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その12の3『流れ星の話』

  亜理紗ちゃんと知恵ちゃんが一時間ほど砂浜で遊んでいると、徐々に空は雲で覆われ始めました。


 「ほら。雨、降るといけないから帰るよ」

 「アリサちゃん。もう帰るって」

 「ん~」

 

 あれからも、2人はヒトデを避けながら浜辺を散策していたのですが、結局は貝殻や石ころをいくつかひろっただけで他に収穫はありませんでした。それらがコロコロと入っている虫かごの中身を見つめながら、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんにソデを引かれてお母さんの元へ戻りました。


 「それで、アリサの星は見つかったの?」

 「見つかんない」

 「そうでしょ?」


 そうしてお母さんにたしなめられながら、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんと一緒に家へと帰りました。そのまま亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの部屋へ遊びに来て、持ち帰った貝殻やガラス片をテーブルの上に並べ始めます。


 「ちーちゃん。欲しいのある?」

 「……ない」

 「キレイなのに……」


 知恵ちゃんへのプレゼントを諦め、亜理紗ちゃんは一つ一つ指でつまんで虫かごへと戻していきます。すると、貝殻や人工物の破片の中に交じって、一つだけ割れた石のようなものがあるのを亜理紗ちゃんは見つけました。


 「ちーちゃん。これ……石?」

 「貝じゃないの?」


 石の割れた部分に亜理紗ちゃんが視線を向けると、ほのかな光が宿っているのが解ります。いつしか、家の屋根にポツポツと雨粒の当たる音が聞こえ始めました。


 「……」


 じっと亜理紗ちゃんが見つめている内、石の中にあった光は身を隠すように溶けてなくなりました。そして、石を指先でクルクルさせながら、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに言いました。


 「ちーちゃん。流れ星にお願いしたことある?」

 「流れ星が消えるまでに3回もお願いしないとダメらしいから、無理」

 「たしかに」


 知恵ちゃんが現実的な意見を出し、それに亜理紗ちゃんが納得しています。それに続けて、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに話します。


 「ちーちゃん。流れ星を見れなかったから、一緒に見たくて探しに行ったの」

 「……いいよ。別に」

 「ちーちゃん、いつもそうやって言うんだ」


 知恵ちゃんは本当になんとも思っていないのですが、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんと同じ体験を共有したい気持ちでいっぱいでした。2人は眠そうにベッドへ寝そべって、そのまま天井を見つめています。


 「……あ」

 「……あ」


 亜理紗ちゃんの声に気がついて、知恵ちゃんは寝転がったままベッドの頭元にある窓から空をあおぎました。


 太陽の光の中、大粒の雨が降り続いています。青空から注がれている水玉の中には白い光が閉じ込められて、それはまるで流星群のように窓の外を落ちていきます。無数のそれは弾けて、また花火のように光の飛沫をあげます。


 言葉も忘れて見つめている内、数秒で流星群は姿を消してしまいました。うっすらと暗くなった窓の外から目を離さず、亜理紗ちゃんが知恵ちゃんに言います。


 「見れてよかったでしょ」

 「……まあ、うん」

 「私はよかった」


 亜理紗ちゃんはベッドから身を起こして立ち上がると、テーブルに置いてある割れた石を手に取って知恵ちゃんに差し出しました。知恵ちゃんは少しだけ困ったような顔をしながらも、恥ずかしそうな素振りで石ころを受け取りました。


                                    その13へ続く


                                                               


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