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その63の2『大爆発の話』

 見た目の割にポップコーンの量はなく、フライパンいっぱいにあった白いサクサクは3人で食べると、すぐになくなってしまいました。作るところを見られなかったのが心残りなのか、いつか自分でもやってみたいと亜理紗ちゃんはお母さんにお願いします。


 「私もやってみたかった」

 「電子レンジでも作れたはずだから、次はやらせてあげる」

 「じゃあ、ちーちゃんも、次は一緒に作ろう!」

 「う……うん」


 トウモロコシが爆発するという事実が判明し、知恵ちゃんは恐る恐るながらにポップコーンを口へと運んでいました。ただ、口の中で破裂する恐怖よりも美味しさの方が勝って、次第に知恵ちゃんの表情も和みます。


 「何か爆発させたい……」


 食べたポップコーンのコップを片付けながら、亜理紗ちゃんが急に物騒なことを言い出します。家の引き出しに、いつか使った風船の残りを発見しますが、それを破裂させるのは危ないので、お母さんには止められてしまいました。その代わりにお母さんは、空気の入っているビニールのシートを探してくれます。


 「それでも潰してなさい」

 「なにこれ?」

 「ぷちぷち」


 それは割れ物などを包む時に使うビニールのシートで、シートの表面には気泡のような突起がたくさんついています。空気のツブを強く指で押すと、パチッという気持ちのいい音と共に、ビニールシートに入った空気が破裂しました。


 「ちーちゃん。そっちから潰していって」

 「うん」


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんはビニールシートについているプチプチを左右から潰し始め、テレビを見ながら片手間に作業を続けていきます。数十分かけて1000ほどもある空気のツブを潰し、2人は満足したようにビニールシートをたたみました。


 「楽しかった」

 「つかれた……」


 プチプチの魔力に取りつかれた亜理紗ちゃんは夢中でしたが、知恵ちゃんは不器用なせいでたまにしか気持ちのいい音が鳴らず、楽しさよりも疲労感が心に残りました。ビニールシートのプチプチをやっつけ、知恵ちゃんは疲れたように指をグーパーグーパーさせています。亜理紗ちゃんは他にも爆発させるものがないかと、部屋の中から探し始めました。


 「他にもないかな……」

 「まだやるの?」

 

 お菓子が入っているカゴの中から、亜理紗ちゃんはガムを取り出しました。小つぶのガムではありましたが、3つほど口に入れると大きさはそれなりです。ガムに息で空気を入れて、亜理紗ちゃんは器用にふくらませて見せます。


 「……」


 パッと破裂させたかった亜理紗ちゃんでしたが、途中でガムの風船には穴が開いてしまい、情けなくガムはしぼんでしまいます。このガムは風船のようにふくらませるには適しておらず、かたいので大きくもふくらみません。


 「アリサちゃんの顔が風船みたいになってる……」

 「どれ?」


 ガムの中に空気を送り続け、ぷっとふくれている亜理紗ちゃんのほほへ、知恵ちゃんは指先を軽くつきつけます。指で押し込まれたほほから空気が抜けて、むっとした亜理紗ちゃんの顔が元に戻ります。


 「むうぅ……ちーちゃんもガム食べる?」

 「うん」


 2人でガムをかみながら、テレビのニュース番組へと目を向けます。天気予報士とアナウンサー、それと番組マスコットの着ぐるみが映っており、その映像の背景には街並みが合成されています。そんな街の風景に見慣れないものを発見し、亜理紗ちゃんは画面を指さしつつソファから立ち上がりました。


 「ちーちゃん……なにあれ?」

 「……ん?」


                                その63の3へ続く

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