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その68の4『箱の話』

 亜理紗ちゃんの机とお菓子の箱は不思議な空間で繋がっていて、入れた物は勝手に移動してしまいます。小石を机の引き出しに入れてみると、知恵ちゃんの持っているお菓子の箱がわずかに重くなりました。


 「……石が入ってる」

 「すごい!ワープだ!」


 色々とワープを試した結果、机の中から箱へと送れるものは限られていると解ります。箱の中に物が入っていると中の物は勝手に出されてしまいますし、箱より大きなものは移動させることができません。あれやこれやとワープさせて遊んでいる内、知恵ちゃんは何も入っていないはずの箱に違和感をおぼえました。


 「……アリサちゃん。なんか入れた?」

 「まだ入れてないけど」

 「……?」


 亜理紗ちゃんは机に何も入れていないと言っていますが、お菓子の箱には少し重みがあります。亜理紗ちゃんが入れたものとあれば怪しいものではありませんが、勝手に入ったとなれば不安にもなります。知恵ちゃんは怖々とお菓子の箱を差し出し、亜理紗ちゃんが中身の確認をうけたまわりました。


 「う~ん……サイコロっぽい」


 開ける前に箱を振ってみて、亜理紗ちゃんは中に入っている物を探っています。その予想は当たり、箱の中からは亜理紗ちゃんの物とは違う、白色と黒目のシンプルなサイコロが出てきました。


 「ちーちゃん。これ、どっから来たんだろう」

 「これ、私のだ」

 「ちーちゃんのなの?」


 亜理紗ちゃんの部屋のサイコロを見た時、知恵ちゃんは自然と自分の部屋にあるサイコロを思い浮かべました。それに応える形で、お菓子の箱は知恵ちゃんの家からサイコロをワープさせてきたようです。


 「ちーちゃんの家ともつながってるのかな?」

 「う~ん……」


 試しに他の物も、知恵ちゃんの部屋からお菓子の箱の中へと移動させてみます。消しゴムやエンピツ、小さいものならなんでも、お菓子の箱へとワープさせることができました。その様子を手品でもながめるように見ていた亜理紗ちゃんは、押し入れの中からダンボール箱を持ち出しました。


 「これ使ったら、もっと大きいものも呼べるんじゃないの?」

 「大きいものをワープさせて、戻せなくなると困るし……」

 「そっか……」


 大きいものは呼ぶと困ると知恵ちゃんに言われ、亜理紗ちゃんはカラにしたダンボール箱をのぞき込んでいます。そして、パッと顔を上げると、再び別の提案をしました。


 「じゃあ、私が中に入るから、どっかに送ってちょうだい」

 「ええ?」


 物を呼び出すことができるのならば、送ることもできるのではないかとして、亜理紗ちゃんは自分が箱の中に入ると言い出します。そんなことができるとは知恵ちゃんも思っておりませんが、どこへ送ればいいのか念のために聞いてみます。


 「どこ?」

 「そこの押し入れ」


 すぐ近くへ移動させるだけと解り、それならばと知恵ちゃんは了承しました。亜理紗ちゃんが体を丸めてダンボール箱に入ると、知恵ちゃんはフタを閉めました。ただ、亜理紗ちゃんを押し入れへ送るにはどうしたらいいのか、知恵ちゃんは箱の中にいる亜理紗ちゃんへと相談しています。


 「まだいる?」

 「います」

 「……私、どうしたらいいの?」

 「アリサ、いなくなれって念じて」

 「それはイヤ……」


 知恵ちゃんは3分くらいの間、亜理紗ちゃんを押し入れに送ろうと念じてみました。でも、なかなかうまくはいきません。次第に諦めムードが漂い始め、亜理紗ちゃんは箱の中から普通に雑談を投げかけています。


 「もっと、いろんな箱があったら、あちこちワープできそうなのに」

 「そろそろ食べる?最後のお菓子」

 「……」


 残りのお菓子を開けようか。そう知恵ちゃんは亜理紗ちゃんに伝えます。すると、今まで聞こえていた亜理紗ちゃんの声が、箱の中から急に聞こえてこなくなりました。


 「……アリサちゃん?」

 

 知恵ちゃんは箱を開いてみます。ダンボール箱の中に亜理紗ちゃんの姿はなく、空っぽの箱だけがガランと残されています。では、押し入れの中にいるのかと考え、知恵ちゃんは部屋の押し入れを開いてみました。


 「……」


 押し入れの中を探してみても、やっぱり亜理紗ちゃんはおりません。再度、ダンボール箱を見つめてみますが、やはり中に亜理紗ちゃんはいませんでした。


 「……き……消えた」


                                その68の5へ続く

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