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その65の3『ワカメの話』

 おみそ汁には菜箸に巻きつくほどワカメが入っており、細かく切られた玉ねぎもまざっています。玉ねぎのおみそ汁を見た事がなかった亜理紗ちゃんは、もうワカメよりも玉ねぎの方に興味を移しています。


 「たまねぎのおみそ汁だ!はじめて見た」

 「別に普通だと思うの……」


 おみそ汁に入ったワカメは増えている気配はなく、煮詰められた末に泡を出しながら揺れています。さすがのワカメも煮込まれては増えられないと知り、1つものをおぼえた亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは2階にある部屋へと戻りました。おぼえたことを忘れないよう、知恵ちゃんはワカメの情報を簡単にメモへ残しています。


 「ワカメは草。増える」

 「……」


 知恵ちゃんのメモをのぞいていた亜理紗ちゃんは、急に立ち上がって窓から外をのぞきました。そして、ワカメが水に入って増えるのならば、別のものにも適応されるのではないかと考えを述べます。


 「ちーちゃん。なんか他のも増やしてみない?」

 「何を?」

 「草とか……」

 「いや……別に増やさなくていいけど……」

 「いや、やってみよう」


 知恵ちゃんは増やしたくなくとも、亜理紗ちゃんは増やしたくて仕方がありません。かんがえた速やかに行動に移し、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんと一緒に家の外へと出ました。亜理紗ちゃんは自分の家の庭からバケツを持ってきて、たくさんの水を注ぎ入れます。それから、増やしても怒られなさそうなものを手身近に探し始めました。


 「ちーちゃん。石は?」

 「じゃあ、入れる」

 「草は?」

 「入れる」

 「お金とか」

 「入れない……」


 お金は汚すと怒られそうなので、庭に落ちているものだけにとどめてバケツに入れていきます。そんな中で、亜理紗ちゃんは見慣れない木の葉が落ちているのを発見しました。


 「なんだろう。これ」

 「……?」


 それは真っ黒な葉っぱで、どう見ても亜理紗ちゃんの家の庭にある植物ではありません。どこかから飛ばされてきたのか、その分厚い葉っぱを亜理紗ちゃんはつまみあげます。そして、バケツに入れます。


 「それも入れるの?」

 「入れちゃった」


 知恵ちゃんも亜理紗ちゃんも、バケツに入れた物が本当に増えるとは思っていませんが、ものは試しなのでバケツを陽の当たる場所に放置してみました。5分ほど見物していたものの、すぐには増えなさそうなので、2人は知恵ちゃんの家に戻ってお母さんにおやつをもらいました。


 「今日はお菓子は作ってないから、これでいい?」

 「あ、かたいラーメンだ。それ好きです」


 知恵ちゃんのお母さんがお皿に入れてくれたのは、ラーメンをカリカリに乾燥させたようなスナックでした。お菓子は1本ずつ細かく散らばっていて、それを亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは指でつまんで少しずつ食べます。ラーメンスナックを見ている内、知恵ちゃんはラーメンを食べに行った時のことを思い出しました。


 「私、お店のラーメン得意じゃないんだ」

 「そうなの?」

 「食べても増えちゃう」


 知恵ちゃんは食べるのが遅いので、ラーメン屋さんで1人分を頼んでしまうと、食べている内に伸びてしまって最後まで食べきれません。なので、お父さんのラーメンを取り皿にもらうのですが、するとお父さんの分がたりなくなってしまい、お父さんはチャーハンも頼んで食べてしまいます。そんなエピソードを聞いて、亜理紗ちゃんも家に備蓄してあるカップラーメンを思い出しました。


 「うちにカップラーメンで、わかめラーメンっていうのがあるんだけど」

 「ひええ……」


 ワカメとラーメンという増えるコラボレーションに、知恵ちゃんはたまらないといった声をあげました。ラーメンのスナックを食べ終わり、そろそろ増えたのではないかと2人は家の前に置いてきたバケツを見に行きます。


 「……?」


 確かに置いたはずのバケツが、少し見ない内になくなっています。どこへ行ったのか探してみると、バケツは勝手に日陰へと移動していました。


 「……ちーちゃん。動かした?」

 「動かしてないけど……」

 「……じゃあ、バケツが歩いた」

 「それはそれで怖いの……」


                               その65の4へ続く


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