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その82の4『寄り道の話』

 黄金色の輝きは水晶の壁に乱反射して、ゆらゆらと不規則に揺れています。それを見ながらも知恵ちゃんと亜理紗ちゃんはピンクのヒモにつかまったまま、スルーして先へと進んでいきます。しかし、2人の体を運ぶほどの力で動いていたピンクのヒモが、急に少しスピードを緩めました。それに気づき、亜理紗ちゃんはピンクのヒモから手を離しました。


 「……ちーちゃん。ちょっと見てくるね」

 「え……」


 ピンクのヒモが止まっていスキを見て、亜理紗ちゃんは黄金の輝きの正体を突き止めに走ります。洞窟を少し戻った場所にある曲がり角に入りますが、でも輝きは壁の向こう側に透けて見えていました。


 「……ここを遠回りしたらいけるかな?」

 「アリサちゃん。もうピンクのヒモ、行っちゃうよ?」


 どうすれば壁の向こう側へ行けるのか考えつつ、亜理紗ちゃんは道に沿って歩いていきます。知恵ちゃんもあとをついて行きますが、もう見えなくなっているピンクのヒモを気にしています。


 「ちーちゃん。ピンクのヒモは、まだある?」

 「もう見えない。戻ったら、まだあるかも」


 すでに亜理紗ちゃんはピンクのヒモより、黄金色の輝きに興味を移しています。回り道に回り道を重ねて、段々と光に近づいてきました。せばまっている水晶の隙間を通って、やっと2人はゴールに到着しました。


 「あ……箱だ」


 ついに目的のものを亜理紗ちゃんは発見しました。亜理紗ちゃんが探していた黄金の光は、大きな金属製の箱から放たれています。しかし、箱の上部にはカギ穴があって、亜理紗ちゃんと知恵ちゃんが力をあわせても、スキマはこじ開けられません。


 「正解の道にカギがあるのかな。戻ってみよう」

 

 亜理紗ちゃんの言葉を受け、知恵ちゃんは箱がある方が正解なのか、カギがある方が正解なのかと考え込んでいます。亜理紗ちゃんは道を戻り、箱を開くためのカギを探し始めました。すると、別の道にも真っ白い光が浮かんでいるのを見つけます。そこにカギがあるのではないかと、亜理紗ちゃんは壁に手をついてのぞいています。


 「光の奥に何かある」

 「なにがあるの?」

 「……あっ」


 急に光は爆発するように大きく広がり、亜理紗ちゃんと知恵ちゃんの体を包みました。目を強くつむって、光が消えるのを待ちます。次に目を開いた時には、すでに2人は亜理紗ちゃんの家の前へと戻されていました。


 「あ……また、うちに帰ってきちゃった」


 ちょっと寄り道したつもりが、家へと戻されてしまいました。後ろを見ても、もう水晶の洞窟へ繋がっている穴はありません。これからどうしようかという顔をしている亜理紗ちゃんを、知恵ちゃんは屋根の下の日陰へと呼びました。


 「アリサちゃん。ちょっといい?」

 「なに?」


 1つ呼吸をおいて、知恵ちゃんはマユを下げながら亜理紗ちゃんに言います。


 「アリサちゃん……寄り道してたら、五郎丸のところ行けないでしょ?」

 「うん」

 「五郎丸のところに行くんでしょ?」

 「ごめんなさい」


 知恵ちゃんは怒ってはいないので、亜理紗ちゃんも怒られている気持ちではありません。しかし、これ以上は中途半端に物事を終わらせたくないとして、知恵ちゃんは念をおすようにして再び伝えます。


 「次は、ちゃんと寄り道しないで、五郎丸のところ行こう」

 「うん。もう、五郎丸以外のことはしない」


 そう宣言しながらもまだ、亜理紗ちゃんは水晶の洞窟から出て来た辺りに視線を向けていました。


その82の5へ続く

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