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その69の1『やぶれたページの話』

 学校の授業が全て終わった放課後、亜理紗ちゃんが迎えに来るまでの間、知恵ちゃんは図書室へと立ち寄っていました。亜理紗ちゃんは早く来る時は早いのですが、友達のおしゃべりに呼び止められると、なかなか知恵ちゃんを迎えに来てくれない時があります。すると、それなりに時間を使って本を読んでいられます。

 

 「……」


 他に誰もいない図書室で、知恵ちゃんは本だなから絵本を取り出しました。いつもは途中で読み終えてもいいように図鑑などをながめているのですが、絵本ならば短い時間で読み終わります。厚めの用紙に描かれている幻想的なイラストの数々を、じっくりと観賞していきます。


 物語は男の子が、自分の住んでいた星と友だちに別れを告げ、様々な星をめぐって地球へとやってくるというものでした。その後、地球でも動物や植物との出会いを繰り返し、大切なことに気づくまでが描かれています。どうなるのだろうと期待を込めて、知恵ちゃんは最後のページをめくります。


 「……?」


 裏表紙、その1つ前のページが絵本のとじ口から千切れ落ちており、物語の結末だけが抜け落ちていました。住んでいた星へと残してきた友達を想い、男の子が最後にどうしたのか。その部分は絵本には残っておりません。本があった場所を知恵ちゃんは見てみましたが、やぶれたページは落ちてはいませんでした。


 「ごめん。ちーちゃん、待った?」

 「ううん。大丈夫」


 亜理紗ちゃんが図書室の戸を開き、知恵ちゃんを迎えにやってきました。お話の結末を気にしながらも、知恵ちゃんは絵本をたなに戻しました。学校からの帰り道、知恵ちゃんは本の最後がやぶけていたことを亜理紗ちゃんに話します。


 「絵本を読んでたんだけど、最後だけなかったんだ」

 「持って行きたいくらい、いい最後だったのかな?」

 「それは、どんな最後なの……」

 「人が生き返るとか……」

 「そもそも誰も死んでなかった気がする……」


 大まかなお話のあらすじを知恵ちゃんから聞き、亜理紗ちゃんは物語の最後を予想しています。でも、それは知恵ちゃんには教えてくれず、家の前まで来ると知恵ちゃんに宣言しました。


 「私が最後のページを作ってくるから、それを読んでちょうだい」

 「え……作るの?」

 「時間あったら、ちーちゃんも作っておいて」


 絵本の最後を作るべく、亜理紗ちゃんは急いで家に帰っていきます。とはいえ、亜理紗ちゃんは物語の結末を知っている様子でもありませんので、自分で考えて作るつもりなのだということは解ります。同時に、知恵ちゃんにも作っておくよう言っていましたが、結末を自分で作るなどとは知恵ちゃんには考えも及びませんでした。


 自分の部屋へ行くと、知恵ちゃんも画用紙を広げてみました。絵本に残っていた最後のページは、砂漠の景色で終わっていました。なので、知恵ちゃんは試しに茶色の色鉛筆を取り出します。地平線と、その向こうにある黒い夜空をぬってみます。あとは、どうすれば物語がキレイに終わるのかを考えています。


 「……」


 きっと、男の子は自分の星に帰るのだろう。そう知恵ちゃんは予想しましたが、どうやって地球から宇宙に飛び出せばいいのかが思いつきません。宇宙船があれば地球を離れられるでしょうが、物語は宇宙船が出てくるような展開ではありませんでした。


 「……うーん」


 宇宙船は出てきませんが、物語には飛行機が出てきました。それに乗れば空を飛ぶことはできます。そして、知恵ちゃんは飛行機で宇宙まで行ったらどうなるのか、ふと疑問を抱きました。お母さんなら知っているだろうと判断し、知恵ちゃんは1階にいるお母さんへと聞きに行きます。


 「お母さん」

 「どうしたの?」


 知恵ちゃんのお母さんはリビングで裁縫をしており、その手元を見ながら知恵ちゃんもソファに腰掛けます。


 「あのね。飛行機で宇宙に行くと、どうなるの?」

 「飛行機で?行けないようにできてるんじゃないの?」

 「そうなの?」


 気圧に対する抵抗や、エンジンの推進力、飛行方法など、行けない理由は考えればたくさんあります。でも、知恵ちゃんのお母さんも詳しくはないので、簡単な例えを出して説明しました。


 「外国行きの飛行機に乗ってるのに、操縦士さんが急に宇宙に行きたくなったら困るでしょ?」

 「困る」

 「だから行けない」

 「なるほど」


                                その69の2へ続く

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