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その67の2『歌の話』

 給食を食べ終わった後の休み時間、また知恵ちゃんは桜ちゃんたちと歌の話をしていました。どうすれば歌が上手くなるのか、友だちの内で最も平凡な歌を歌う桜ちゃんに助言を求めています。


 「高い声と低い声を使って歌うんだよ」

 「高い声ってなに?」

 「ええと……ビックリした時の声」


 桜ちゃんの説明に納得し、知恵ちゃんはビックリした時の声を試しに出してみました。


 「わぁ」

 「低い……」


 知恵ちゃんのノドから高い声は出ないのだと解り、桜ちゃんは別の方法を探り始めました。


 「あとはリズムとか」

 「リズムって?」

 「音にあわせて、声を出すんだ」

 

 桜ちゃんが知恵ちゃんの机を指で叩いて、それにあわせて声を出してみるようにうながします。知恵ちゃんと百合ちゃんはタイミングを見て、一緒に小さな声を発しました。


 「んっんっんー……んっんっんー……」

 「知恵……せめて、せめて……『ん』以外で。口を開こう」

 「あ……そうだ。知恵ちゃん」


 桜ちゃんから口を開くように言われてしまい、何か思いついた様子で百合ちゃんは知恵ちゃんに耳打ちをします。歌の練習が再開され、知恵ちゃんと百合ちゃんは再度、リズムを口ずさみます。


 「にゃんにゃんにゃー……にゃんにゃんにゃー……」

 「知恵がネコになった……」

 「これなら楽しいでしょ~」

 「楽しいけど」


 百合ちゃんのアイディアで楽しく練習をし、休み時間が終わる頃には知恵ちゃんもタイミングにあわせて歌えるようになっていました。でも、単調なリズムで歌う練習と、不規則に奏でられる合唱曲の歌唱が結びつかず、どう活用すればいいのかと知恵ちゃんは考え込んでいました。


 放課後、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと一緒に学校から帰りつつ、ここでも合唱コンクールの相談をしてみました。亜理紗ちゃんは別のクラスなので、知恵ちゃんのクラスとは合唱の曲も違います。


 「アリサちゃんのクラス、どういう歌だった?」

 「翼がほしいみたいな歌」


 もう亜理紗ちゃんのクラスでも合唱の練習もしたらしく、亜理紗ちゃんは小さく歌を口ずさんでいます。歌に合わせて体は動いていて、それなりに亜理紗ちゃんもリズムはとれているのが解ります。


 「アリサちゃん。どうしたら、うまく歌えるんだろう」

 「……なんかね。なんでも、ずっとやってたら、まあまあ上手くなるって」

 「……?」

 「お父さんが、カメラで写真をとりながら言ってた」


 亜理紗ちゃんのお父さんはカメラで風景をとる趣味があり、休みの日に出かけると大量の写真を撮ってきます。ずっと続けていれば、天才の人まではいかずとも、それなりには上手くなる聞き、知恵ちゃんは帰ったら練習しようと亜理紗ちゃんを誘います。


 「帰ったら、家で練習しよう」

 「いいよ。どこでやる?」

 「私の部屋」


 一旦、亜理紗ちゃんは自分の家にランドセルを置きに戻り、合唱曲のプリントだけを持って知恵ちゃんの家へと向かいました。念のため、お母さんには歌の練習をすると声掛けして、2人は知恵ちゃんの部屋で練習を開始しました。


 「じゃあ、ちーちゃんが歌って。私が聞く」

 「うん」


 音楽の授業で歌ったのを思い出しながら、知恵ちゃんは歌詞を読み上げていきます。亜理紗ちゃんは知恵ちゃんのクラスの合唱曲を聞いたことがないので、聞き心地だけを頼りに評価していきます。


 「いいんじゃないの?」

 「いいかな」

 「うん」


 亜理紗ちゃんが聞く限りでは、知恵ちゃんの歌も特に問題はない様子です。今度は亜理紗ちゃんが歌ってみますが、知恵ちゃんの歌で問題がないのなら、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの歌も問題はないと判断しました。


 「アリサちゃん。いいんじゃないの?」

 「いいかな」

 「うん」


 なおすところがないならば、これにて練習は終了です。その前に、亜理紗ちゃんは歌のお手本を聞いてみようと言いました。


 「音楽、聞いてみない?」

 「いいよ」


 知恵ちゃんは音楽プレイヤーの電源を入れ、その中に入っているディスクの音楽を再生します。じっくりと3曲ほどプロの歌を聞いた後、知恵ちゃんは曲を停止して亜理紗ちゃんに告げました。


 「アリサちゃん……」

 「……?」

 「……私たち、もしかして……すごくヘタ?」

 「……う……う……うんん」


                                 その67の3へ続く

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