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その62の1『知らない世界の話』

 「チエきち……ねぇ。ちょっといい?」

 「なに?」


 学校の授業が全て終了し、知恵ちゃんは教室の前で亜理紗ちゃんが来るのを待っています。すると、教室のドアの近くから、クラスメイトの凛ちゃんが声をかけてきました。


 「面白い話があるんだけど、今日いい?」

 「な……なに?」

 「神社の近くに、ケセランパサランがいるって聞いたんだけど、探しに行かない?」


 ケセランパサランが白い綿毛のような姿の何かであることは知っていましたが、それを探しに行くと聞いて知恵ちゃんは怪しみを返しています。なお、凛ちゃんの声は吐息をまじえており、顔を真っ赤にしながら誘って来るので、そちらに対しても知恵ちゃんは別の怪しみを向けています。


 「ケセランパサランは願いごとを叶えてくれるから、チエきちのお願いも叶えてくれるかもだし」

 「そうなんだ。私……」

 「ちーちゃん!お待たせ!」


 いまいち乗り気でない知恵ちゃんが口を開くと、そこへ亜理紗ちゃんがやってきました。知恵ちゃんと凛ちゃんが会話している珍しい光景を発見し、亜理紗ちゃんは凛ちゃんの方を見ながら知恵ちゃんに理由を聞きます。


 「なになに?リンリンと遊ぶの?」

 「そうじゃないけど」

 「今日、ケセランパサランを探しに行くから、あなたも一緒に来ていいわよ」

 「そうなんだ!よく解んないけど、私も行く!」


 ケセランパサラン探しに亜理紗ちゃんが呼び込まれてしまい、知恵ちゃんも微妙に断りにくくなってしまいます。断ってもよいはずなのですが、すると今日は亜理紗ちゃんと遊べなくなってしまうので、それが知恵ちゃんは嬉しくありません。結局、学校から帰って準備を終えた後、凛ちゃんとは神社の近くで待ち合わせをすることになりました。


 凛ちゃんとは帰り道が違うので、途中で別れで知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは2人で歩き始めます。待ちあわせの時間は余裕をもって決めたので、あまり急がずに2人は会話などしながら帰路を辿ります。


 「そういえば、ちーちゃんって、リンリンと、いつから仲よしなの?」

 「なかよし……なのかなぁ」

 「ケンカしてるの?」

 「そういうわけでもないけど……」


 凛ちゃんは一方的に知恵ちゃんを好いていますが、なぜ親しげに話しかけてくるのかについて知恵ちゃんは知りません。初対面から慣れた様子で話しかけられたせいもあって、知恵ちゃんは少し凛ちゃんを警戒してすらいます。


 「じゃあ、いつから仲いいのか、リンリンに聞いてみていい?」

 「う~ん……」


 複雑な心境ですが、知恵ちゃんも凛ちゃんのことが気にはなるので、そこは亜理紗ちゃんにお任せすることにしました。ケセランパサランを入れるためのビンをお母さんにもらい、最低限のお金などだけ持って2人は神社へ向かいます。


 「あ、来た。チエきち!こっちこっち!」


 凛ちゃんの家の方が神社には遠いのですが、とても意気込んでいるのか到着は凛ちゃんの方が先でした。持ってきたビンの見せ合いっこなどをした後、神社の本殿の近くへと移動を始めました。


 「そうだ。リンリンって、ちーちゃんのこと、いつから知ってるの?」

 「え……私?」


 亜理紗ちゃんの質問を耳にすると、凛ちゃんは歩く足を止めます。そして、恥ずかしそうな照れ照れとした顔で振り向きました。


 「えっとね。チエきちと初めて会ったのは……幼稚園の時でね」

 「……え?」

 「同じクラスで、いつも優しくしてくれててね」

 「……え?」


 唐突に知恵ちゃんの知らない過去が明らかとなり、凛ちゃんが一言を発するたびに、知恵ちゃんからは疑問の声ばかりがこぼれました。


                             その62の2へ続く

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