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その79の2『外国語の話』

 結局、壁の中から聞こえていた音はなんだったのか。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは家の前にしゃがみこんで、知り得た情報を頼りに相談を始めます。ひとまず、亜理紗ちゃんが自分の考えを口にしました。


 「合図を間違ったかもしれない」

 「合図?」

 「きっと、ミョって鳴ったら、ちゃんとした正しい音で返事をするんだ」


 とはいえ、ミョっと鳴って、どのような返事をすれば正解だったのか。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは空を見上げ、ミョの発音と共に推理を始めました。


 「ミョ……」

 「ミョ……」

 

 知恵ちゃんからは何一つとして答えが出てきませんでしたが、亜理紗ちゃんは思いついたことをそのまま声に出しました。


 「ミョ……ミョウガ」

 「ミョウガ?」

 「ミョってなったら、ウガを返す」

 「なんでミョウガなの……」

 

 ミョウガ作戦に関しては明日、壁に光が出てきたら試してみることになりました。穴の中から『ミョ』と音がなったら、こちらからはウガを返します。ただ、あまり正解である自信がなかったからか、亜理紗ちゃんは別の答えも探してみます。


 「……ちーちゃん。あの音、あれに似てなかった?」

 「あれ?」

 「ちょっと待ってて」


 亜理紗ちゃんは自分の家に入っていき、部屋からプラスチックの下敷きを探して戻ってきました。それをくねくねと動かすと、その動きに伴って音が鳴ります。


 「ミョミョミョって音しない?」

 「これはミョミョミョ……じゃなくない?」

 「ミョミョミョじゃないか」

 「コッポッポとか……ピョッポッポって聞こえる」


 下敷きを波のように動かした際に出る音。それを言葉にするのが、意外と難しいことに2人は気づきました。とにかく、コッポッポにしろピョッポッポにしろ、ミョミョミョではないことが解ります。あとは何も答えは出ません。明日、ミョウガ作戦だけは試してみようと決め、今日は家へと帰ることにしました。


 「ねえ。お母さん」

 「うん?」


 お裁縫をしているお母さんへ、知恵ちゃんは今日の不思議な音について相談してみました。


 「ミョっていったら、なんだと思う?」

 「ミョウガ」

 「やっぱりそうなんだ……」


 世間一般で言ったら、ミョと言ったらミョウガなのです。翌日、登校時に亜理紗ちゃんの家の壁を見てみたところ、昨日と同じ場所に四角い光が浮かんでいました。亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは耳をすませてみます。


 『ミョミョミョ……ミョミョ』

 「また音がしてるよ……」


 小声で亜理紗ちゃんが知恵ちゃんに伝え、知恵ちゃんも静かにうなづきを返します。その後、亜理紗ちゃんは昨日と同じく、指先でトントンと光を叩きました。音は壁の方へと近づき、昨日と同じリズムの音、でも昨日とは違う低い音を鳴らしました。


 『ミョミョッミョ……ミョミョ……』

 「うが」

 『ミョー!』


 亜理紗ちゃんが声を発すると、途端に壁の光は消え、音もやんでしまいました。その後、1分ほどは壁をながめていましたが、光が復活する様子はありません。2人は家の横から出て、学校へと向かった歩き出します。最後に聞こえてきた音について、亜理紗ちゃんは口をとがらせながら言及しています。


 「あれって……怒られたのかな?」

 「……なんで?」

 「ミョーっていってたし」


 先程の音を聞いて、亜理紗ちゃんは怒られたのではないかと考え込んでいます。あの音を楽器か何かの音だと思っていた知恵ちゃんは、その言葉に予想外だといわんばかりの顔を見せていました。


 「……あ」

 「……どうしたの?ちーちゃん」


 知恵ちゃんは遠くに見えている亜理紗ちゃんの家の屋根を見つめた後、ゆっくりと視線を前へと戻しました。そして、亜理紗ちゃんに答えを預けました。


 「あれ……音にしか聞こえないけど、もしかして」

 「……?」

 「……声なんじゃないの?」

 「……声?」


その79の3へ続く

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