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その13の2『料理の話』

 「ちーちゃん。みかんもある」

 「グレープフルーツなんだけど」

 「マスカット!」

 「グレープなんだけど」

 「グレープとグレープフルーツって違うんだ……」


 知恵ちゃんの持ってきたオモチャの中から果物の消しゴムを探し出し、亜理紗ちゃんは名前を当てっこしながら並べています。その内、玄関の方から物音がしたのを聞くと、亜理紗ちゃんはお母さんが帰ってきたと思い迎えにいきました。

 

 「……あの、ちーちゃん。ちーちゃん」

 「なに?」

 「こっちきて」


 しばらくすると、お母さんを迎えに行ったはずの亜理紗ちゃんが戻ってきて、部屋のドアのところから知恵ちゃんを呼びました。イヤな予感がしたのか、知恵ちゃんは少し離れた場所に立ったまま亜理紗ちゃんに質問します。


 「なに?」

 「なんかいるんだけど」

 「虫?」

 「虫じゃないけど、なんか」


 ひとまず虫ではないということが解ると、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと一緒に廊下をのぞきました。玄関へと続く廊下の床を亜理紗ちゃんは指さしていますが、そこに知恵ちゃんは何も見出すことができませんでした。


 「……?」

 「なんか、ぼやっとしたのがいるの」


 亜理紗ちゃんに言われて、また知恵ちゃんは同じ場所へと視線を向けました。目を凝らしてみると、確かに不自然な影がフローリングに浮いているのが解りました。


 「……アリサちゃん。なにあれ?」

 「わかんない」


 2人が見つめていると小さな影は移動を始め、玄関のドアをすり抜けるようにして家から出ていきました。それを追いかけて亜理紗ちゃんと知恵ちゃんも家を出ると、影が亜理紗ちゃんの家と知恵ちゃんの家の間にある家庭菜園へと向かっていくのが見えました。亜理紗ちゃんが玄関のカギを閉めるのを待って、2人は影を追いかけるように家の脇へと入っていきました。

 

 しばらく謎の影はフラフラと漂っていましたが、亜理紗ちゃんの家の庭に落ちていた小石の前で立ち止まります。小石は影に持ち上げられるようにして浮かび上がり、ゆっくりと運び動かされていきます。


 「ちーちゃん……石が持って行かれる」

 「別にいいでしょ……」

 

 2人が見つめている手前、庭に敷かれている石のタイルが引きずられる動きでどかされます。すると、そのタイルの下には穴が開いているのが見え、謎の影と庭にあった小さな石は穴の中へと入っていってしまいました。


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんが駆け寄って穴の中をのぞきこむと、穴の奥にはほのかに光が灯っているのが見えます。2人は顔を見合わせると、何秒かはさんだ後に自分の考えを口にしました。


 「アリサちゃん」

 「うん。ちーちゃん」

 「閉じよう」

 「いや、入ろう」

 「え……」


                                その13の3へ続く


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