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その12の2『流れ星の話』

 次の日、お昼過ぎに知恵ちゃんが夏休みの宿題をしていると、亜理紗ちゃんがお母さんと一緒に家に遊びにきました。ただ、亜理紗ちゃんの肩には虫かごが下げてあり、虫捕りに誘われるのを嫌がった知恵ちゃんは亜理紗ちゃんが何か言い出す前にお断りしました。


 「私、虫は捕りに行きたくないよ」

 「星を探しに行くんだけど……」


 知恵ちゃんに拒否されると、亜理紗ちゃんは慌てたように用を伝えました。すると、知恵ちゃんのお母さんがやってきて、亜理紗ちゃんのお母さんとお話を始めました。


 「どこか行かれるんですか?」

 「うちの子が海に星が落ちたから探すってきかなくて……知恵ちゃんも一緒がいいと言うもので」

 「そうでしたか」

 「星なんてあるわけないのにねぇ」

 「でも、花火のあとに、落ちたのを見たから探したい……」


 亜理紗ちゃんのお母さんは亜理紗ちゃんの言う事を信じていなくて、そうは言っても亜理紗ちゃんが納得しないので、仕方なく海へと連れて行くようです。虫捕りをしなくていいならと、知恵ちゃんも亜理紗ちゃんと一緒に海へ行くことになりました。


 亜理紗ちゃんのお母さんが知恵ちゃんを預かり、3人で近くの海へと向かいます。砂浜までは歩いて20分ほどの距離で、途中に緑の看板のコンビニがあります。そこで亜理紗ちゃんと知恵ちゃんはジュースとグミを買って、海についたら食べるおやつにしました。


 石の階段を降りた先が広く浜辺となっていて、砂浜は水気を帯びて黒色に染まっています。夏なので遊びに来ている人影は多くありますが、近くに船着き場があるので、ここで泳いでいる人はあまりいませんでした。


 「ちーちゃん。なにか見つけたら教えてね」

 

 亜理紗ちゃんはペットボトルのジュースをグッと飲むと、虫かごのフタを開けながら砂浜を歩きだしました。とはいえ、どういうものを探せばいいのかよりも、まず知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの持っている虫かごが気になります。


 「アリサちゃん。それは難に使うの?」

 「星を見つけたら、これに入れる」

 「そんなに小さいの?」

 「……え?入らないの?」


 知恵ちゃんの言葉に驚いた様子で、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの顔を見つめました。そして、2人は青空の中に星を探して、また地上へ落ちた星を探す作業へと戻りました。亜理紗ちゃんのお母さんは石階段の影で涼んでいて、少し離れた場所から亜理紗ちゃんと知恵ちゃんをながめています。


 「ちーちゃん、ちーちゃん。これ見て」

 「なに?」


 亜理紗ちゃんは小さくて透明なものを持って、知恵ちゃんの元へと走ってきました。亜理紗ちゃんの手にはガラス片が入っていますが、それは砂や水などで磨かれ、とがった部分がなくなっていました。


 「これ、星かな?」

 「割れたビンじゃないの?」

 「ふ~ん」


 亜理紗ちゃんはビンのカケラを虫かごに入れ、また中腰になって星を探し始めます。すると、今度は知恵ちゃんが亜理紗ちゃんを呼びました。


 「アリサちゃん。ヒトデがいた……」

 「どこ……ほんとだ」

 「ヒトデって毒ある?」

 「わかんない……」


 2人はヒトデから逃げるようにして亜理紗ちゃんのお母さんの元へと走り、お母さんの持っているバッグからグミを出してもらいました。近くにあった公園の蛇口で手を洗ってくると、2人は並んで一緒にグミを食べ始めました。


 「ちーちゃん。メロン味でた」

 「じゃあ、ちょうだい」


 出てきた味によってグミを交換しながら、2人は海を見るでもなく、黙々とグミを食べ続けています。その内、亜理紗ちゃんがグミの一つを指先につまみながら、珍しいものを見つけた様子で知恵ちゃんに言いました。


 「ちーちゃん。星だ!」

 「ん?」


 亜理紗ちゃんの見つけたグミは星形をしていて、他のものとは違う形です。『星が入っていたらラッキー』という文字をグミの袋に見つけ、それを知恵ちゃんは亜理紗ちゃんに教えます。


 「星形はラッキーだって。私のには入ってない」

 「へー」


 星形のグミはピンク色をしており、亜理紗ちゃんは指でつまんだまま空に透かしてみたり、少し指で押してみたりしています。そして、虫かごに入っているガラスのカケラを見つめてから、ちょっと恥ずかしそうに小声で言いました。


 「星って、このくらいかと思ってたけど、これだと落ちてきて口に入ると危ない……」

 「怖いこと言わないで……」


                                その12の3へ続く




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