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その82の5『寄り道の話』

 知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは寄り道をしながらも、五郎丸を見るために通学路を歩いています。ところ変わって、ここは小学校の近くです。学校の制服を着た女の子が2人、仲良くお話をしながら下校しています。


 「まったく。加奈が落とし物するから、遅くなっちゃったじゃない」

 「そういうけど、唯だってコンビニに寄ったでしょ」


 加奈と呼ばれた女の子は背が低く、ゴムでキュッと髪を結っています。唯さんは色の薄い髪をしていて、やや制服を着崩している女の子でした。時計を見ながら肉まんを食べている唯さんが、このあとの予定などを加奈さんに聞いています。

 

 「加奈、帰ってなにしてんの?」

 「別にないけど……今日は五郎丸と散歩に行く」

 「五郎丸って……弟だっけ?」

 「私、弟いない……犬だよ」


 加奈さんの家は小学校の近くで、唯さんが肉まんを食べ終わるより早く家に到着しました。加奈さんが家のドアを開きますが、唯さんは車庫の中にいる犬の五郎丸を見ていて、なかなか家に帰ろうとしません。


 「どうしたの?」

 「あたしも、お散歩に行く。待ってるから」

 「このあたりを歩くだけだし、別に面白くないよ?」

 「いいから。たまにはいいでしょ」


 唯さんも一緒に五郎丸のお散歩へ行くと言います。加奈さんは家に入ってカバンを置くと、お散歩の道具を持って制服のまま家を出ました。


 「ねぇ、加奈。五郎丸って、なんって犬なの?」

 「よく解んないけど、何かと何かのハーフらしい」

 「ハーフなんだ。カッコイイじゃん」


 加奈さんが五郎丸にリードを繋いで外に出し、唯さんは制服に毛がつくのも気にせず五郎丸を触っています。あまり面識のない人に会っても五郎丸は落ち着いていて、加奈さんに引かれずとも自然に家から出ていきます。


 「いつも、どこお散歩してるの?」 

 「家を出て、川の近くを歩いて、ここに戻ってくるだけ」


 そうは言いながらも、五郎丸は道のところどころで立ち止まったり、加奈さんの足先が向いていない方へと歩いていったり、ブラブラと気ままに散歩しています。途中、顔見知りのおばさんや、ワンちゃんの散歩をしているおじさんに構ってもらって、急がず焦らずに進んでいきます。


 「いろんな人と知り合いなのね。加奈……もしや、五郎丸がステキな出会いをつれてきたりして」

 「今のところないけどね……」


 唯さんはペットを飼っていないので、五郎丸の動きを物珍しそうに見物しながら、ふらふらと後ろを歩いています。加奈さんが言う通り、男の人とは交流はありませんが、人懐っこい犬なので五郎丸は子どもには好かれています。


 約15分ほどかけて、五郎丸はアクビをしながら近所を歩き、ふらりと家の前に戻ってきました。そこで、唯さんは加奈さんの家の前に、小さな女の子が2人いるのを見つけます。


 「あの子たち、なにしてるんだろ?」

 「アリサちゃんだ。たまに五郎丸を見に来てる子だよ」

 「……あ、五郎丸だ。さわっていいですか?」

 「いいよ」


 お散歩から戻ってきた五郎丸を発見し、亜理紗ちゃんは慣れた様子で頭をなでました。知恵ちゃんは五郎丸の飼い主さんと初めて会ったので、緊張した様子で遠目に五郎丸をながめていました。


 「わあ、五郎丸。今日も元気だね」

 「お散歩中に、おやつも食べたし元気だよ」

 「ありがとうございます。さよなら」

 「うん。じゃあね」


 加奈さんにお礼を言って、亜理紗ちゃんは五郎丸とお別れをしました。五郎丸を車庫の中の小屋へつなぎ直していると、そこへ亜理紗ちゃんが戻ってきました。忘れ物でもしたのかと、唯さんが声をかけてみます。


 「あら、どうしたの?」

 「あ……なんでもないです」


 ちょっとだけ五郎丸の足を見て、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの元へと戻ります。そして、帰り道を歩きながら、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに報告しました。


 「五郎丸の黒いのは、後ろ足だった」

 「うん……」

その83へ続く

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