付け根から出ていたコードが自動的に伸びて、結びつくようにして繋がりました。そのまま腕は胴体と合体します。
「ちーちゃん。ロボットが、自分で回復した」
「まだ生きてるのかな?」
「……そうだ。顔」
顔も繋がるのではないかと考え、別の場所に置いていた鉄の板も持ってきます。でも、ロボットの頭部が見つかっていないので、顔をはめ込む場所がありません。ひとまず顔は首の上に置いておいて、別のパーツがないかと探していきます。見つけ次第、亜理紗ちゃんはロボットの体へと組み込んでいきます。
「う~ん……ここは、ここだと思うんだけど……」
「それは足じゃないの?」
「……そうみたい。じゃあ、これは?」
「指?」
「ほんとだ!くっついた!」
指の足りていなかった場所へ小さめの部品を持って行くと、そちらもコードを伸ばして引きあいました。つながった場所は正解の場所だと解るので、まるでパズルを解くようにして亜理紗ちゃんはパーツを繋げていきます。
「ふう……かなりできてきた」
亜理紗ちゃんの手はサビを触って茶色く汚れていますが、そのかいもあってロボットの体は手足がそろって、もう8割程度はできあがっていました。ただ、頭だけは見当がつかず、いまだ胴体の上の部分はぽっかりと空いています。
「ちーちゃん。どれが頭なんだろう」
「……う~ん」
「……顔があえばいいのかな」
それに気づくと、亜理紗ちゃんは顔らしき鉄の板を持って、あちらこちらの怪しいものに近づけてみます。バケツのようなもの、箱のようなもの、輪っかのようなものもあります。でも、どれも鉄の板は当てはまりません。そんな中、真っ黒な球体が落ちているのを知恵ちゃんは見つけました。
「これは?」
「なんだろう……これ」
バレーボールくらいの大きさの黒い球体、それに鉄の板を近づけます。すると、吸い付くようにして鉄の板は黒い球体にはりつきました。それを転がして胴体の上まで持って行くと、また引き寄せられて合体しました。
「やった。頭だ」
「……」
ひろったパーツは大方、ロボットに組み込まれました。でも、長い棒のようなものだけが1つ、知恵ちゃんの手元に残っています。
「アリサちゃん。これは?」
「なにこれ」
亜理紗ちゃんは知恵ちゃんからパーツを預かると、ロボットのあちらこちらに近づけてみました。指でもありませんし、足でもありません。最後、頭部へとパーツをあてがってみました。
「くっついた」
「くっついたの?」
黒い頭の横に、とがった棒がくっついています。
「ちーちゃん……これ、ツノ?」
「耳?」
「長くない?」
頭の右側に1本だけ突き出た棒。これがなんなのかについては、いくら話し合っても明確にはなりませんでした。
その83の4へ続く






