その66の2『パズルの話』
合体してできた赤いグミは少しだけ大きく、太陽の光を受けてキラキラと輝いています。そんな謎のグミを亜理紗ちゃんは口に入れようとしますが、すぐに知恵ちゃんは待ったをかけました。
「食べるの?それを?」
「グミとグミでできたし……これもグミだから」
怪しいものが混入したとあっては話は別ですが、グミとグミがくっついただけのものなので、亜理紗ちゃんは食べても問題ないと考えます。ですが、知恵ちゃんの方は気が気ではありません。
「アリサちゃん。もっと合体させてみない?」
「……やってみたい!」
亜理紗ちゃんに変なものを食べさせたくない一心で、知恵ちゃんは別の方法からアプローチをかけてみました。一旦、赤いグミを知恵ちゃんの持っている袋に戻して、それを他の色のグミとくっつけてみます。でも、もう赤いグミは他のグミとは合体しません。
「……う~ん。くっつかない」
赤いグミとは別に、紫のグミと緑のグミが合体して、また袋の中で赤いグミができあがりました。今度は緑と青のグミが合体して、紫色のグミができあがります。
「緑と青で紫だ……」
「ちーちゃん。ピンクと他の色は?」
「……ピンク」
ピンクと緑を足すと、それは茶色に変わります。知恵ちゃんは袋の中のグミを動かして、赤いグミができる組み合わせを探していきます。そうして赤いグミを4つ作りたいのですが、今度は緑色のグミが足りません。紫が多すぎます。別の色を試そうとしますが、ピンクも数は少ないので、使いすぎると足りなくなってしまいます。
「ちーちゃん。黄色は?」
「黄色……」
黄色は緑や青、ピンクとは合体しませんが、紫のグミに触れると、それを分裂させてオレンジと白色に変えてしまいます。そんな知恵ちゃんの作業を横から見つめている内、亜理紗ちゃんにもパズルのゴールが予想できてきました。
「もしかして、赤色を4つ作って消せばいいの?」
「多分……」
知恵ちゃんは赤色を3つまでは完成させるのですが、どう組み合わせても4つ目をそろえることができません。直接グミを手では触らずに袋の中で動かしているので、間違えて別の色と別の色を合体させてしまったりもします。不器用な知恵ちゃんの手際を、うずうずとした様子で亜理紗ちゃんは見つめています。
「……ちーちゃん。あの……私のグミじゃないからなんなんだけど」
「……?」
知恵ちゃんが15分ほどもグミと奮闘している中で、亜理紗ちゃんは言い出しづらそうな口調で告げました。
「グミが食べたいです……」
「私も……」
そう言われてしまい、知恵ちゃんはパズルを解くより、もっと手っ取り早い解決法を考え始めました。そして、。グミの入った袋を亜理紗ちゃんに渡し、カバンにぶらさがったまま光っている紫の石をヒザに乗せました。
「食べ物で遊んじゃいけないと思います……こういうことするのは、悪い石です」
知恵ちゃんに叱られ、光っていたキーホルダーの石は元の静かな紫色へと戻っていきました。それにともない、亜理紗ちゃんが持っている袋の中のグミも元通りになります。これで安心して、2人もグミを食べることができます。
「アリサちゃん。はい」
「ありがとう……」
無事にグミを食べることはできました。でも、最終的にパズルを解けずに終わったせいで、ややグミに負けてくやしいような、そんな気持ちで2人は甘いグミをかんでいました。
その67へ続く






